第7話 救出

転寝から覚めた私

珍しく夢は見なかった・・・それが意味するのは

現実の世界が夢を超えてしまったからなの?

 

DREAM BOXSと同じくらいの大きな化粧鏡の前に座って

呆然として

鏡の中の髪を金髪に染め上げた

もう人の私と向かい合う。

鏡台の上には、数冊の日記帳がだらしなく開いたまま散らばっている

 

「ぇぇっと

ここは

何処だったけ??」

周囲を見回すと、壁には大きなパネルには

ステージでギターを弾きまくる洋子の写真と

バイクに跨ってひVサインしていきがっているライダーの写真が

展示されている

 

「マジ やばい

誰 ・・・写真を撮ってくれたの・・・」

一つ一つが私であって私じゃない 

でも確かな事は 願って生まれ変わったその人格の中で

悪の魂を持っていても ...精一杯生きようとしている。

今は そんなふうに 思える私は いったい誰なの

ほんとうに瞳なの?

書きかけの日記帳に目を配ると

洋子としての想い??が込められた詩が

 

「願い」


未熟な魂でも

揺れる大地では眠れないょ

今 一番欲しいのは

何なの

 

結末の見通せるミステリィーなんかじゃ

無かったはずなのにねっ
    
いつのまにか温もりの遠のいた友の後ろ姿に

情を取り戻す その一言が言い出せないまま

鬼のように延々と続く

焦燥感の日々は

外は 無傷でよそよそしくセフティーでも

中は 混乱で満ちて気だるいょ

そのギャップに

真夜中に湧き上った

卑しい欲望を満たすために

歪んだ自由を手にしても

あっ ぁ その代償が

君の流す涙なら

私は過去しか語れない娼婦より惨めなの

 

自分を取り戻すための

無敵に施された秘密の部屋に閉じこもり

愛という名の不思議な呪文を唱えてみても 

結果は鉄壁の孤立

幻惑された心は

君との間に鉛より重い扉をつくり

私の逃げ道を塞ぐの

こんなの いゃ

いゃ

 もう いゃ

  お願い

   このままじゃ

    やばいょ

 

 

救いを求めて

届かぬ願いと知っていても

 

素の私が抱く一途な気持ちは

 夜空に放ったシャボン玉のように

  その形を隠したまま浮遊して

   夢のように澄んだ

    月明かりの綺麗な光りに 

     映しだされては壊れて消えていくの

     

     だから

      魂の足跡を残せるのは

        やっぱり

君の中だけなんだょ  って

必死に想いこむの・・ばかな私

 

 

日記を読み返すと 小さなため息一つ漏れる

鏡台から目線を逸らして 私の状況を確かめた。

此処は 多分

哲と轟の秘密のアジト

この部屋には どこにも窓がない

そのかわりにクリーム色の壁の左端に開けてみたくなるレンガ色のドアがあって

 

隙間から

ギターやドラムセットとアンプが備え付けてあるのが覗え

反対側には筋トレーの用具やサンドバックなどの武具が完備した部屋になっている

なんなのこの部屋 ? 怖いよっ


私は 今 瞳として息を吹き返しているけど

残念ながら、その記憶は疎らで、過去を持てない女でいる。

日記帳には、私の一瞬の気持ちは綴られていても

細かな事実はほとんど書いてない

どうしょう

真由美はあれからどうなったの

微かな記憶の尖った破片が

私の一番柔らかくて弱い部分の感情を鋭く傷つけるの・・・

思い出せない

くやしいょ

私の人生なのに きっと誰かが勝手に作り変えて

めちゃくちゃにした。

もう一度鏡台に目をやると

日記帳の片隅に赤いLサイズ スマホが下敷きなって半分だけ見えている

私の過去のてがかりが きっとこの中にあるはずだわ

メールを開くと

 

あの哲からのメッセージがあらわれた。

思わず私は 口に手を当てて感情を抑えた

 

「洋子 ・・・

いや瞳 大丈夫か?

