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vol 306:現実
正直、俺を殺す為に日本に来たとか、
俺を殺す事で殺人犯になる人間がおるとか。
たった一部の人間であろうと、
そこは俺自身、自分の存在が悪い意味で大きなものやと感じた。
リヒトが目を覚ました時、
また俺に襲いかかってくるんやろか。
ベランダに出て夜景に広がる景色を見ながら煙草を吸う。
「カン、気付いたよ。」
大樹の声に俺は煙草を消して部屋に入った。
リヒトは変に落ち着いて座ってる。
「大丈夫か?。」
俺の声にリヒトは返事もなく、
ただ、俯いて目を閉じている。
弥勒はリヒトを見ようとせず、
ただTVを見てる。
「なぁ、リヒト君。
お前が信じる者は俺を殺して何か得するんか?。」
この質問から何分経ったんやろか。
やっと重い口をリヒトが開いた。
「お前は、世を乱す存在。
皆の信仰を乱す悪魔。」
「おい、。」
「弥勒。」
弥勒が振り向いてリヒトに何か言おうとしたけど、
俺がそれを止めさせた。
「そんで、なんで計画を早まったん?
機会を待ってたはずや。
入念な計画やったんやろ?
それやのに、あんな無計画っぽいやり方になんでなってん。」
「何故、お前にそれを言わなければならない。」
「そうやな。」
俺はテーブルに置かれたリヒトのナイフを取り、
リヒトの膝の上に置いた。
「そんなにお前が苦しむ存在なんやったら、
殺せ。」
「?!。」
大樹や弥勒、そしてリヒトまでも俺に驚いた。
「何言ってんだよ!カン!。」
「えぇんや。俺がここでコイツに刺されて死ぬんやったら、
俺はそこまでの存在や。」
リヒトは俺に顔を顰め、
「・・・神のご意思を試すのか。」
「いいや?試すんやない。
生かすも殺すも神の意図の中。」
俺は自分の心臓を指差しリヒトにココだと示す。
「・・・。」
リヒトはナイフを見てはゆっくりと握り、
「お前は・・・悪魔!。」
リヒトが勢い良くナイフを俺に向けて、
大樹や弥勒は目を見開いて座ってた膝を立てて立ち上がろうとする。
「っ?!。」
俺はリヒトが情に流されないように目を伏せる。
リヒトは俺の胸に歯先が当たった所で固まった。
両手でナイフを掴み直し、
体を震わせ額に汗ばむほどに力を入れているのが解る。
でも、胸に当たった歯先は一向に進まない。
大樹がリヒトの体を横から押して俺を抱きしめた。
弥勒は俺と大樹を横から抱きしめる。
押されたリヒトは尻を着き、
両手を後ろ手に床に着いて息を乱した。
『ハァ、ハァ・・・何がおこった。』
英語で呟くリヒトが居て、
俺は大樹と弥勒の腕の中。
震える大樹に、また申し訳ない気持ちでいっぱいに。
大樹は俺を失う怖さでいっぱいに。
弥勒は、俺の行動も、全ての出来事も神の意図を知っている。
だから、精一杯の抵抗。
『な、んなん・・・だ・・・。』
リヒトが頭を抱えて泣き始める。
これが、神に関わる俺たち人間と神の子と、
役目のある者の現実。
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