第3話 瞳の想い

(ここからは 瞳の視点)

 

私の身内しか見せられない姿を二回も見て武は どんなにか驚いてきっとその記憶喪失の原因を気にしただろうか?

それなのに武の優しさが、恥ずかしさと入り混じり

小さな傘で防ぎきれない雨が腕を濡らしても、その冷たさを感じ取れないくらい体の芯が熱くなっていた。

 

私の高鳴る鼓動が武に気づかれないようにするには あまりにも武は近くにいた。

武はワイシャツのボタンを三つまで外し下に濃紺の薄手のTシャツを着ていた。

髪が襟足を軽く隠す程度に伸びている。

身長は175センチくらいだろうか中肉中背いった感じだ。

待ち伏せしていたのは、私の希望だけど...

なぜこんな大胆な行動が男には小心な私にできたのか?

理由はたぶん入学式の事件意外思い当たらない

ずーと悩んでいたが、この瞬間に決意した。

武と交際しよう。

少し不安だ、けれど勇気を出せた自分が誇らしいと思える。

 

駅近くの商店街まで来ると、もう雨はあがっていた。

「昼間だったら、多分綺麗な虹が見れたかもね」

「へぇ〜 発想が意外とロマンチックなのね、武君!!

ねぇー、一つ聞いていい

赤の補色は何色か知っている ?」

「えっ ・・・もちろん、緑だよ でも何で?」

「どうして、すーと答えるの

普通は補色て何とか、多分赤の反対で白とか答えると期待したのに」

「訳は、簡単、簡単

俺イラストに興味があって今、色彩学勉強しているんだ。」

「あーそうだったの、イラストね 」

「 瞳ちゃんは なぜそんな質問できるの?

まぁ君は 頭いいもんなー 何でも知っているはずだよね」

「いい質問ですね うふふ

私の方はね、ファションデザインに興味があってそれで色彩学勉強していた訳!」


(武の視点で)


俺は二人が興味しめしている事の偶然の一致、何か運命的なものを感じた。

「ほんと、俺達さぁ リズムが合っていると思わない?」

「そうだといいねっ

それとも...私が一方的に望んだと感じている??」

「えー そんな・・・!?」

瞳が俺の心の中まで覗き込むように見つめ返している。

何か、どう言ったらいいか、わからなくなってしまう

それなのに、初めて同級生のしかも女に

自分の家庭のことを打ち明けたくなってしまつた時間はもう終わろうとしている。

『この女との機会逃したら 俺は 一生このままだ』

期待と焦りが頂点に達した俺は 瞳を何とか自分に近づけたくて 、自分の過去を忘れて思わず言った。

「今度の日曜日 会わない?」

「・・・    また私なんかの醜い気絶する姿見たいの?」

「ばかだな・・・そんな言い方で自分をいじめるな

気にすんなよ。

それよりも、バイト先から貰った映画の招待券が二枚あるんだ。

いっしょに観ないぃか?」

「 どんな映画 ??」

「えっーと 何か泣かせる音楽系の青春もの映画らしんだけど..そういうの苦手?」

「そんなこと無いよっ」

「おー マジ 映画通の俺のダチ「滝やん」もお勧めの傑作映画だからさぁ...」


「じゃ・・・OK?」

瞳はちょっと視線を地面にずらすと考え込んでから

「 今のところOKよ」

俺はつま先だってバレリーナのように一回転してガッツポーズをとり

「よしゃー 地下商店街ローサの「出会いの広場」7時に待ってるから、俺とデートしてください!! 」

「はい」

瞳は微笑んで、恥ずかしそうに直ぐに視線をそらした 。

俺は 、瞳を駅の改札口まで見送り

「じゃー 来週の日曜日ね!」

と瞳は 別れ際に手振りながら囁いた。

 

その日の夜

俺は瞳のことを想って こんな詩書いた

 

 

詩..「狭い道」

不自然に飾りたてられた

 時間の棘の道なのさ!・・この道はね

  危うい狭さで...、すれ違うと

   君は素の眼差しで、俺を射抜くょ

なぜか涙の滴より小さな

「誘惑の・・香り」だけがぁー

俺のidentity・・その底に貼りついたぁー


もがいても言葉がでない

それは

浮き上がる好奇心と満たされぬ欲求が

心を軋ませながら加速したからかなぁ?

時が流れ 熱くなった想いを冷やせる頃

散り散りに..弾け飛んでしまった

君のimage

かってに夢中で繋ぎ逢わせたよ。

作り上がった

君のimageは、

あぁ・・どこか空々しくて

痛いくらいー優しい

あぁ・・それでも、

見知らぬ言葉が

生まれて、君の光に揺らぎだす


やがて、言葉は、創造の蕾みとなるけど...

 花開くまでに

  君は日のあたる丘を昇り

   明日の向こう側に消えて行くのかなぁー


あぁ・・心細さも、お互い様なら

「どんなに幸せ」なのかもしれない、けれど...

なぜか涙の滴より小さな

「誘惑の・・香り」だけがぁー

俺のidentity・・その底に貼りついたままなのさ

 

第4話 初めてのデート

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