vol 311:天界での修行






「小角、申し訳ない。」

小角の元に戻った俺は途中で修業を怠った事を謝った。

(何故、謝るか。休憩と言っていた事。
それに、休憩中の出来事もまた、そなたの修行の一環。)

「休憩中の事が修行の一環?。」

(そうだ。そこで学ぶものもある。
無駄や何も無い事は有り得ないものだ。
息を吸う、寝る、食う、歩く、走る、
何にしても意味はある。)

いつも思う。

神や仏と話をすると、

俺にはまだ理解出来ていない事がたくさんある。

いろいろと初めて気付かされる事が多い。

今まであの世で勉強して来た事は、

基本でしかなく、

その基本の応用も行動となれば、

難しいものだと改めて感じた。

山を再び登り始め、山頂に着くと、そこに主が立っていた。

「さっきはどうも・・・。
なぜ、ココに。」

主に頭を下げ、主が居るのが不可思議なこの場所に、

主が居る理由を聞こうとした。

(弥勒よ。此処での修行は終わりだ。
天界に行き、天界の者と共に武術を学ぶのだ。)

小角が俺に言う。

「天界で武術?なぜ天界で。
武術なら仏教でも教わる場所はあるはず。」

その俺の質問には誰も答えず、

言われた事は絶対だ。

俺は主に連れられて天界に行った。

連れられた場所では、

天使や神使い達が弓や剣を造っている。

(聖戦に対して全ての指揮をしているのはミカエル。)

主が指先を一人の男に向けた。

ミカエルは剣を磨く男の横で何かを教えている。

直ぐに俺たちに気付くと、男の肩を叩いてから、

こっちに歩いて来た。

(主。)

主に膝まづき、

(ミカエルよ。彼は黄泉の国の弥勒と申す者。
物を造るところから使い方までお前が教えてやってください。)

(はい。)

ミカエルは立ち上がり、俺を見た。

澄んだ緑の目。

俺はミカエルに膝まづいて地面に額をつけ、

弟子になる挨拶をする。

ミカエルはしゃがんで俺の肩に触れ、

(おいおい。何の真似だ。)

「我々の国では、教えを請う時に、
師匠と弟子の関係が生まれ、
師匠にはこうやって誓いをたてるんです。」

ミカエルは俺の腕を掴んで立たせ、

(一生ついて来る気じゃないんだろ。
そこまでの儀式はいらぬ。)

「いや、でも、武術に関しては、
教わる以上、一生教えについていく。」

(お前は、黄泉の国で如来を約束されている者だと聞いた。
所詮、天界とは無縁の男だ。)

「そんな事は関係ない。
黄泉の国で如来になろうが、
俺は心は師匠に基づいている。」

ミカエルは笑みを浮かべ、

(さすが天の子の仲間だ。
あの子も同じ事を言った事がある。)

「カンが?。」

(あぁ。あの子は俺が心から認めた、
たった一人の弟子だ。
黄泉の国に行き来しているのを知った時に、
俺はあの子を叱った。)







(天の子よ!お前は天界の神の御子息!
何故、神が許さない黄泉の国に行くんだ!。)

(ミカエル、なんで?
なんで行ったらアカンの?
黄泉の国はすんげーーーーー色がいっぱい!
綺麗で、綺麗なんは国だけやない。
そこにおる仏も神々も綺麗で良い匂いで。
話も大好きや。)

(しかし、あの国は人の国。
認められた神ではない。
お前は見た目で騙されてるんだ。)

(違う!違う違う違う!
蛇の国も、阿弥陀もみんないろんな事教えてくれた。
アタシが天界の子やって知ってても、
そんなん関係ないって!。)

(どうであれ、黄泉の国に教えを請う事はいけない。)

(弟子と一緒に修行してる。)

(なっ?!。)

(天界の神であろうが、
黄泉の国の弟子になろうが、
自分は自分や。
それに、師匠がいっぱいおるって素晴らしい事や。)








俺は話を聞いて目が点になった。

ミカエルは笑いながら、

(天界は遅れてると言った。
黄泉の国ほどの、想いやりを教える国はないと。
天界は規律や争いの準備などを教えるだけで、
愛と言っても、その愛の種類や、
相手をどう想いやって、
どう、見極めるか、
何故見極めるかの意味を教えないってな。
俺は、まだ子どものあの子に教えられた。)

「カンらしいな。
アイツ、そんな子どもの頃から良く、
そんな考えになれるもんだ。」

(まったくだよ。
それ故に、一番キツイ役目を背負った。)

「・・・。」

(弥勒、此処で教えるのは、
物の生まれ、物を生かす、そして生死だ。)

俺はミカエルの言葉に頷いた。













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