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vol 310:変えられない想い
「な、何?。」
リヒトはアーダムの死の言葉を理解出来ない様で。
(リヒト・・・私はもう死んだのだ。)
アーダムはリヒトの電話の後、
直ぐに殺されていた。
「ひ、火あぶりに?。」
アーダムは笑んで顔を左右に振り、
(そこまで出来る勇気は、あのお方にはなかった。
銃で撃たれてから布に包まれて川へと。)
リヒトは崩れ落ちて座り込み、
アーダムは覆い被さるように再び抱きしめ、
(リヒト、これで良かったのだ。
私の運命を私は受け入れる。
それに、我々の信仰は間違っていた事に気づけた。
本当ならば地獄行き。
だが神は、どう間違えていようとも、
純粋に神を信じていた事に変わりはないと。
天界でまた一から修行しろとおっしゃった。)
「ならば・・・ならば私も!。」
(それはならない。
お前にはお前の死ぬ時期が来る。
人はいつか死ぬものだ。
それまでは目の前に来る事をやり遂げながら、
自分の罪を悔い改め、
生きる。)
リヒトは主に顔を向け問いかけた。
「主よ!私はこれから何をすれば良いのでしょう!
間違った教えを捨てて、
命を狙われ逃げて生活をすれば良いのでしょうか!。」
主はリヒトに言う。
(お前はカンと出会い、
どんな形であろうと彼に関わった意味のある人間。
彼は今後も命を人間から狙われます。
彼を守りなさい。
そしていろいろな事を学ぶのです。)
カンはそこで声を上げた。
「ちょ、学って・・・自分達のやってる事は危険すぎる。
巻き込みたない!。」
(カンよ。これもリヒトの運命。
彼は必ずお前を救う時が来る。)
カンも俺も弥勒も、この時既に気付いていた。
リヒトが犠牲になる事を。
「カンさん。どうか私を今まで通り側に置いてください。
私の真の役目が出来たのです。
それを拒まないでください。」
ヒリトはカンに向いて額を床につけた。
「お前・・・意味わかっとるんか?!。」
「解っています。
間違った事で命を懸けるよりも、
真実に命を懸けられるのであれば、
私は本望。」
アーダムもリヒトの横に膝まずいて、
カンに頭を下げた。
肉体に戻り、弥勒はそのまま小角の修行へと戻り、
リヒトは居間のコタツで眠り、
俺とカンは寝室で寝ている。
「大樹・・・起きとる?。」
「ん?うん。眠れないよね。」
人が自分の為にいつか命を落とすと解っているのに、
普通に寝られるわけがない。
そんなカンの毎度の状況に、
俺も寝られるわけがない。
「俺がな?。」
「うん。」
「あの時、主に歯向かって絶対嫌や言うて、
リヒトを突き放したって、
きっと、リヒトの真面目な信仰心は、
隠れてでも、俺につきまとって、。」
俺はカンを抱きしめ髪を優しく撫でる。
「俺たちは神の手の中にいるから。
でもきっと、悲しい事だとしても、
それには大きな意味もあるし、
リヒト君自体はとても有意義で、
彼にとっては価値のある事なんだと思う。
でもカン?お前を守るのは俺だ。」
カンは強く抱きついて眉を下げ、
「お前が死ぬんなんか嫌や!
事故とかそんなんでも嫌やのに、
俺で死ぬんなんか嫌や!。」
「ハハハ。大丈夫。
俺はカンが死ねばカンと死ぬし、
カンが生きているなら俺も生きてる。
神がどう定めても、
そこは俺は絶対に変えないから。」
もう何度もカンを失うかと思って来た。
でも、まだ失ってないから。
俺は刺されようが撃たれようが、
カンが生きている限り、
絶対に死ぬわけにはいかない。
カンを一人にはしない。
この想い、解ってくれますよね?
天の神よ。
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