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vol 300:心配の心
「神変大菩薩。」
もう何度、山を登り下っただろう。
気力や体力などが身についてきたのか、
普通に登り下れるようになった。
(弥勒よ、いいぞ。思っていたよりも早い。)
俺は登りながら気になる事を話した。
「カンは・・・カンは大丈夫だと思うか?。」
(・・・何故だ。)
「調べてた。命を狙われてる。」
(調べてた?この修行をしながらか?。)
俺は頷いて見せた。
(精神をかなり使うこの修行の間に・・・。)
俺はそこまで成長していた。
修行の間にも気を飛ばせるくらいにまで。
(命の危険は神々の加護もある故、心配無用。
しかし、敵が人間となればカンの心が・・・。)
人間の為に、人間となり、
自分を捨ててまでも皆の見えぬところで、
必死に戦ってきたカンを、
闇でもなく、その人間が命を狙う。
(だが、あの子の事だ。
それさえも、清い心で理解し受け止め、
その者に哀れみ涙を流すだろう。)
普通で考えれば、カンのそんな心は馬鹿で、
偽善者だと思われる。
でも、その心になるにはどれだけ偉大かを皆知らない。
神々ですら、気性も激しいというのに、
阿弥陀如来のような大慈悲を、
カンは持っている。
「俺は何も出来ないのか。」
(神々が何もしないという事は、
そこになんらかの意図があるはず。
我らの出る時ではない。)
「・・・クソ!。」
俺は歯を食いしばって登る。
(・・・弥勒よ、
頂上に着けば、お前に少し間を与えよう。)
「間?。」
(休憩だ。好きに動けば良い。)
「小角・・・。」
これは小角がカンの元に行ってもいいと言う心遣い。
そして、きっと小角もカンを心配してる証拠。
「神変大菩薩・・・小角、
一緒に行こう。カンの元へ。」
小角は眉を下げて笑み頷いた。
(ただし、カンには何も言わないというのが条件だ。
神々の意図を我らで崩す事は避けねばならぬ。)
「・・・わかった。」
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