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vol 302:意図の中
長椅子に腰かけていると缶コーヒーを腕に抱えて、
大樹が戻って来た。
「あれ?弥勒。どうしてこんな所に。」
俺は言いたい衝動にかられる。
大樹だけにも、危険を知らせたい。
「大樹・・・、。」
リヒトの存在を言おうとした時、
小角は俺の肩に触れた。
触れられた場所からは、重くズキズキした痛みが伝わってくる。
言うなという合図だ。
「・・・。」
「なんだよ、弥勒。なんか変だよ?。」
何も知らずに、俺の態度で心配する大樹。
でも、
「いや、もう行くわ。」
眉を下げて笑み、ゆっくりと腰を上げて立ち上がる。
このまま此処に居ると、全て言ってしまいそうだ。
気がおかしくなりそうだ。
「え!もう?!ご飯一緒に食ってからでも、。」
「そうしたい気持ちは山々だけど、
俺には時間がないし。少しの休憩に顔見に来ただけだ。
カンに会うとまたうるさいから、
このまま行く。」
残念そうな大樹が缶コーヒーを1個手渡してくれ、
「サンキュ。」
なるべくの笑顔を見せて家へと帰った。
「すまない、小角。」
リヒトに警戒させたか。
だが、警戒してもらわないと困る。
彼は、霊関係なしの人間。
恐れを強く持つ弱い人間なのだ。
(その弱い心故、手荒な真似を切羽詰まってしかねない。)
俺の心を読む小角が呟いた。
「俺のせいで神々の意図は崩れてしまったのか。」
(我らの行動も神々の意図の中であろう。
生きている間のこの世では、
いつも神々の意図の中。
手のひらの上だ。」
「小角、シロにも会いたいんだけどいいかな。」
小角は頷いた。
シロも肉体を離れて霊体として動いている。
家に戻りベッドに横になって肉体から離れる。
そしてシロに意識を集中させてシロの元へ。
シロは女と居た。
数匹の狐。
俺らに気付いた狐は、急に鬼の姿に変わり、
俺と小角を四つん這いの姿で睨んで声をあげる。
(ギギギギ・・・。)
その声に振り向いた女は青い肌に変わり、
背中の剣に手を伸ばして睨みつけてくる。
(弥勒・・・。弥勒か!。)
シロは俺に気付くと驚いた顔をして、
心からの笑顔で俺に駆け寄って来た。
(よぉ、シロ!頑張ってるか!。)
(うむ!ソナタ、傷だらけではないか。)
(結構過酷で・・・。お前も土で汚れてるな。)
お互いが、お互いの容姿を見てホッとした。
何故なら、自分だけがキツイ事をしていない事に、
気付かされるからだ。
女の足元は土が掘り返されていて、
その横に人の死骸が。
(腐ってるな・・・。)
(うむ。自ら命を絶った者だと思われる。)
(そうか。あれから、ずっと死体を埋めてるのか?。)
シロは頷いた。
この行いも、体力・精神力・気力がともなう。
だが、シロが弱音を吐きに戻ったり、
その感情強く想えば俺やカンたちに伝わるはず。
それは一切ない。
(よし!俺も少し手伝うよ。
休憩時間だしな。)
俺は死体を埋める穴掘りを少し手伝う事にした。
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