君に出会えてから もう何年経ったことだろうね

なのに 僕は驚くほど数少なくしか君にメールしてなかったね。

そんな身勝手な僕のメールをどうか許して欲しい

 

できるだけ順序よく話したいんだけど・・・もしかしたら混乱招くような説明になるけど、

ごめん

君がいるその部屋はね 

実は DREAM BOXSの地下なんだ

右隅にある螺旋下段はDREAM BOXSのステージの右隅に通じているんだ」

 

私は半信半疑でスマホ片手に書いてとおりに螺旋階段を上って天井のとって持ち上げ

床扉を上にこじ開けた。

ステージの垂れ幕近くに開いた扉から見えるのは 哲の言うとおり

DreamBoxsの灯の消えた薄暗いステージそのものだった。

私は確かめると、落ちないようにまた螺旋階段をおりて

メールの続きを読み始めた。

 

「誤解しないて゛くれ 瞳

君を匿ったのはDREAM BOXSのオーナーのヒロだってことじゃないんだ

ヒロはステージの下に地下室がある事すら知らないはずた゛。

地下室とDREAM BOXSの所有権は なんと瞳・・・君の親父さんなんだ

ヒロはレンタルオーナーなんだ。

その地下室は瞳を監視するために親父さんが作ったものなんだ。

今居る場所の状況が掴めたかい? 

そんないわく付きのこの部屋に

君は 今 どの程度 瞳でいるのか わからないけど・・

実は

僕も なのさぁ

洋子に夢中になる前の

瞳・・君に出逢った頃の自分に戻っているだ

もしかして

なぜって 思ってない??

その理由は僕は 明確に説明できるんだ

轟だよ

轟が 勝手に僕がお願いした以外の人格

つまり女ライダーの頭になるように

洋子を催眠誘導してしまったことが原因さ

 

僕は その悔しい偶然のショックで轟にも気づかれず

もとの哲にもどれたんだ。

こんなこと書いても 君がどんな気持ちなのかわからないから

不安だけどね

そもそも・・・

瞳 君が催眠誘導で洋子になってしまったことは

君を救いたくて 僕が轟に頼んでしまったからなんだ。

なのに

君の立場を 窮地に追い込むような 皮肉な結果を招いている

事態は取り返しの付かない方向へと進んでしまっているんだ。

 

元を正せば皆 僕の軽率な行動から起きてしまった事件なのさ

 

今日こそ 最悪の事態にならない前に

君にもう一人君

洋子が何をしたか 告げなければと僕は想っている・・・

まず 一番肝心な話しからするよ・・・バイクに載せられた真由美のことからね

真由美はこの部屋に連れてこられて

轟に催眠誘導を完全にかけられてしまったんだ。

その様子は君の左側の天井に備え付けてある監視カメラに録画され

僕がその時事を知って急いで駆けつけた時には もう轟は真由美と集団催眠に掛かったスキップビートのメンバーを

自宅に帰してしまったあとなんだ。

轟の催眠誘導時限誘導で掛けた後すぐ元に戻って掛かったいる間の記憶が無いんだ。

催眠暗示が提示されると、たちまち催眠状態となってしまうんだ。」

 

私は理屈じゃなくて実際に催眠誘導にかけられた私の体の直感で、

哲のメールに書いてある事は 嘘じゃないと感じてしまう。

 

僕の話しを君が、どれだけ信じるかどうかは

はっきり言って自信ないだぁ

よく考えてみりゃ 人が人の心を 全てわかってあげれる  なんてこと

残念ながら

ない

よねっ??

信頼し合った恋人どうしでも

小さな誤解で喧嘩なちゃうことは あるし

僕の話しを信じてもらう為に

やっぱり僕と瞳が出逢ったいきさつから

話さなければいけないんじゃないか??想う。

そう・・・瞳とであった時は

 

