第4話 愛華

「面白い?

それって

さっき俺が言った言葉 そのまま返しただけじゃないか?

からかってのかっ 」

「違うってばー そうじゃないよ

つまり 人間的に 面白い

ってか 珍しいってこと」

「つまり 変人って言いたいのかー??」

「なに その顔

笑ってるの 泣いてるの??

 

ああぁー ごめん 怒ってるのよねー

そうやって むきになるとこ

めっちゃ可愛いね

私 なんだか

武君のこと・・・

・・・イケナイ

もう 私帰るねっ」

「待てよ 

話し半端で 逃げんなよ

肝心の 瞳の居場所は 知ってるのかよー 教えろよ 

・・・

洋子 おまえさぁ

ほんとは・・・」

「何よ??」

「・・・・・ 」

「武君こそ 何よ その半端ー

何を疑ってるの??

信じて 瞳の居場所は

マジ知らないの・・・

これ以上は 話せないの

もし 私に何か伝えたいことあったら

哲が また私のメールを得意のハッキングして

もめごと起こすと悪いから

武君のクラスメイトの愛華を通して連絡付けてくれる?」

「  愛華って ....

ああー あの聴覚障害なのに普通高校に編入してきた・・・あの子のこと

ふざけんなよ

愛華が連絡なんて

そんなことできるわけないだろ」

「へぇー わかってなんだなぁ

愛華ならスマホで すいすい会話しちゃうよ

・・・武君こそ いったいどこで愛華のこと知ったの?」

「愛華なら一度 真由美がオレンジエードの練習に見学に

連れてきたことがあるんで分かるんだ。

聞こえないのに バンド練習の見学にくるなんて

変な子だっていうのが印象に残ってんだ

別に 話さなかったけどね」

「えっ そうなんだ!」

「洋子は どうして 愛華と友達になったの?」

「私の場合も 愛華はね

musicがきっかけで知り合ったの

私ね

土曜日の夕方頃に古町モールの歩行天で路上ゲリラライブやったの

そん時に 私の見の前ので、一人だけ甞めるに近くで

ずーとぴったりとひっついて私の歌を聞き込んでくれたのが 愛華なんだぁー

でも なんか聞き方が おかしいの

頭をしきりに揺さぶって時々天を仰いで

何かを叫ぶように

ちっと 怖い感じしてた。

最初は 私も あんまり近寄りたくない子だと感じてたけど

後でだんだん彼女のことがわかってきて

その訳に 納得したの

愛華は 耳悪いんだぁーてね

それで

体使って、リズムを探していたのよ

なぜって

彼女 中途失聴者なの それに完全に聞こえないわけじゃないみたい

耳悪くなる前は 私と同じバリバリのギター好きでバンドリーダーもやってたのよ

だから

記憶とイマジネーションと

空気の振動を耳じゃなくて

肌で感じてMusicを楽しむのよ

驚くでしょー

それに会話の相も、相手の唇の動きを見てアバウトにわかるらしいのょ

だから、私の目の前に来たってわけよ

 

・・・友達になってから教えてくれたけど

病気で聞こえなくなって

自殺したくなるくらいショックを受けたらしいけど

今は 立派に立ち直ってのよ

そんな 深い事情知らなかったでしょ?」

 

と俺の瞳の置くの反応を確認できるほど近寄ってきた。

「・・・そうか 

「納得してくれたぁぁ〜?

じゃ そういうことで 今日はこの辺で帰らなきゃ

プレゼントちゃんと家に持って帰ってね

バイバイ 武」

 

洋子は 俺の顔みながら後ずさりして手を振りながら

ニコヤカニに微笑で

体の向きを変えて駆け足で逃げるようにその場から立ち去った。

手首から血が滴り落ちるような、喪失感が俺を襲う。

『あまりにも、瞳に似すぎているーのに

話しを すると別人格だとわかる

それなのに 目を閉じると洋子の残像がへばりついて取れない。

ぁあー 何て 寂しくてやりきれない』

俺は 洋子が立ち去った方向のぼんやり眺めて

瞳のことを思い出そうとしていた。

洋子が残した言葉で、瞳から最後に貰った箱のことが気になったけど

俺は 馬鹿馬鹿しいけど

意固地になって約束どおり瞳の箱は開けないことにした。

もし約束を破って開けたら 瞳にもう逢えなくなるという

根拠の無い不安が俺の頭を支配していたからだ。

 

 

洋子と逢った翌日

俺は 家でいろんな事で勉強が遅れ気味になっていたので、珍しく机に向かって勉強していた。

目線は教科書に注がれていても

頭の中は 瞳と洋子の記憶が重なり合いながら竜巻のように渦巻いて

集中ですずに勉強どころではない

電波時計が8時の休憩時間を告げた時

玄関の呼び鈴が鳴った。

玄関のドアをゆっくりと開くと暗くてよく判らないが

童顔の学生服を着た小柄な少女が

俯きながら立ちすくんでいた。


雲の切れ間から月明かりが差して少女の顔を柔らかく映し出す。

無理して買った冷たいLED電球の光りが

近づくにつれて、代わってその輪郭を鮮やかにする



愛華だ

冷たさを吹き飛ばす林檎のような血色のいいぽっぺ

風呂上りのような綺麗な肌

それに目鼻立ちのクッキリした顔立ち

思わず 言葉を忘れて愛華の様子を伺った。

 

