第2話 瞳の失踪 

 

その日夜はびしょ濡れの悲しい瞳の顔が頭にこびり付いて俺はなかなか寝付けなかった。

ベッドで横になって

瞼だけ閉じて 心を静めようとした。

 

瞳との思い出がグルグル回転して渦巻きだす。

やがて、フラッシュのように一瞬、無邪気に微笑む瞳が浮かび、そして直ぐ消え去る

どうして 直ぐ消えるんだ。

消えなくなったかと思えば、艶やかな髪が目元を覆い表情を読み取れない...

近づくと

地面が揺れ出す!

回りを見渡せば、自分は、緑が溢れる澄んだ空気の自然の中

落ちたら生きて帰れない谷間に掛かったつり橋の真ん中に居る

つり橋の先の日差しが照りつける崖には、少女が手招きする。

焦って近づくとあどけない少女の顔は 距離が短くなるにつれて

大人の顔に変わっていく...

そこに居るのは、見慣れない学生服姿の瞳に似た少女

躊躇いながら、振り返ると

自分が居た反対側の崖には、瞳が膝を地面に落として泣き崩れている


呆然と立ち竦んでいると、つり橋が突風で揺れる

突然湧き上った黒雲から大粒の雨が激しく降り注ぎ

瞳が霞んでいく...

    「瞳ー」と大声で叫ぼうとした時

うなされて浅い眠りから覚めた。

 

重い心を引きずりながら朝食を食べずに学校に行く

朝一の吉田先生の数学の授業が、全然身に入らない

ふっと、窓の外の丸いだるまのような雲を眺めた。

 

「なんだか、全て放り投げて

見知らぬ町で

見知らぬ人と

無邪気な夢物語が作りたい..」

 

腿から振動がつたわり。

見つからないように机の下で、携帯を開いた。

 

武君、大変よ、!!

昨日様子がおかしくて心配してたけど

やっぱり瞳が 、無断欠席したわ!!」

 

「わかった、道子ちゃん」

 


「瞳、いったいどうなってしまった゛???

今、何をしているの?

何処にいるか連絡大至急くれー」

 

 

瞳に打ったメールの返事は

予想通り

とうとう来なかった...

瞳の美しい残像を 背負って授業の内容は上の空の日々...

瞳が消えた日から×印の続く

消し込で黒々としたカレンダーを見ると

緑文字で際立ったチェックマーク

もう 「夏休みまであと一週間」

瞳から連絡の無い日々が続く

 

道子の教室という心の秘密基地が荒らされたお陰で、期待していた夏休み直前の学園祭にまたオレンジエイドとして参加する構想も頓挫して

ささやかな触れ合いの場を失った俺達メンバー全員は

酔っ払って道端でだらしなく寝込んでいる醜い大人のように

すべての将来の予定が色あせてしまって

退廃的な脱力感に襲わる学園生活になっていたと思う。

 

そして あと二日で夏休に突入となった日

授業が終わって、バイトがないから家に帰るまでに1 時間ばかり

図書室に一人残って宿題をかたずけてい時 

ケイタイが鳴り出した。

「もしもし・・武です」

「洋子です

突然ごめんなさい

今、授業は全て終わりましたか? 」

「終わったよー どうして?」

「ちょっとだけ、逢ってもらえませんか?」

『洋子から ・・・どうしょう...

ヤバイ感じだ

きっとろくな事にならない 瞳の行方を何か知っている予感もする...

逃げる訳に行かないか・・』

「・・・ 突然だね

        いいよ」

「私、門の近くの歩道に居ます」

門の外に出ると、学生服姿の洋子が、、見覚えのある赤いリックを背負って後ろ向きで待っていた、

俺に気がつくと、振り返り

ケイタイを手に持ったまま手を振り招き寄せようとしていた。

「その リックどうしたの?

もしかして・・・瞳のじゃ ??」

洋子は 一瞬微笑みかけたが急いで自分の表情を隠して

 

「 瞳 ??