君は恋人の雨道武が事故死したショックで、記憶喪失になり、不眠症で深夜の町に抜け出しては

朝帰りの毎日を繰り返していた。

当時の僕は RoseWaterを開発して間もない頃で、怖いもの知らずのハッカー少年だった。

僕は あろうことか学校のゴピュターに忍び込み、中間試験情報や生徒の個人情報を入手して得意になっていたんだけど

それが瞳の親父さんから依頼された同じハッカーの轟に見つかり

補導されて不良少年のレッテルを貼られるところだっただけど

ハッカー行為による不当個人情報入手の事実は公にしない代わりに

瞳の監視をRoseWaterを使ってやって欲しいと頼まれたんだ。

親とし記憶喪失の瞳を監視したいということは、当たり前だし

僕はこの契約を引き受けたんだけど・・・

時が経つにつれ瞳のカウンセーリングも受けさせず放置して監視を続けようとする瞳の親父に

疑問を持ち始めたんだ。

悪夢のパンドラの箱を開けてしまうんじゃないかという不安を抱えながら

RoseWaterで瞳の生い立ち探ると

瞳と瞳の父のあいだには、血のつながりないことがわかったんだ

しかも潜在的に瞳に対して憎悪の念を抱いていると思われる事実がつぎつぎと浮かび上がってきたのさ。

親父さんはPTAの役席も辞して心配してると初めは僕は思っていたが

ある日 君は遂に昼間から学校にもいかず家を飛び出してしまったんだ。

焦って瞳の父報告すると

その答えは・・・なんと

友達の道子とのメールも妨害して遠くに投げないようにして

失踪の事実を誰にも知らせるな

という信じられない依頼だったんだ

そこには親の愛情というものが何も無いことを確信した僕は

その時 君を親のDVからの救出行動にうつすことにしたんだ。

僕は瞳の前には姿を現さない事が条件の監視の掟を破って

わざと尾行がバレル10メートル以内に近づいて接触しようとした時

覚えているだろうか?

君の足取りが 速くなり何度も不安そうに後ろを振り返りながらやがて

君は本能的な危機感を感じたのか?

突然

不自然な行動にでたんだ。

立体駐車場ビルの最上階のそのまた上の屋上に上がり

外枠の1メートル程のガードレールのようなフェンスを跨いで30センチほどの狭い踊り場に身を乗り出し

左手でフェンスの掴み奈落の底を見つめるように震えながら真下の道路に頭を屈めていたが

近づいた僕に気が付いて

いきなり叫んだんだ。

 

 

 

(この時の哲と瞳の会話)


「 これ以上 近づかないで

貴方 誰?

さっきから 私の後をつけているでしょ」

「瞳 

落ち着いて 危ないからそこから戻って

馬鹿なこと考えるな」

「なれなれしい人ねっ

危ない??

余計なお世話ょ

私は

私は ただ新潟の港の夜景が見たいだけよ

貴方 私の何なの

保護者にでもなったつもり?

どうみてもまだ中高生なのに

ねっ 私と同じ中学校じゃないよねっ

何処の中学??

一度も逢った事ないのに

何で 私の名前を知ってんの

「あぁー ・・・

君にどうしても

話したいことがあるんだ

でも こんな場所じゃ とてもできないょ」

「ははぁー

 

不審者のくせに

何 そのマジの顔つき

私を誘っての」

「何おっ 

僕は不審者じゃないからっ

お前こそ中学生なのに

何で立体駐車の屋上に来て何をするつもりなんだ」

「だから 夜景見たいからっ

・・・

 

 夜の街に 生真面目な説教は似合わないょ

判った

貴方 私のことナンパしたいでしょ

カラオケでも誘うつもりなの」

「いやっー

違うよ そんなんじゃない

何で僕が ナンパなんかするもんかっ?

 

まぁ・・・・

こんな深夜だし・・・・

そう思われても 仕方ないかっ」

「私はね

父の言いつけで、男女交際が厳禁なの

それどころか男の友達も駄目なの

 

あぁ

稲妻のように衝撃を受けて

記憶を無くした その時から 

 

 

微かな思い出の糸口を求めて

私のこの立体駐車場の屋上にいつも来るの」

「どういう ことなの??」

 

「そうね

たぶん それは

私の身勝手なイメージの世界の話しょ

眠れない夜が毎日続と

決まって・・体がひとりでに動いて

この駐車場に来てしまうの

そこには男の人が待ってるの

顔を麒麟の覆面でおおって正体を隠しているの

私はなぜか そんな彼に怖がりもせず打ち解けてしまうの

そして誘われるままに

彼の車に入り

車の中でリクライニングシートを倒して車のサンルーフを空け

名前も思い出せない人と

二人で星空を拝めるの

 

車は魔法の小部屋

手を伸ばせば直ぐに天井ぶつかる

狭くて密閉された空間なのにさ

外の雨や風から遮断して

オートマチックパラダイスを作る

自由に動き出すと望む景色を次々と代える

寂しがりやを夢中にさせるわ

動きを止めて窓の景色を代えない時の車は

ここで

眠り続ける

可笑しいよね

中学生なのに

車も運転できないのに

そんな人とデートする 同じ夢ばかり見る

悔しいくらい素直気持ちになってね

 

だから

この立体駐車場の屋上が

私スキなの」

 

「言ってる事が よく判らないけど

・・・それって夢の中の話し??

