第6話 奪われた心 2

気になってしょうがない

肌蹴た胸元の谷間を覗かせてジャケットの裏側から、なにやらネックレスらしきものを取り出した。

そして真由美の目の前に立ち、

銀色のチェーンの先にフィギアが付いたネックレスを

振り子のように揺さぶって 低くけだるい声で呟いた。

「女っ

このネックレスを よく見ろ

 

忘れていた

潜在意識の中から

お前の罪を 呼び戻せ

 

お前は 

犯した罪によって

これから私の罰を受けるのだっ

 

全てを私に委ねて

付いて来るんた゛」

「何を言ってるんだ

あんた 

頭 大丈夫なんか?

真由美が 赤の他人の貴方に突然

言うなりになって 付いていくと本気で思っている??

無駄だとおもうけど」

「それは どうかなぁ?

ライダーの頭は 円陣を組んで後ろで待機していた他のライダーに顎で合図した

「女を 押さえつけろ」

一番中心近くにいたライダー二人が素早く真由美の背中に回りこんで、

真由美が身動きできないように後ろ手にさせて押さえつけた。

命令で押さえつけた女の顔をみて真由美は驚いて叫んだ

「明菜じゃないっ??

私よ 

どうしたの?

真由美ょ

判らないの??」

見覚えのある顔

よく見たら それはスキップビートのキャプテンの明菜と登美子だった。

「どういうことなんだ?

冗談は  よせよ

 

 明菜っ

 

 登美子っ

 

本気で 真由美がわからないのか?

真由美を助けようと、明菜の手を引き離して解放しようとした時

「・・ 許してっ」

とライダーの頭が、呟いてから、

俺の顔面に平手打ちを食らわした

 

それは愛華の平手打ちより、弱かったが

俺には刺すように冷たくて痺れるような傷みを感じた

 

俺は 執念の衝撃を受けて

仰け反り、仰向けに倒れてしまった。

 

ほんとうに僅かな間だったと思うが

現実から遠ざかり

瞼の裏側で、デイドリームの世界にはまり込む

 

 

DreamBoxsのステージが目の前に広がり

舞台効果用の白いスモッグがステージの床一面に立ち籠めて

そのスモッグめがけて3Dホログラムの幻想的な映像が映し出された。

ステージの床にスモッグを掻き分け砂時計が回転して

転がり俺の足元でピタリと静止する

時計を覗き込むと

ビデオの巻き戻しかけたように時計の中の砂が逆流していく

 

それに合わせたかのように

ステージでは 小さな身長のセーラー服姿の少女詰襟の少年が登場

二人は向かい合って見つめている

目こらえて見ると

少女は 顔が幼くて初々しい

突然青い稲妻とともに相手方の少年は苦痛の表情を残して

足元から順を追って消えていく

突然のことに少女は動揺して泣き叫んでいるが

やがて 力尽きたようにしゃがみ込む

 

膝を抱えていた丸く蹲っていた少女は

俺に気が付き

顔を上げ

立ち上がって瞬く間に 等身大の少女へと変貌していく

その少女は 瞳だった

瞳の姿は ぶれ出して

洋子の姿へと分離していく

そして

洋子から女ライダーの頭へと分離して

重なりながら半分だけずれて三人並ぶ映像へと変る

瞳が 何か叫ぼうとした瞬間

光りが消えて

 

瞼を開けて

現実の世界に生還した

この夢は 俺に何を伝えたいんだろう?

・・・・

瞳という少女の 気持ちの奥底を 

想いやった

 

瞳は 

アイデンティティーが傷つくほど

命がけで恋をしていたんだ

恋人を失った痛手に耐えられないで

別の人間に必死でなろうとしていたんだ???

どんなに辛かっただろう・・・

 

 

 

「たけるっー」

真由美の呼ぶ声して

我に返る

しっかりしなきゃ

 

 

今は

妄想の中で生きる瞳じゃなくて

目の前の真由美

真由美を助けなきゃ

目を覚ますように頭を大きく振って

頭(かしら)の方を見て言った

「わかっているぞ お前は 瞳だろう

どんなに隠しても

出逢った時の 誘惑のその香りは隠せない」

 

ライダーの頭(かしら)は頭を抱え込みその手を震わせながら

一変して苦悩の表情で俺に囁いた。

人間は 一人じゃ生きれない

弱い生き物

だから・・・私・・・

魔の力に頼ったの・・」

運命の女と一途な女の間にあって葛藤が俺をの判断力を鈍らせ動きを止めていた。

 

「何を 言ってるんだ?

