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vol 325:哀れな仏
「始まったか。」
異様な空の音と空気の乱れ。
(シロ、あっち。)
荼枳尼について行く。
もうどれだけ死骸を土に還したのだろう。
野生の生き物は、その肉を食らって生きている生き物もいる為、
骨だけになった動物を埋めるか、
荼枳尼が肉をはぎ取り肉は他の生き物の為に置いておき、
骨を埋める。
荼枳尼は時折、複雑な表情をする時がある。
眉を寄せて顔を顰め。
今また、その顔をしたから我は問いかけた。
「 荼枳尼よ、何かあるのか?。」
(・・・人ノ祈リ。)
「人の祈り?。」
荼枳尼は鹿の肉をはぎ取りながら話始めた。
(ソウ。我ハ鬼女ト仏ノ顔ガアル。)
普段は人の女の姿をしているが、
肉を剥ぐ時は青い肌の鬼女の姿になり、
剣を器用に使って肉を剥いでいく。
(仏ノ我ヘノ祈リハ無イ。
イツモ・・・イツモ欲ヤ憎シミヘノ祈リ。
男ガ欲シイ、地位ヲモノニシタイ。)
「お前は、その祈りが嫌なのか?。」
荼枳尼は手を止めた。
(ワカラナイ・・・。
我ノ為ニ、生贄ヲ捧ゲル。
デモ我ハ今、我ノ食ウ物ヲ埋メテイル。)
「 荼枳尼よ、お前は今その鹿の肉を食らいたいと思うか?。」
荼枳尼は自分の膝の鹿を見つめた。
(不思議ダ。沢山食ッタ。
コレ我ノ食ウモノ。
ダガ・・・食イタイト思ワナイ。)
我は少しホッとした。
荼枳尼は本当の仏になりかけている。
(シロ。)
「なんだ。」
(今、人間ガ捧ゲタ生贄ハ、赤子。)
「赤子?。」
(人ノ赤子。)
荼枳尼は我を見た。
我は目を見開き、
「童か!!!その童は生きているのか?!!!。」
荼枳尼は顔を左右に振り死体だと言う。
(捧ゲタ者ノ子デハナイ。)
「祈りは?。」
(人ヲオトシメタイ。)
空では大きな音が鳴り響く。
我は思う。
人間は未だ欲にまみれ、
自分達の立場が解っていない。
平気で自分の欲の為に他人の子の命を捧げるのだ。
その人間の為に、空では人には見えぬ者達が戦っているというのに。
(シロヨ・・・我ハ、。)
「 荼枳尼、お前の心に従え。
叶えても、人の心にお前への感謝は一時のもの。
忘れさられるのが我ら。
叶わぬ時、怨まれても、
それもまた我らなのだ。」
(我ハ・・・感謝サレタ事ナドナイ。
恐レラレルダケ。)
荼枳尼が哀れに思えた。
我は荼枳尼を抱きしめた。
母様が良く我にしてくれたように。
「辛いであろう。」
荼枳尼は初めてされた抱擁に戸惑いを見せるも、
そっと我の背中に手を触れさせ涙を見せた。
カンよ・・・、
地球を救った後は、
我らの世も救わなければならぬ。
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