違うわ これ 私のリックよ」

「えー」

『こいつ   何か隠しているな』

「じゃ 今日は 何の用事?」

「今日は 渡したい物があって・・・」

洋子はケイタイをスカートのポケットじゃなくて制服の裏ポケットに移し替えて仕舞い込と、

背負っていたリックゆっくりおろして中から瞳から貰ったラップ紙と同じ模様の箱を取り出して

 

「武君 には 接触事故で 痛い思いさせてしまつたから

お見舞いの手製のプレゼントを持ってきたのよ

是非 受け取ってっ」

 

『 嘘ついている

その箱模様は 瞳から預かったものと同じなのに

そんなに偶然が重なることなんて

有り得ないぞ 絶対にっ』

俺は 瞳への想いから 頭の天辺に血が昇り沸騰しそうに興奮した。

「聞きたいことが あるけど ここじゃ言えないから・・・」と言って

俺は どうすることもできない野生の本能の力に突き動かされて

無理やり洋子の手を鷲づかみに乱暴に取って

洋子の体が斜めになるくらい強い力で引っ張り

誰もいないグランドを焦りながら・・二人で付きぬけようとした。


洋子の表情は 一変して 嘉手納の戦闘機が離陸寸の滑走路の満々中を突然横切るような

不安な顔をしている。

施設可動停止日で閑散となった・・プールの更衣室まで、連れ込んで

外壁に洋子を 押し付けると。

洋子は 髪を乱し

あの健康そうな笑顔が 嘘のように

息苦しそうに 唇を青ざめ色に変色させ肩で弱々しく息をして、額から不愉快な汗を流している

まさか自分でボタンを外すわけないと思うけれど

走ったせいか・・第二ボタンまでザックリ外れ胸元の谷間まで見える。

汗がにじみとても小さなホクロが見えて呼吸を整えるたびにそれが、揺れていた。

洋子は 俺の変容ぶりに驚いて 固まったように無言でいたが

少し落ち着いたのか 汗を拭こうと ポケットからハンカチを取り出そうとした時、

 

いっしょに仕舞い込んでいたバス通学定期券と兼用なにった学生手帳がはみ出して

地面にばらけて落ちた。

「洋子 ウィリアム」  

生年月日**** 年10月11日

**********************

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『えー  生年月日までが 瞳と同じだ。

それにウィリアム って 道子の話じゃ

瞳の母親のアメリカ留学中の無二の友達は

確か・・・「美紀 ウィリアム」って言ったぞ

なんか ある

絶対に 俺の知らないとこで瞳は 洋子と繋がっている気がする。』

 

俺は いちかばちかの賭けを することにした。

「なぁー 洋子

俺へのプレゼントだなんて言って

どうしてそんな当て付けがましい見え見え の嘘つくだ

お前さ 本当は

瞳の居場所、知ってんだろ!」

 

俺は 言葉をわざと荒々しいくして、洋子を脅かして

本音を聞きだそうとした。

「・・・瞳って もしかして武君の付き合っている子のこと?

私 武君のことも まだ全然知らないのに

なんで

知ってるわけ無いでしょ 」

『当たり前の返答だった。

けど、全然納得できない・・

俺と瞳が 心を通わせることのできた場所は道子の音楽教室

その大切な俺達の秘密基地を荒らしたのは 哲かもしれない

瞳を失踪させた原因と深い因縁のあると思える人物も 哲しか考えられない

その哲と洋子が絡んでいなければ

俺もこの女の行動に、こんなにも不審を抱かないけど....』

 

「ねー武君

瞳さんとの間に何があったか知らないけど

へんな妄想しないで

それよりも 私の持ってきたプレゼントの箱を開けて機嫌直してっ」

洋子が 指差した先には 俺に引っ張られながら洋子が片手でやっと持ってきた問題の箱が

斜めに芝部の上に転がっていた。

俺は 洋子を睨みながら、その箱を鼻息荒くしてた開けた。

少し丈夫で固めの箱の蓋を開けると同時に

不可思議なメロディーが聞こえてきた。

 

「何 これ オルゴール? 」

「まぁー 手製のオルゴールみたいなものね

それより このメロディー何の曲かわかる?」

「動画サイトでなんか 聞いた事があるんだけど・・・

もしかして あのビートルズかなぁ」

 

「ピンポーン 正解ょ

ビートルズのWhile My Guitar Gently Weeps

 

 

「 わぁおーやった」

 

「歌詞は 知らない?」

 

