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vol 308:雛人形
(シロ、また骸が出た。)
「うむ。」
荼枳尼の感じ取った死んだ者の場所へと向かう。
場所は川。
(おかしいな・・・。)
「どうした?。」
(ここで感じたが・・・何もない。)
荼枳尼は辺りを見渡しながら歩いて死体を探す。
我は、ふと川の水辺を覗きこんだ。
水辺に浮かぶ自分の容姿は、
泥だらけで、白い着物までも汚れて。
「・・・考えられんな。」
今までの我では、こんな姿は考えられない。
荼枳尼を見ると、荼枳尼も泥だらけ。
相手の容姿さえ気付かないほど、我らは夢中だったのだ。
(シロ・・・。)
「見つかったのか?。」
荼枳尼に近づくと、しゃがむ荼枳尼の足元には、
人形が落ちていた。
「人形ではないか。」
(骸。)
荼枳尼は人形を指差して、これが死体だと言う。
人形は昔の日本の女の服装をし、
顔の一部は欠けている。
「これは骸ではない。ただの人形(ヒトガタ)だ。」
(だが、確かにコレは骸。)
荼枳尼は人形を死体だと言いきった。
「これは人形だ。次を探す。」
我が立ち去ろうとしても荼枳尼は動かない。
「荼枳尼・・・我らには時間がない。」
(・・・コレ、骨だ。)
「骨?。」
再び戻って人形を手に取った。
全体を見ても人形。
「どこが骨だと言うのだ・・・。」
(・・・人の骨。)
「ハァ・・・いい加減にしてくれ。」
我が人形を地面の石の上に置くと荼枳尼は人形を掴み、
(骨!。)
我に人形を差し出す。
今まで荼枳尼の死体を探す力が外れた事はない。
荼枳尼も納得する気配もない為、
仕方なく我と荼枳尼は蛇の国の美輪山に行くことにした。
荼枳尼は人形を持ったまま、
蛇の国を物珍しそうに見、かなり警戒しながら我についてくる。
「母様・・・。」
(白蛇神。おかえりなさい。)
「はい。」
社の中の大神に頭を下げて床に座る。
荼枳尼は我の少し後ろに真似て腰かけた。
(ふふ、泥だらけで頑張っているのですね。)
我の汚れた容姿を見て、やさしく笑う大神に、
我は少し気恥ずかしくなり、
すぐに話題を変えようと荼枳尼に手を出して人形を受け取る。
「母様、これを。」
床に人形を置く。
(まぁ、それは雛人形ではありませんか。)
「雛人形?。」
(そう。昔の日本の人形です。)
「この人形を荼枳尼が骨だと申すのです。」
大神が人形に近づき手に取った。
(これは骨。人の骨で作られた雛人形。)
「骨で作られた人形?。」
(・・・何故、骨で人形をつくる!。)
荼枳尼が声をあげた。
(何故でしょうか。でも、大事な想いが込められている。
作った人間の想いは、孫を想い作る老人の姿。)
「そうですか。川の側で見つけました。」
(シロよ。この骨もお前の役目同様に土に還しておやりなさい。)
「はい。」
(荼枳尼天。いつもシロの手伝いご苦労様です。)
大神の言葉に荼枳尼は少し頬を赤らめた。
褒められる事が無い荼枳尼にとっては、
嬉しく、また、恥ずかしいものなのだ。
我と荼枳尼は人形を持って川に近い山へと向かう。
(シロ、あの白蛇はお前の母か?。)
「うむ。蛇の国の主だ。」
(そうか・・・良い人だな!。)
山に着くと我は土を深く掘りそこに人形を埋めた。
この人形が骨であれば、
大地の力になる。
そして、人の想いへの供養にもなるだろう。
(シロ、また骸が出た。)
「あぁ。行こう。」
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