よく見ると 学生服はオーダーメイドのオリジナルで流行のカワイイ系学制服ファッションだ。

上は白のライン入りジャケット 下はリボンと同柄のベイジュと紫のラインのチェック模様のミニスカートだ。

夜中の まるでAKB48風な派手カワイイファッションに 息を呑む。

 

俺はずぶ濡れになった瞳が失踪する前に道子の部屋に遅れて一人来て

出迎えた時の様子を

まるで映画のワンシーンをフィードバックさせるように思い出した。

どこか似ている出迎えの設定だけど表情がまるで違う

疲れ果てた瞳と 障害にめげず運命を跳ね除け目をキラキラと輝かせた愛華では

闇と光りほどの差があった。

 

もしも彼女が聴覚障害者じゃなかったら、俺のような地味男とは縁の無い友達関係を作っていただろう。

「園田愛華さんだね 君のことは洋子から聞いてるよ

でも まさかこんな夜中に来るとは思わなかった

大丈夫なの?」


と言っても 聞こえないか?

空かさず愛華は スマホを取り出して手馴れた仕草でタップして

俺の顔面めがけて画面を押し付けるように見せた。

「愛華です

お邪魔していいですか?」

「あー 俺は別にかまわないけど...」

愛華は 靴をきちんと揃えて散らかっている俺の部屋に

俺の心配を無視するかのように

背筋を伸ばして堂々と 独身男性の一人暮らしの家に上がりこんだ。

家の様子を舐めるように見回してから

またスマホを取り出して、要件を打ち込んでさっきのように見せ付けた。

「私のことは洋子から聞いてると思うけど

今日はDream Boxsでのライブ招待チケットを10枚ほど持ってきてあげたよ

洋子が夏休みに入ってからやる初めてのライブなんだ。

友達を誘って見に来るといいよ」 

なんか知らないが距離が近い

愛華は 俺の真正面に立って毛穴が見えそうなほど接近して

俺の口元あたりを凝視する。

焦った俺は 勉強中のノートに 「ありがとう」と書いて

無理やりノートを引き裂きて愛華に手渡した。

 

「書きかけのノートが

もったいないよ

頭悪いねっ

ケイタイもってないの?」

何!

・・もちろんケイタイぐらい持ってるよ

はっきり言って いいか?

愛華 お前さぁー 

真夜中に男の家にきて いきなり馴れ馴れしくない?

「ごめん 気に障ったの?」

「えっ 聞こえたの?」

愛華も目がおよいで 明らかに焦った様子でスマホを打って答える

「唇の動きと 感で だいだいはね」

「あぁー 忘れてた そうだったねっ」

俺は、大きく頷いてみせてからケイタイを取り出して

「じゃーこのチケットでオレンジエイドのメンバーも誘って行くから」(武)

「洋子に伝えとくね」

あいは愛華は 机の正面に並べた本棚の一番片隅に置いた白地に十文字のイラストの描かれた本に指さしながら目をやると

「この本 武君も読んでいるの?

私も大好きっ。」

「うん 俺の カミなんだ

映画も見た?」(武)

「ギターの ??」

「 ・・うん」(武)

二人は緊張が一挙に解けて 視線を照れずに平行にして微笑んだ。

「 その本ね 洋子から薦められちゃたの」

「ぇ ほんとに!!」(武)

愛華は そのあどけなさの残ったその笑顔を 少し曇らせて

時計を気にして帰ろうとする仕草をした。

『よく判らないけど なんか不思議な子だ

このまま帰したくないっ。』

 

「お茶 飲んでいかない?」

と喋りながら カップで飲む仕草を手でした。

愛華は 俺にもわかるOKサインの手話をした。

『なんとも言いがたい本能を沸き立たせるような嬉しさが体を突き抜ける

愛華を居間のテーブルまで案内すると、冷蔵庫扉を荒々しく開け

ペットボトルのウーロン茶をレンジで暖め

小皿に小粒のキャンデーと塩味コーンの甘辛混ぜたお茶菓子を盛って

「よかったら 食べて」

と言ったきり次の言葉を用意出来ずに

一瞬 吐き気のような切なさを一瞬感じて、

愛華との距離を少しあけたくて窓辺まて後ずさりした。

いまさら洋子のこと聞き出す気にもなれない。

愛華がお茶菓子に手をつけてくれてリラックスしてくれたので、冷静を少しとりもどせた。

どうしていいかわからず、ふと窓の外を視線を移した。

澄んだ空気の夜に、ひときわ鮮やかに輝いてる星が目に入ってきた。

よくわからないが、あれは金星だろうか?

あの輝きに もしも音が出せるなら、ガラスの容器が奏でる風鈴のように聞こえるかもしれない。

『瞳 ごめん 

瞳と付き合い出してから

きっと俺は・・・朝目覚めた時に 家の中に誰も居ない生活に、限界を感じているんだ。;』

俺は、愛華に唇の動きを見られないように窓の外を 見たままで

そっと呟いた。

『わかるかい 愛華

俺が 毎日どんな気持ちで 生きているか?