「英語 あんまり勉強してないけど

たぶん 心がコントロールできなくなるくらい悲しみで乱れた恋人を

ギターで慰めるってな感じの曲じぁなかったかな?」

 

「凄いっ 武君 そのとうりよ

私ね

この曲聴くと

切なくなるの

武君 誰かのこと思い浮かばない」

えぇっ ・・・洋子がそんなこと言うと頭こんがらがるよ

 

それより

洋子

箱の中に何かあるけど・・・」

俺は苦しくて

話しを飛ばして 前に進めた。

 

 

 

 

箱の中からは、何やら動物の縫いぐるみらしきものがでてきた。

「うわーっ

きもい

もしかして シマウマ?」

「酷いわ よく色を見てよ 」

「何だって 黄色 で 黒の模様

?? ・・・・

 あっ 」

もしかして 首の短いキリン?」

「ピンポーン・・立たせる為に重心低くして

首を短くしたら、首長馬・・みたいになちゃった」

「そう言われれば 相当無理してキリンに見てきたけど...」

そう言いながら俺は今までの緊張した気持ちが緩んで にやけてしまった。

『いけねっー

今 俺は洋子の本音を聞きだそうとしているのに

いつの間にか 洋子のペースに巻き込まれている。

洋子って 素振りは最初うぶだけど...男の気を惹くのに そうとう慣れた感じみたいだ。

こんな時 どうしたらいいんだろう?

瞳のように ストレートな気持ちでぶつかっても

だめかも

俺は 何としても瞳を探しださなきゃ

哲から酷い仕打ちをうけてもいい

道子や勇輝から誤解されてもいい

作戦変更だー。

押してもだめなら 惹くしかない

洋子と親密になって瞳を助けたいーっ

瞳 俺を信じていてくれ』

 

「ははーあ、君て面白いね」

「誉めているの?」

「たぶん・・ね」

「じゃあー 気にってくれたってことねっ?」

洋子は ネコ目の細さで微笑んだ。

「ああ

ユニークでいい感じだから早速、机の上に飾るよ・・」

「嬉しい・・っ

 

気になってたこと解決ー


これで、一安心」


「一つ質問していいか?」

「何っ」

「なぜキリンにしたわけ?


好きな動物だから 」

「えーと、そうなんだけど

ねーえ、武君 

あのさー

キリンの首が長い理由は知っている?」

「そんな難しいこと俺に聞くなよ

よく知らないけど、ダーウィンの自然淘汰ってやっで

長いキリンだけが、環境に適応できたからじゃないか???」

「うわー

面白くない答えね

・・キリンの身になって答えてみて」


「キリンの身になって・・えーと

背の高い木の葉っぱが・・どうしても食べたいので

首が長くなりたいと・・思い続けたキリンいたからとかは・・どうかなぁ」

「Oh Fantastic、

気持いい答え・・

私の答えはねっ

首が長くなりたいと願っているキリンを愛したキリンがいたから

愛 ? したキリンンいたからか・・

 

そんなこと俺考えられなかった。

   君 悪人なれないねっ もしかして誤解してたかも...

 

 俺も

俺もさ

それが本当かもしれないと思う・・・

    洋子 ごめん

君が瞳だったら と思うあまりに 

つい強引にこんな所まで連れ出して

怖かった?

正直言うと

俺...

俺ずーと睡眠不足になるくらい・・

寝ても覚めても瞳のことで悩んでいたんだ

居なくなったら気がついたんだ

俺 瞳のことスキなんだ

一緒にいられたら 何もいらないだ

ホントなんだ

だから

た゛からさ・・・

 

瞳に似過ぎているのに性格が違う君のことが 気になって

興味が湧き上るのに 君に近づけないモヤモヤが....

もう どうしていいかわからなくて・・・             」

「・・・」

 

俺は 洋子の目の前でカッコつけるのも忘れて 涙声なってまで自分の感情をぶちまけた。

 

洋子はじっと俺を見つめて・・

「武君・・・

貴方って 純な人ねっ

 

ホントはねっ 

謝るのは 私のほうなの」

 

 

 

 

第2話 真実の告白

 

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(2011年12月23日 金曜日)

 ここまで読んでくれてありがとう・★

貴方に、ときめきの小さな灯りが、悪戯な風に惑わされて、消えないように願っています・・・続く

Hiko・★