t第2話 Drea Boxsの花 愛華

二人が喫茶店を出るとレンボータワーには夜間照明が燈っていた。

横を通り過ぎる通行人の表情が夕暮れで よくわからない。

俺たち二人以外は どんな艶やかな服を着ていても、関係なくなってしまった。

 

闇は 昼間どんなに勇敢に戦ってきた戦士にも

一人では生きれないという不安を 与えるものなのだろうか?

 

時間の中に溶け込んで、そっと真由美の手を握った

真由美は、少し眠そうな目をして俺の手を握り返した

「たける DreamBoxsに行こうょ」

俺は返事の変わりに頷いた。

「たける 見て 夕焼け

なんか

変な色ね」

「別に 普通の夕焼けじゃん

何かおかしい??」

「そう そうよねっ

普通の夕焼けよねっ

ただ ちっと赤黒い色合いと雲のぶつぶつの形がなんか

いゃー」

「どうしたん

 何か心配事でも思い出した?」

「心配事?

そうねっ

そんなのある訳ないよね

頭空っぽでも・・ヒップホップ踊ってりゃ幸せな私に

心配事なんて無いわねっ」

俺はどんな顔していいか判らなくなったから

一瞬の苦笑いでその場を誤魔化した。

きっと 

その時の紫に染まった真由美が今までで 一番綺麗に見えたから

真由美は強引に俺の手を引っ張って

人ごみの中、バスステーションに向かって走り出した。

 

乗車したバスは混んでいて、一人半しかないスペースに強力な接着剤で密着された二人組みのフィギアみたいに

塊になって座った。

バスの中は周りの囲む人の熱気と体臭でエアコンの風が遮られ、蒸し風呂のような暑苦しさだったが..

俺の腰が真由美のくびれた腰にあたって

体の芯が熱くなるくらい真由美の体を 感じる

触れている腰以外の足のつま先から頭の天辺までの

裸体になった真由美のフォルムを焼印のように脳裏に熱く描く

『ヤバイ なんてこと想像してんだう

俺って どうしょうない いやな奴

やっと仲良く なれてうきうきしてたのに

突然の接触で心と体は 噛み合わないて 

なんだかぎすぎすする』

その時 真由美が無意識に俺の方に振り向き

「武君 どうしたの

大丈夫?

額から 玉の汗が流れているよ」


あどけなく微笑んで、ハンカチで拭いてくれた。

「真由美

ありがとう」

「えっ 何か変よ」

「何でもないよ 

いいんだ 

応援してるよ どんなことになっても・・・」

俺は すごく恥ずかしくなり

片手のファション雑誌を持ちながら

つり革に掴まってこちらを時々チラ見している

二十歳前後のOLらしい女性の視線を気になっいしかたない

真面目な女子高校生の顔?に戻って俺の方を見つめなくなった。

 

真由美 ありがとう

素直になれなくてごめん

こんな俺を 今日一日だけでも

よろしく頼むょ

もう 昨日の俺には 戻れないんだ

たぶん 高校生活なんて あっという間に通り過ぎてしまう

俺は これからどれだけの人とどんな関り方するのだろう

皆 流されている

完璧な人なんていやしないさ

俺も 弱くて流されていく

でも それって 当たり前のことで

恥ずかしいことじゃない だふん いや 絶対そうさ

瞳って 今の俺にとってどんな存在なんだろう?

もう俺のこと 恋人と思ってないかもしれない

余りにも自分勝手すぎる行動さぁ

 

・・・・そう 自分に言い聞かせて

瞳のこと 悪者に仕立てたいのかな

違う そんなんじゃない

もっと単純ことだ

俺は今 瞳より 真由美と いっしょに居たいだけなんだ

出逢った時の瞳は

同じ悩みを抱え 衝撃的だったけど

時間が 冷静さを取り戻してくれた。

瞳が話してくれたことは よく考えてみると

ごちゃごちゃと複雑すぎて理解できないし

ヤバイ世界だと思う

それに 洋子のこともなんだかおかしい。

洋子と哲とは どんな関係なのだろう

瞳と洋子は ほんとに別人格なのかな

もしかして?

わからない 霧の中で一人歩きしているよな気持ちだ。

瞳は俺に嘘をついている そんな気が日ごとに強くなる。

俺 

これ以上悩みたくないから

でも 皆そうさ

流されいてる それでいいんだ。

 

バスが目的地に着くと、肩を叩いて真由美が前より優しく手を握って

俺は人ごみ地獄から開放された。

大きな看板のあるDream BoxSの手前まで近づくと

入れ口の正面にメイド衣装に身を包んだ少女が一人佇んでいた。

ペコちゃんみたいな遠くからでも分かる赤ら顔に大きな目

漫画の世界から抜け出してきたみたいなにファンタジーな感じ

ベビーフェースの愛華だ 

 

『えっ 何で 愛華がそこに居るの?』

よく見ると大きなプラスチック系の看板を持ち抱えている

そこには

 

『 ここより先は 魂の奇跡を呼びこす場所

喧騒の巷を忘れ 狭き門より夢想の自由を勝ち取れ』

と書かれてある

「愛華 どうしたんー その格好?

まさかぁ

ここでバイト??」

 

「武君

残念でしたぁ

私があげたチケットよくみてょ

注意書きで 小さく書いてあるでしょ」

「ぇえっ そんなん あった?

