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vol 318:ひとりでも多くの者を
ここ数日、俺と大樹は赤い稲妻が落ちる夢ばかり見て、
ろくに寝られてない日が続いてた。
今日は仕事が休みや。
ゆっくり寝るつもりが、ふと朝、目が覚めた。
瞼を持ち上げると、そこには知らん爺さんが居る。
「・・・。」
俺は寝ぼけ眼でジッと爺さんを見てた。
横に寝てる大樹を見たら、
大樹も起きてて目が合う。
「なんや・・・起きてたん?。」
「うん・・・あの人って知り合い?。」
「いいや・・・。」
大樹も爺さんに気付いてた。
体を起して背伸びをし、寝ぐせだらけの頭を掻いて、
「なんか用ですか?。」
問いかけた。
(そなたらの事は良く知っている。
そなたらは、戦死者の供養をしたな?。)
「戦死者の供養?。」
大樹も起き上がり俺の膝を叩いて、
「去年のお盆の俺の祖父の件じゃない?。」
「あぁ、マツキチのか。」
「あの、それが何か?。」
(戦死者と言うのは、まだ数知れず。
戦死者の国に行っている者も数知れず。
今、あの世は戦に向け準備をしている。)
「戦?戦て・・・なんやねん。」
俺達はあまり今のあの世の動きを聞かされてない。
爺さんの説明によると、
あの世では天界も黄泉の国も、
宇宙からの侵略を食い止める事で、
いわゆる聖戦の準備をしてるらしい。
「マジでか。準備て、まだ準備中?。」
(もう直に時は来る。)
「大樹、俺らも手伝いに行かな。」
「そうだね。あの世の様子を見に行った方がいいよね。」
(そなたらには役目がある。
この戦、黄泉の国の者は戦など知識もない。
しかし、その中で戦国の世の者たちは数少ない。
そこに戦死者の国の者も参加している。)
「せ、戦死者が?。
そんな・・・戦死者の方々はもう戦などしたくはないはずです。
それに彼らにまた戦なんて2度とさせては、。」
「戦死者の人を無理矢理・・・なんてのはないやろ。
な?。」
俺は大樹に言いながら爺さんに視線を向けた。
(彼らは戦に負け、なんの目的もなくなり、
負けた時のままでおった。
だが、この戦は死はない。
そして、地球を守る為、攻撃を食い止める為。
負けは存在しない。
彼らは、目的を与えられ、
自分達を歴史の一部でしか捉えていない人間の為に、
今度は自ら戦に挑もうとしている。)
「自ら・・・。
生前の戦争は、強制だったし、
気持ちも全然違うって事か。」
大樹は爺さんの説明に納得したみたいや。
「ほんで、俺らに役目ってなんや。」
(数が足りぬ。
数が足りぬのだ。
そなたらの戦死者の国の者への供養は、
他のまだ、此処に彷徨う戦死者達の噂にもなっている。
戦死者の国にも行けず、
行き方も解らずに、防空壕の中でずっと待っている者達がいる。)
「その防空壕の戦死者を俺らが供養すればええって意味か。
せやけど、そんなん上手くいかんやろ。」
「すんなり話を聞ける状態でもないよ。」
(噂を聞いて皆羨ましいと思っている。
自分達も、自分達の存在を知り、
慈しむ心を待っている者を待っている。)
俺も大樹も黙りこんだ。
わかった!って直ぐに言えんかった。
(近くにある場所だ。
我々、あの世の者ではなかなか事は進まない。
皆は生きた人間からの心を待っているからだ。
そなたらが戦に加わったとしても、
そなたらには此処での役目もある。)
「カン・・・。」
「ちょっと考えさせてくれへんかな。
とりあえず、近くにある防空壕で霊がいそうな場所を、
調べてみよ。」
爺さんは俺の提案に頷き、
大樹も頷いた。
なんやろ、戦死者だけで終わる気がせん。
大樹はさっそくパソコンに向かい調べはじめた。
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