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vol 313:煩悩と経
冥王星の神の後、阿弥陀の国に行った。
(カン、何か悩みがあるのではないか?。)
庭には鹿が居て、俺はその鹿と遊ぶ。
「悩み?そんなん腐るほどある。」
阿弥陀も庭に来ると、鹿と遊ぶ俺を見ながら、
(お前はやるべき事を必死になってやっている。
だが、お前の心は悲しみでいっぱいだ。)
俺に頭を擦りよせる鹿の頭を撫で、
阿弥陀の言葉に俺は、。
「・・・自分がやってる事、
よう解らん。
正しいとか間違いとかやなくて、
コレでえぇんかどうかや。」
(お前が迷えば、お前について行っている者達も、
迷ってしまう。
答えが出ぬ事を悩む事を、
煩悩と言うのだ。)
俺は手のひらを握りしめ、地面に握りこぶしをつくった。
結果など直ぐに求めていないはずなのに、
何も変わらない現状が歯がゆくて、
リヒトの件にしても、
命を落としたアーダムにしても、
これまで、犠牲になった人の顔が浮かぶ。
「どれだけの人が犠牲にならなアカンねん。
黙って何もせんと見とけばえぇねん。
先が見えるわけやない。
せやから、何も出来へん。」
苛立ちが溢れると鹿は逃げるように茂みに走って行った。
(お前には解っていないだけです。
たった今も、大きな事をお前は成し遂げました。)
「大きな事?。」
(神々からも恐れられる冥王星の神に、
地球を守る許可をいただいた。
これは、私にも、大日如来にも、
そなたの父にも出来なかった事。
それを、お前は成し遂げたのです。
カンよ。目に見える事だけが重要ではない。
目に見えぬ事は、
目に見えるようになるまでの大事な過程の一部。
そこが何よりも大事なのです。
目に見える前に抑えれば、
大惨事にはなりません。
犠牲者を想うならば、
今どれほど、犠牲者も食い止められているか。
ある意味、生き残る者の方が、
辛く過酷な生存となるでしょう。)
「それって、死んだ方がマシって事を言いたいんか。」
阿弥陀は頷いた。
(大半が滅び、復興していく辛さ。
飢えの中、生き延びる事がどれ程辛い事か。
あの世では、それがない。)
「それやったら・・・自分は何してんねや・・・。」
俺がやっている事は、
生き延びる者にとっては残酷な仕打ちになるん?
(世は救っても繰り返すでしょう。
でも、また1から造り直す事で、
新たに生まれるものもある。
我々はそこを重視しています。)
阿弥陀は言う。
慈悲や正義感だけでは、全ては変わらない。
苦悩があって、それを乗り越え、
全ての事を理解し感謝を持たねば、
命ある者は皆、欲に溺れ、
また滅びの道へと進む。
(経を学びなさい。
全ての経本を読むのです。)
「経?。」
(経は我々の悟りの言葉。
お前の煩悩を沈める作用がある。
お前も、弥勒も皆、間違った無意味な行動など、
ひとつもしていない。
そう言っても、お前は納得しないであろう?
経を勉強するのです。)
納得出来ないまま、
肉体へと戻った俺は、経本を探して購入。
阿弥陀に言われたんやから、
まず阿弥陀の経本から。
毎日毎日、読経をする。
そのうち、仕事中であろうと、
どんな時も頭の中に経が浮かぶ。
確かになんも考えられんようになるけど、
頭ん中、経だらけで落ち着きもせんやん!。
寝る時にすら、経が・・・。
「もぉぉぉぉぉぉぉお!!!!!。」
俺は坊主にでもなるんかと、
おかしな妄想にかられながら、
今は経を勉強している。
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