あっ

あった ぁった 一番最後に」

当日は 自己アピールできる格好 コスプレ等で参戦していただければ嬉しいです

って書いてある

でも これじゃ小さ過ぎて気がつかないよ」

「何言ってるのよ こんな大きい字 見逃すほうが

あほ やん もういいわ

チケットチェクしたから

・・・いいから 中入って」

と言ってチケットの耳を切り取った

「あっ

真由美 今日は 武君と二人っきりなの?」

「そうなの愛華っ」

「そう 二人ともまるで恋人どうしのデートの途中みたいな雰囲気してるよ」

二人は顔を見合わせ、同時におどけた笑顔で答えた

「愛華 勇輝たちには内緒だぜっー」

俺は 愛華を俺のもとに最初に連れてきたのは

真由美だったてことをすっかり忘れていた

どんだけ かは分からないけど、真由美と愛華は友達なのだ

もしかして、真由美がDreamBoxsの洋子のライブへの誘いにOKしてくれたのも

愛華がDreamBoxsに居るとわかっていたからかなぁ?

 

なんだか小っちゃな愛華の背中が 大きく見えるなんて思いながら

愛華に導かれて俺たちは細い通路から中央のステージに向かった。

 

通路の中ほどで、入り口で 立ち話していた時 

愛華のチケットチェクを無視して抜い先に行った一人の少女が

自分のポケットの辺りを手を突っ込んで探し物していた。

床の左側を見ると 彼女の落としたチッケットらしき紙が、目に入ったので

拾って渡してやった

「このチケット 君が落としたんじない?」

「ありがとう、てっきり 慌てて忘れてきたかと思って

頭 白くなてたとこなの」

そう 言ってにこやかに チケットを受け取る少女の様子は

ネットユーザ生んだデジタル少女初音ミク のような緑色のヘアースタイルと衣装を身にまとい

背中にはリックサックを担いでいた。

チケットを受け取る透き通るくらい白い手首には 赤黒い線上の痣が二三本切なく付いていた。

「何っ」

少女は表情を一変させて 逃げるように通路を駆け抜けていった。

「武君 言葉に気おつけて

彼女は たぶん家出少女よ」

と愛華が追いかけようとする俺を止めた。

『そうかぁ わからないけど 痣じゃなくて 切り傷だ

いったい このイベントは 何なんだ???

かわいそうに 家出なんて 親の愛情がないから

家の中に居た堪れずに,打ち上げ花火のように飛び出して

心身ともに自立できないままでも無理やり見知らぬ地で 花咲かせようとするんだ』

 

家出少女的な未熟女の怪しいフェロモンに男はヨワイと知っているのか知らないのかわからないけど

俺の前では わざとおばかキャラで 和ませる真由美は

ほんとうは 俺よりずーと大人の人間関係が作れる女じゃないかと最近思ってる。

そんな真由美だからこそミクキャラの少女ことは何も言わないかわりに

しっかりと俺の手を握り締めて。

「今日は 武の恋人なのよ 私

忘れないで」

と 先を急いがせた。

 

 

通路の奥からは もうイベントが開演したらしくて

なにやらベースらしい重圧なルート音が床から脳幹を揺さぶるように伝わってくる。

観客のざわめきと弾む息使いもステージに近づくほどに大きくなる。

それほど広くないホールには、夏休み独特の開放感かられた学生や二十歳前後の男女で

ファンクロッカー風はたまたドクロ系やコスプレ、応援団風の学らんやフェアリー系のかわいいファションなど

思い思いのファションとメイクで自己主張している者もいる。

俺たちは まとも過ぎて逆に目立つくらいだった。

 

人ごみを掻き分け、ステージの左脇の前から2列目に座ることにした。

ステージに目をやると 男が一人立っている。

周りの照明はカットされてスポットライトが中央の一点に注がれ 

その中でベースシストが飛び散る汗で髪が濡れるほど首を大きく振ってヘビメタのノリで延々とベースを刻んでいる

ミラーサングラスを掛け長髪なので 顔がよく見えないが

俺よりは大分年上といった感じた゛。

男のパワーと熱気に誘われて 前列の客が立って手拍子を取り始め

その隣も立って手拍子

やがて会場全体がライブの初めから立って手拍子し始めた。

スポットライトが二つに分かれて舞台の袖から ガールユニットが登場してベースに合わせて踊り始めた。

やがてステージの後ろに控えていたドラムもリズムを刻み始め

最後にギターが加わってきた。

ギターを弾いている男は 何と 勇輝だ

そして踊っているのはあのスキップビートだ。

真由美は口に手を当てて驚いて

スキップビートの中にメンバーじゃない女を指差した。

勇輝の遠距離恋愛中の玲奈

数分に及んだイントロ演奏とダンスは終わり

勇輝と玲奈が寄り添って舞台の上から俺たちに手を降っている。

「真由美 出るって、知らされていないのか?」

「もちろんょ 皆意地悪ねっ 」

「なんだ 勇輝のやつ 俺に内緒で 大阪の玲奈とよりを戻していたのか」

「夏休みだもん 当然かも」

「そうだな」

驚く事はまたまだ続いた。

ステージの袖から愛華が さっきとはまた違ったメイド姿で出てきて

「皆さん 今晩わ 

MCでこの店のオーナーのヒロを 紹介います。」

愛華ぱオープニングのインストを勤めたベーシストを指差した。

「パパお願いっ」

『パパ?

愛華って このDreamBoxsのオーナーの娘だったのか』

 

 

 

 

第3話 再会

 

 

戻る