いちまいの絵



2007年7月
200707
『削られ山の一夜』

厚手ワトソン紙に交響水彩 八つ切りサイズ

過疎地に工業団地が出来るということは
山を削るということだ。
山が有する森と林は、雨を蓄え
フィルターとなって、洪水を防ぎ
美味しい水を供給する。

しかし削られた今は、調整池という貯水池を作り
雨水を貯めて、田んぼなどに流して利用する。
この風景のすぐ近くに、鳥獣慰霊碑がある。
多くの鳥獣が家を追われ、子孫は死に絶えた。

昼間は、工業団地の各工場に行き来する
ダンプやトラックの重い走行音や機械音で賑やかだが
美しく蒼く暮れる満月の空ともなると
鏡水に映る月も揺れないほど
しんと静まり返っている。

しかし、よく眼を凝らすと
ここに見える樹々は、ようやく羽を伸ばし
ざわめきという言葉を語り合っているような気がする。
しかし切断された地で、勝手が違う感じだ。

この樹たちは、0.3mmのゲルインクのペンで描いた。
今の自分の張り詰めた思いと
日々鼓膜を騒がす工具の音と
地層のように重なっていく疲労感が
血脈のような枝を描かせたのだろう。