魔の力って・・・」

頭が真由美にかざそうとしたネックレスには

赤くて小さな蛇のフィギアが付いていた。

『夢で見た赤い海蛇

偶然じゃない・・・』

真由美はライダーの頭の呟きを聞きながら

ネックレスを見ているうちに

体の自由を奪われたように、ぐにゃぐにゃになって倒れこんだ

 

恐怖で頭の血の気が一気に引いて、心が凍結してしまった。

とその時

それはないだろうー

畜生ーっ

また

あの男が現れた

 

待機していたライダーの端からヘルメットをかなぐり捨てて

その厳つい闘争心に満ちた顔つきで、俺めがけて突進してくる

それは

 

運命の男

 轟だぁー

地獄の果てまで俺を追いかけてくるつもりなのかっ

 

今度この男と争ったら、俺は取り返しの付かないダメージをうけるだろう

後づりする心と真由美の意識朦朧とした顔が錯綜して戦闘モードをとれないまま

棒立ちになっていると

轟が、強靭なアメフトの選手のように足元にタックルしてきた

地面叩きつけられると

すかさず轟は攻撃の手を緩めず

俺の足を上から数回思いっきり蹴りつけた。

丸太で叩かれたような痛みが足から脳幹に伝わった。

苦痛に喘ぐ間もなく、轟の全体重が圧し掛かり

轟が、校庭の松の幹ほどの太さのある二の腕を大きく振りかざして

俺に殴りかかってこようとした

「だめだー

今度こそ やられるー」

瞬間

直ぐ後ろにまで詰め寄っていたライダーの頭(かしら)が轟の握りこぶし

後ろから全体重を使って止めた。

「轟君ー

     お願い

         もう止めて」

驚く事に、この一言で

筋肉野獣の動きが静止画像のように止まった。

轟は振り上げた拳を ゆっくりと下ろして

ライダーの頭(かしら)の顔を 息を殺して見つめてから

やがて俺の胸倉を押さえつけていた残りの左手を離して

後退りした。

頭の次の指示があるまで ライダーたちは身動き一つしないで電池切れの玩具のように止まっている

異様な光景だ

 

「助かったぁー

俺は まだ生きている

皆 どうしちまったんだろう

まるで集団催眠でもかかったようだ

そんなことって有り得るのかな??」

と 生唾を飲み込む刹那に感じる

俺は 

俺は・・・なぜ

この男と命がけの喧嘩してんだう?

 

真由美をただ守りたいだけなら、

真由美の手を鷲づかみにして、

臆病者とよばれても、振り返らずにこの妄想の修羅場から逃げれればいいんじゃないか

もしかして・・まだ瞳と繋がるために こうしている ?

 

瞳は

ほんとうは美形でお嬢様育ちのモテキャラなのに、恋人の事故死に耐えられず記憶喪失になってしまって

信頼されていたクラスメートから苛めを受け、人格障害が酷くなったのにちがいない

洋子は瞳が演じた架空の人格なのだと確信した。

そんな境遇の辛さが

俺には 身につまされて痛いどよくわかるから・・・きっと・・・

 

気になるのは、洋子として告白を受けた身の上話は

全部??

瞳の作り話ということなのだろうか?

根っこの部分の瞳の母親と父親の話しは もしかして

何パーセントかは本当の話しが混じっている気がする

 

と煩悶が前頭葉を駆け巡った。

 

 


(ここからは瞳の視線で)

私は 今

どうすりゃいいの?

ぎり 武の命が 危うくなった瀬戸際で

瞳の意識に戻ってしまったわ

回りに気づかれないように

なんとしても武と真由美を救わなければ

「おいーっ お前らこの小娘をバイクの助手席に乗せてずらかるぞー」

真由美は 意識を失い掛けているにもかかわらず武のほうに手をのばして

必死で叫ぼうとして唇を動かすが、声は出せないでいる。

 

武は 立てないぐらい打たれて痛めつけられた足を引き摺りながら

無理やりバイクに乗せられた真由美を助け出そうと

走りだしたバイクの後を 空しく追いかけてくる

 

「いやだぁー

こんな現実

もう いやだぁ」

瞳の意識が潮が引くようにどんどん遠のいてまた別人格になっていく・・・

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第7話 救出

 

 

 

(2013年7月14日 日曜日)

 ここまで読んでくれてありがとう・★

さて物語のほうですが

瞳の失踪と洋子との出会いから

武は普通の恋から遠ざかり

瞳と哲が持ち込んだ歪んだ妄想の世界へと引き込まれそうになります。

しかし瞳の友達の真由美はそんな武の苦しむ様をほうっておけず

DreamBoxの事件を境に、二人は現実の恋に陥ります。

内気な武が命がけで勝ち取った人間関係は

真由美であり でなかっと悟り始めます。

武の人生のヒロイン役が真由美にかわったことに気づき

瞳はまた新たな妄想の世界を作り出して

武達の前に立ちはだかろうと企てましが・・・・。

それでは・・・

読んでくれた貴方に、ときめきの小さな灯りが、悪戯な風に惑わされて、消えないように願っています・・・続く

Hiko・★