vol 330:弥勒






阿弥陀は弥勒の状態が心配で仕方なかった。

弥勒は兵として聖戦に参加しているが、

実際は聖戦という出来事を学んでいるのだ。

知識と実践を同時で学ぶという言わば荒業とも言える。

あの世で生まれた者は、

あの世で勉強し、正しきモノばかり見、

悪しきモノは教わるのみ。

そして理屈ばかりが知恵として育まれる。

言わばマニュアルをインプットする。

マニュアルは所詮マニュアルであって、

実際の行動となった時は、

全てケースバイケースで状況判断が多いに必要とされる。

弥勒は慈悲の世界の中に居て、

命の尊さ、

生きる尊さ、

欲の虚しさ、

それらを教わってきた。

だが、今自分は武器を持ち戦っている。

相手の体に剣を刺し、

切り裂いて命を奪う事はなくても、

奪うと同じ行動をしている。

ただ、守ると言う言葉だけを心に置き、

ただ、無心を貫き。

「ぬぉおおおおおおおお!。」

いつしか、自分も大声を出して敵に向かって行く。

本心はこんな事は間違っている、

敵も無理にやらされていたり、

恐怖の中にいるんだ。

自分と同じ気持ちの奴だっている。

こんな事、間違ってる。

弥勒の心の片隅にある、その気持ち。

だが、その気持ちすら押し殺してしまう程、

戦場には慈悲は存在しなかった。

(弥勒!危ない!。)

「っ?!。」

ミカエルの声にミカエルの方に顔を向けた。

その瞬間、

弥勒の体に大きなエネルギーの塊がめり込んだ。

「グハッ!!。」

(弥勒!!!!。)

「・・・っ!。」

弥勒の体は跳ね上がり水平に横になって、

弥勒の目にはサタンが自分に片手を伸ばしている光景が見えた。

空の彼方からエネルギーの玉に押されてどんどん落ちて行く。

何も考えられない。

視界に見えるのはすっかり夜になった星の綺麗な夜空。

ドォオオオオオン!

地上の人間はどこかに雷が落ちたと思った。

弥勒が落ちた場所は、

カンや大樹と住むマンションの、

自分の肉体の中だった。









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