この頃 朝方まで眠れなくて窓越しから薄日が差すと、やっとうとうと出来るんだ

そんな時 みる夢は土砂降りの雨の中に、立ちすくんで悲しい顔してこっちを見ている

瞳の姿なんだ。

呼びかけても

けして答えてくれない

そして雨の中に滲んで消えていくんだ。

俺が 瞳と 叫ぶと

ケイタイの着信音が 大音響で鳴り響く

魘されて飛び起きると、あっという間に朝日が昇りかけて隣の公園の小鳥の囀りが聞こえて

枕元は 自分と瞳の分をたしたぐらいの涙と汗で

ぐしょぐしょなんだ。

『男はめったに泣くもんじゃない』って親父が口癖のように言っていたけど

俺もそう思っていた。

俺が泣いたのは その親父が死んだ時ぐらいで

お袋が死んだ時は 泣けなかった。

それなに 最近の俺ときたら

赤ん坊が 生きるために母親に命がけで泣くように

俺は 枕元を濡らして起きる時があるんだ。

自分がこんなに弱い人間だったなんて

ほんとは 腹立たしいんだ゛けどねっ

それでも 俺は 迷わず枕もとのケイタイで着信を調べるけれど

微かな期待はいつも裏切られて、あの日から瞳の着信は こないのさ

切なさが瞳と二人で作り上げた大切な時間をシュレッダーで粉砕するように

めちゃくちゃに引き裂いて記憶から消していくだ。

どうしても瞳の笑顔が思い出せない

目を閉じても もう脳裏に浮かばないだ。

朝目覚めるたびに、破れた風船みたいに気持ちの張りの無い日が今日も続くのかと思い知らせされるのさぁ。

なんで俺だけこんなに不幸なんだなんて思う

それに親代わりの兄から、先日電話があってリストラでとりあえず来月からは、

仕送りは50%カットの減額支給にするし

もしかすると高校卒業前にには仕送りできなくなるかもしれないから言ってきたんだ。

母親のアルチュウの介護を 海外の仕事のせいで

未成年の俺に押し付けるしかなかった辛い立場の兄のことだから

そんなことも ありと覚悟してたけどねっ

俺 高校中退して 働かなきゃいけないかも

あぁー

まじめに生きてるのに

最近 悪い事が立て続けに起こるだ

昨日なんかさぁー

俺・・・

学校の昼休み

俺の周りでオチケン部の連中が一発ギャグの練習やっていたんだ

全然笑えない寒くなるギャグなのに 相方が大声で愛想笑い

二人で意味無く じゃれ合ってんだ。

それがどうにも、うざくて

俺 益々気持ちが落ち込んで

友達の滝本は 夏休み前なのに AKBの追っかけで もう学校休みやがったし

もう なにもかも嫌になってきたんだ

うっとうしくて 教室から抜け出して

禁止されている非常階段を使ってふらふらと誰も居ない屋上に上がったんた゛。

屋上の入り口近くには、一部の部員が秘密練習して

片付け忘れたような剣道部の竹刀と御面が 転がっていて

異様な光景と汗で臭い匂いが充満していて

堪らず 新鮮な空気を吸いたくて、金網越しに近づいたんだ。

深呼吸して 暫くぽけっとしてたら

また 瞳のことが 頭に浮かんで

『どんな理由が あっても

連絡の一つもないなんて

きっと俺が 頼りないからだと思えてきて

自分がマックスで嫌いになってきたんだ。』

 

長々と独り言を 振り返らず自分の世界に浸ってしまったまま

伝わるはずの無い愛華には悪いが 誰にも言えない心の内をさらけて

俺は整えた。

愛華の方に視線を戻すと お茶菓子を食べるの止め、俺の背中を見つめていた。

「ごめんなさい  私

時々 自分の無神経がいやになるの 」と赤い目をして喋った?。

「?」

「ねっ 私 変な子でしょ

耳悪いのに、洋子のおっかけやってんのは

歌ってる時の洋子の表情が 何とも言えず好きなの

そう言いながら手で髪を掬い上げて、耳ともを指差した。

耳の中にはクリーム色の小さな補聴器が埋め込まれていた。


「マジかょ〜!

聞こえてたんだ。

頭くるなぁ

 

愛華ー それって卑怯じゃねっ




ほんとは洋子に頼まれて 『 今 誰かと付き合っていないか』 俺のこと探りに来んじゃないのか?

お前のような女が 突然の有り得ない訪問に

俺が、どうしていいかわからず動揺して本音を漏らすとでも思ったんじゃねの??」

 

「何よ それ 酷いいいがかりね

武君 瞳さんのこと考えすぎて頭どうかしたの?

それに 何で洋子が瞳さんと武君のことそんなに気にすると思うの??」

愛華は悔しくて唇をかみ締め、玄関まで後ずさりして、戸を開けばなしにしたまま逃げていった。

俺は夜風が吹き込む玄関で 頭を抱えて蹲った。

 

3章 真夏の出来事 第1話真由美に接近

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