vol 314:読経





経を始める事になった俺は、

釈迦如来が、阿弥陀の世界を解りやすく説き、

弟子に教えている経、

仏説阿弥陀経という経から始めた。

経なんか、葬式や法事で聴くくらいで、

実際には全然読み方なんか解らん。

今の世は便利で、

ネットで検索したら経のCDまで売ってる。

俺はCDを購入し、

坊さんと共に、阿弥陀経を読経。

難しい言葉ばっかで、

ひらがなが横に書かれてても、

なかなかついていけん。

それでも毎日読んだ。

声を出して読む。

中身は極楽がどんな世界か。

阿弥陀如来の教えなんかが、

このひたすら漢字の中に説明されてるんや。

経を読んで、煩悩を捨てる。

せやけど、実際は煩悩は確かに考えられんようになるけど、

ずーーーっと、

頭の中に経が流れる。

経を全部覚えてるわけでもなく、

断片的に単語が浮かぶ感じ。

それがだんだん、無になって、

そこで自分が出てくる。






俺はなんなんやろ。






この言葉のみが溢れ出て、

答えのない、この問いかけに気持ちは揺さぶられ始め。

「でも、阿弥陀如来は煩悩を捨てる為に読経するように言ったんだよね?。」

「うん。」

晩飯を食いながら大樹と会話する。

「それなのに、逆に考えさせられてるの?。」

「そうやねん。
まー、でも、前みたいにいろんな事を考えるってのはなくなった。
ひたすら、1個の自分がなんなんかってのだけ。」

「それって・・・究極の問いかけだね。」

「せやろ?
今までの悩んだり、無駄に考えたりしてた事が、
どれだけショボイかって思うわ。
自分がなんなんか、なんか解るはずないやん。」

大樹は箸を止めて、

「でも・・・そのひとつの事を考えるって、
とても辛い事だよ。」

大樹は悲しそうな顔をした。

なんでそんな顔するねんって聞くと、

大樹は、自分は俺を守りきれるんかだけを、

日々考えるらしい。

俺がそれを聞いたら、

何言うとんねんってなるけど、

大樹にとっては、一番答えが出ない大きな辛い悩み。

人は不思議なもんで、

日常が忙しいと、忙しさで、

本来の自分の悩みを考えてる間がない。

せやけど、時間が出来ると、

それこそ答えが出ん事で悩みだす。

自分の存在、

自分の意味、

自分の行動、

自分の考え、

それが何が正しいのか、

それが出来てるんか。

「阿弥陀如来はカンにどうさせようとしてるんだろ。」

「はは、そんなん俺が知りたいわ。
でも、もっともっと知らなアカンことがあって、
自分がぶれる事なく、
何事にも対処できるようにならなアカンって事やろな。」

理屈は解ってる。

何を言いたいんかとか、

経を読む事で、みんながやってきた事を、

自分がまるで釈迦如来に教わってるように、

言葉で一体化できるって言う事も。

「なぁ、大樹。」

「ん?。」

「シロと弥勒の修行、見に行ってみーひん?。」

「二人の修行を?でもそれは邪魔にならないの?。」

「邪魔にはならんやろ。
二人がどんだけ過酷か俺らも知れるし、
アイツらかて、不安なはずや。
解りあえるって、めっちゃ癒されるやん。」

「・・・そうだね。うん。行ってみようか。」

何気に思って出した提案を大樹は納得し、

俺と大樹はまず、シロの元に行くことにした。








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