|
vol 299:熱意ある中の刺客
それは人。
闇の者でも神でも誰でもない。
人間。
白いフードの付いた服に身を包み、
金色の十字の刺繍が施されている服。
彼らは集まっている。
『カンと言う者は神を侮辱している。』
『我々、人間にとって神は絶対なる方。
このままでは、神への認識が欠如してしまう。』
『神は御一人。そして人とは違う大いなる存在。
我々の計画をここで朽ちてはならない。』
『ミカエル。大天使ミカエルの子よ。
お前がそれを食い止めるのだ。』
『・・・はい。』
(主よ・・・。)
「心を痛ませぬとも良い、ミカエルよ。
お前の子ではないではないか。
人が創り上げた欲でしかないではないか。」
自分の子として、正義の為に、
真実を知らずに神の子を罰しようとしている人の子に、
ミカエルは心を痛めていた。
(カンは大丈夫でしょうか。)
「あの子の事は、我々に任せなさい。
お前は皆の訓練に集中するのです。」
(はい。)
「弟子?!。」
一人の白人の男が俺を訪ねて来た。
俺を見るなり土下座をして頭を床につけて、
俺の弟子になりたいって言う。
「いや・・・弟子って・・・。
俺別に漫才師とか違うし。」
ただの作家兼俳優の芸能人でしかない俺に、
弟子とか有り得んやろ。
「お願いします!日本語も、ベンキョしました!。」
それを見ている大樹は困った顔をして、
「カンの弟子になりたい為に日本に来たんですか?。」
「ハイ!素晴らしい!カンさんは素晴らしいです!。」
俺と大樹は目を合わせて眉を下げた。
「あのな?俺別に素晴らしくもないから。
弟子とかも、。」
「では!お手伝いさせてください!。」
あんまりの熱意さに何言うても聞き入れないと思えた。
「手伝いて・・・。」
「カン、どうするの?。」
「どうするて・・・手伝いとかもないしなぁ。」
なんとか言って帰らせた。
撮影の日になって、現場に行くと昨日の男が居る。
「おはようございます!。」
「おっまえ・・・なんでここにおるねん。」
スタッフの一人が俺の所に来て、
「カンさん、彼、今日から入ったADの新人っすよ。」
「AD?。」
「なんでもするから給料なしで手伝わせてくれって。
外人なのに土下座までして頼み込んで採用。」
「・・・。」
「リヒト君、挨拶はもういいから小道具運んでくれる?。」
「はい!カンさんガンバてください!。」
「え・・・あぁ、うん。」
「彼、熱狂的なファンだね。」
俺の中で少し嬉しさもあった。
少し?
いや、少しどころやない。
俺が言う言葉は、キリスト教の多い外人には批判される事が普通。
その中でも、リヒト君みたいな人がおるやなんて。
「リヒトって、ドイツ語で光って意味だよね。」
「そうなん?アイツ、ドイツ人なんやろか。」
「いい名前だよね。」
大樹も俺同様に嬉しそうに見えた。
コイツの裏の顔なんか知るわけもなく、
俺と大樹は自分達の今やっている事に自信もついた。
理解されず、変人扱いされると覚悟してたのに、
こうやって俺を認め同じ思いの奴が現れたことに。
リヒト君は合間合間に飲み物をくれたり、
俺の好きなチョコをくれたり。
大樹にも人懐っこくして、
「大樹さーん!。」
「カンさん!カンさん!。」
俺と大樹はリヒト君を可愛く感じた。
弥勒やシロ以外の人にここまで慕われたことがなかったから。
でも、たまに気になる時がある。
「大樹・・・ほら、リヒト君見てみ?。」
「あぁ、カンも気付いてた?。」
そう。
ふとした瞬間に、苛立ったような顔をする。
その理由は異国の地に来て、
慣れない人種相手に疲れて無理してるんやないかって思った。
何日もの撮影の合間に変わらず、たまに見せるその表情。
「なぁ、リヒト君。」
「え、あ!カンさん!。」
「なんか悩みでもあるん?。」
「悩み・・・ですか?。」
「うん。なんかあるんやったら俺でえぇなら聞くよ?。」
リヒト君は少し黙った。
「カンさんは、聖書を読みましたか?。」
「聖書?うん。」
「全て?。」
「うん。読んだよ。」
「そうですか。
でも、神は人のような心を持った方だとお思いなのですね。」
「んー。聖書は結局弟子が書いた人間から見た日記やん?
でも、そこにも神がどんだけ人間に対しての感情があるとか、
そういうのもちゃんと書かれてるやろ。」
「カンさん!お腹減ってませんか!
僕、なにか買ってきますね!。」
「え、いや、。」
俺の返事も聞かずにリヒト君は走って行った。
人は完璧には自分の感情を隠しきれない。
いろんな事で彼も悩んで迷ってるんやろか。
私はカンに教えなかった。
あの者がどういう人間なのかも。
信用し心配するカンを見ているのは辛く、
今すぐにでも実態を教えたい衝動にかられる。
しかし、人を見抜くと言う力を備える事はとても大切な事。
私は天界からカンから目を離さず、
ただ、見守る。
我が父も同じ心でカンを見守っていた。
299 
|