浅田次郎と歩く中山道 - 『一路』の舞台をたずねて 浅田 次郎 中央公論新社 （写真は「浅田次郎と歩く中山道」） 中山道の”大名行列を主人公”にした浅田次郎著「一路」（注）の解説版ともいうべき「浅田次郎と歩く中山道」が出版されたので、さっそく本屋で手にとってみました。 　（注）主人公の小野寺一路（19歳）は、父の不慮の死を受け、 　　　　家伝の「行軍録」の書面だけを頼りに、幕末の江戸への 　　　　参勤交代の行列を指図して、中山道69次を進みます。 　　　　この間、大名同士が１つしかない本陣で鉢合わせして 　　　　しまう「本陣差し合い」のトラブルや、加賀100万石の 　　　　お姫様の一路への初恋や、藩の重臣達による一路の主君 　　　　への暗殺計画など、中山道の宿場町を舞台に繰り広げ 　　　　られる波乱万丈の時代劇です。 本の厚みの割に値段が高いので、買うか否か、ちょっと迷ったのすが、「『一路』の舞台をたずねて」というサブタイトルに魅かれました。 また、本の冒頭に、”「一路」の主人公は、小野寺一路ではなく、中山道そのものなのです。”とあります。 う〜ん！ やはり、中山道踏破を目指す者としては、買って読んでみなくては！！ 内容的には、小説「一路」が出来あがるまでの舞台裏についてのエッセイと対談集です。 同じく中山道を歩いている者として、浅田次郎の以下の言葉に、なるほどと思い共感しました。 ”中山道は、日本橋から三条大橋まで歩き通せるくらい旧街道が健在なのです。” ”目を養いながら旅を続けてくると、軽井沢銀座の雑踏も、 　大宮の繁華街も、戸田の渡しも、妙なことに、昔のたたずまいが 　はっきりと透けて見えてくるのです。” ”大名行列の多くは東海道を選んだが、商人などは、川留めで 　旅程が読めない東海道よりも、確実に到着出来る中山道を 　利用しました。” エッセイ集からは、「一路」は、大名行列を主人公に描いた”最初”の小説だ、 という浅田次郎の強い自負が伺えます。 さて、話しは中山道に戻ります。 朝、軽井沢駅の横のビジネスホテルを出て、しなの鉄道で御代田駅まで戻り、御代田駅の前の緩やかな下り坂の道を、再び歩き始めます。 （下り坂の道に沿った斜めの塀の家） 暫く歩いてゆくと、小田井宿の入口に、上の２枚の写真の道祖神と、その道の向いに下の写真の筆塚がありました。 小田井宿は、本陣１軒、脇本陣１軒、旅籠５軒と、小さな宿場町でしたが、「飯盛り女」がいなかったので、風紀がよく、女性連れや子供連れに人気があったそうです。 従って、公家やお姫様にも人気があり、皇女和宮も追分宿の喧騒を避けてここに宿泊したので、「姫の宿」と呼ばれたそうです。 宿場町に入ると、軒が大きく前面に張り出した「出桁（だしげた）造りの縦格子の古い家が点在していて、往時の風格を残しています。 街道の右手の「本陣」跡に、本陣を勤めていたという安川家の古いお屋敷があります。 本陣跡の隣は、同じ安川家が経営していたという立派な建物の「上の問屋」跡です。 安川家が経営していた「上の問屋」跡の先には、尾台家が経営していた「下の問屋」跡があります。 こちらも、昔のままの立派な門構えの外観です。 ”尾台”家と、”小田井”宿と、漢字は異なるけど、どちらも”おだい”と読みますが、偶然でしょうか、それとも何か関係があるんでしょうかね？ 宿場町を抜けると、普通の町並みになり、街道はやがて国道と合流します。 （国道に合流） 国道の右手に、写真の「皎月原（こうげつはら）」がありました。 昔、皎月と呼ばれる官女が、この地に流されて来ました。 彼女は、この辺りの草原で、白馬を乗り回していました。 実は、皎月は、白山大権現の化身で、白馬も天の龍馬だったので、馬を乗り回していた円形の部分の草の色だけが違っていたそうです。 広重もこの皎月伝説を知っていて、この野原から浅間山を望んで、浮世絵「小田井」を描いた、と言われています。 浮世絵は、浅間山の麓から引いた用水が流れるすすき野を行く旅人です。 右手がノボリを杖にした勧進僧で、左手の３人が巡礼です。 皎月原の前の街道（国道）を暫く歩くと、緩やかな上り坂に変わり、右手に巨大なショッピングセンターが見えてきました。 そのショッピングセンターの向いに「鵜縄沢の一里塚」がありました。 更に進むと、国道の脇は、長野県らしいリンゴ畑に変わり、やがて、上信越自動車道を越えます。 暫く歩くと、住吉神社があり、この神社の先が岩村田宿の入口です。 小田井宿から岩村田宿までは、約5キロです。