とにかく

此処は の思い出の場所なんだね

「・・・・

それで麒麟の覆面の彼が

昨日突然私に告げたの

もう 逢えないって

 

 

きょう此処に来ても

 彼が 居ないし

もう 何もかも 嫌になった

悪いけど

これで 君とは さようならね

私 彼の所に 行くわ

「待てよ 

その手を離すな

 

君は車に引かれて死んでしまった恋人の幻影を求めて

この屋上から飛び降りようとしてるだ

夢の中の出来事と現実が区別できないで居るんだ。」

「そんなこと どうでもいいの

私 疲れたの・・・」

「僕も 疲れているんだ

君の親父さんから脅されて君を監視するのに

もうくたくたなんだ。

もう駄目さ

君を支えきれない

そんなに落ちたいなら いっしょに落ちてくれないか?

「えっ?」

 

 


(哲のメールに戻る)

君は、その時恋人の後追って、立体駐車場の屋上から飛び降り自殺しようとしたんだ。

僕はガードレールフェンス越しに君の左手を握り締めて

君の自殺を阻止しようとしたんだ。」

 

肝心なとこ 違うっ

哲は自分の気持ちを隠しているけど

私は あの時会話だけは 今もはっきりと記憶している

たしか

いっしょに落ちてくれないかって言ったのになぁ〜

 

「君は 体のバランスを失って真下に落ちようとした。

左手一本で君の体重を支えきれず手が痺れてきた時

 

後ろから僕達を隠れて監視していた

近寄ってきて

君の体ごと強靭な力で掬い上げて

僕達二人を 今いるDreamBoxsの地下に連れきつてわけ

 

 

 

轟は 三つの特技がある

一番目が ハッキング

二番目が 人並み外れた運動神経と筋力

そして三番目が 催眠誘導で人の心を縛り付けることなのさ

 

その外の善悪の判断とか人間的要素は 人並み以下かまたは欠落しているんだ。

僕は瞳を助けた轟と取引をすることにしたんだ。

 

三番目の力で 瞳を自殺など考えない別人格の洋子にすること

そして僕が 瞳のことを忘れて 洋子だけ夢中になる男に なるように催眠誘導お願いしたんだ

その見返りに、僕はRoseWater機能を彼に教えたんだ」

 

どういとこと・・・

哲は RoseWaterの機能を轟に委ねてまで、私のことが気がかりだってこと?

「さて・・

前段の説明は長くなってしまったけど

伝えたい 問題点を話すよ

真由美のことだ、今は自宅で 大人しく普通に生活しているはずだけど

もしかしたら 時限催眠誘導が働きだして

瞳のように、真夜に失踪しだすかもしれない。

もっとリアルな最低最悪の状態を僕なりに予想するなら

真由美は武のような引き籠もりの影有る男を好きなることができる

ほど素直なお嬢さんだから、轟の時限催眠誘導が深くかかり

その反動で、瞳以上に催眠が緩んできた時に、精神が不安定になって自分がわからなくなり

中学の時の君のように自殺願望の少女よになってしまうかもしれない

これは 悪までも予想に過ぎないけど

そんな状態に真由美が陥ったら、救出する手段は

たぶん君が武に上げた 約束の箱 を真由美にあけさせることだ

あの約束の箱 は時限催眠誘導を解く暗示が中に入っているんだ

轟 本人が言っていたから確かな事だけど

轟の時限催眠誘導は体内時計を使ったもので

約束の日の前に箱を開くと、催眠状態から解けても元に戻れるかどうか

どうなるか予測が付かなくてもっと不安定な状態になる可能性があるみたいだ。

だけど僕は 武に接触できないし

運命の皮肉だけど...

 

真由美を救えるのは 

現状を誰よりも判って上げれることができる

 瞳だけなんだ

だけど

気おつけて欲しい

武からみれば 恋敵の真由美を苛める為に

真由美に近づく傲慢な洋子と思われるかもしれないということを・・

 

随分長いメールになってしまったけど

瞳に伝えなければならない事は 書いたつもりだ

こんな事態になってしまったのは全部僕の心の弱さのせいさ

どうか許して欲しい

哲より 瞳へ」

私は哲の長いメールを読みきった後

デジタル電波時計で日付を確認したら

真由美が轟に催眠誘導掛けられてから2日立っている

もう間に合わないかもしれないけど・・・私は すぐ行動をおこすことにした。

それは愛華に連絡して 怖いけど...真由美に接触する事にした

 

 

 

第8話 決闘 

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(2013年9月11日 水曜日)

危険な感じが漂う 哲の意外な心境が わかるにつれて

武には知る事の出来なかった

瞳と哲の秘めた苦悩が浮き彫りになってきましたね

 

 ここまで読んでくれてありがとう・★

それでは・・・

読んでくれた貴方に、ときめきの小さな灯りが、悪戯な風に惑わされて、消えないように願っています・・・続く

Hiko・★