vol 317:戦死者






黄泉の国へと向かうと、

明王があちこちの国に居て、

俺の向かった大日如来の国では軍荼利明王が、

霊達に指示をしていた。

「軍荼利明王、御無沙汰しています。」

(おぉ!弥勒ではないか。)

深く頭を下げて声をかける。

(なんとも、凛々しい格好をしておるな。
心強い。)

「格好だけですよ。」

(うむ。だが、その格好だけでも、
弱気な者はお前を見て勇気づけられる。)

天界の天使や神使い達は、

悪魔との戦いに備え常に訓練されている。

だが、黄泉の国では地獄以外は平凡そのものの日々。

そんな中に居た霊達が、

この戦に臨む。

「軍荼利明王、黄泉の国の者は大丈夫なのでしょうか。
極楽と言う名の場所で、
普通に過ごして来た者達に戦など・・・。」

我々の目の前には、霊達が槍を持ち、

刀を持ち。

(死ぬ事はないのだ。でも、恐怖心は拭えぬ。
弥勒、ついて来い。)

軍荼利明王に連れて来られた場所は驚くしかなかった。

そこには、かつてアジアで有名な武将達に、

侍、剣士、そして・・・。

「こ、この方達は・・・戦死者じゃないか!。」

そう、戦争で亡くなった人たち。

「そんな・・・彼らはいまだに戦争で苦しみから解き放たれていない!
そんな彼らに、また戦に出ろと言うんですか!。」

深い傷を癒える事なく、死んでも当時のままの心境を抱え、

カンの説法で少しは心晴れた者もいるだろうが、

大きな変化はないはず。

(この者達は、国を守る為に死んだ者。
死んで何もやる事がなくなり、
悲惨な光景や心境のまま長い時を過ごしていた。
地球を国を守る為に力を借りたいと言うと、
皆、快く引き受けてくれたのだ。)

快く。

この世界の神々は強制と言う事は絶対にしない。

しかし・・・。

「しかし、もう2度と戦争などしたくないはず。」

(戦争などはしたくはない。
だが、彼らは負けて死んだ者達。
悔いが残っているからこそ、今の場を抜け出せないのだ。
この戦には死はなく、
人間は多くの者が犠牲となるだろう。
でも我々は負ける事はない。
クイトメルというのが目的。
ただ殺すと言う戦争とは違うのだ。
彼らの指揮には大威徳明王が指揮している。)

大威徳明王とは、

6つの顔は六道、

(地獄界、餓鬼界、畜生界、修羅界、人間界、天上界)を、

くまなく見渡す役目を表現したもので、

6つの腕は矛や長剣等の武器を把持して法を守護し、

6本の足は六波羅蜜、

(布施、自戒、忍辱、精進、禅定、智慧)を、

怠らず歩み続ける決意を表していると言われる、

悪鬼を倒す神の一人。

その神の元に居る戦死者の顔は、

生き生きとしているのは事実だ。






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