いちまいの絵



2008年9月
200809
『トロリー花火』

紙に交響水彩 サイズ 300×400mm

私は岡山から幼稚園の頃上京し、小学校3年まで墨田区に住んだ。
昭和30年代のことだ。

あの頃の空は、電線が模様のように交差していた。
なにしろ錦糸町は都電銀座と呼ばれて、車庫も大きなのがあった。
駅前には楽天地があり、夜は星の替わりにネオンが瞬いた。
その模様に火がついて、バチバチーと音を立てて走るクルマ・・
それが トロリーバスだった。

子供の私には、それが仕掛け花火のように見えて面白かった。
まだ青かった東京の空には、毎夜
宇宙円盤(当時UFOという言葉は無かった)が私には見えた。

ただ、実際にこの光景や印象を画布に注ぎだすのは至難の業だった。
当時のトロリーバスの色や形・・おぼろげを調べ続けて具体化した。
どのように光って見えたかなど・・。
子供心にも、あの頃の周囲の町工場は美しくは無かった。
川も、鼻をつまんで通った。
そうした色も考慮した。
なんとか ストレートに描けたように思える。
きっと、こうしたモチーフは 今後もまだまだ溢れてくるだろう。
昭和を回顧する軟弱さではなく、エアコンや携帯や除菌剤が無くても、
手作りの、地の通った、一生懸命だった息吹を 何か伝えたいからかもしれない。