vol 293:新年






「あけまして、おめでとう!。」

「おめでとー!。」

年が明け、大樹と二人でささやかな新年の挨拶を交わす。

「弥勒たち、やっぱり戻って来れてないのかな。」

「戻っても俺らも海外やん。」

最近ビールや酒を飲むと頭痛で飲めなくなって、

ジュースで乾杯した。

俺たちは異国のホテルの一室。

治安のまだ良い都市のホテルに泊まってるけど、

初めてSPがついた。

なんかあってからやと遅いかららしい。








『っ。』

『イエス様?。』

空気が重い。

『少し・・・一人になりたい。』

僕は祭司を部屋から出て行かせた。

年が明けてすぐに僕の体にすら及ぼす重み。

窓に近づいて空を見上げる。

夕方だというのに暗い空。

強風で木々が倒れそうなくらいに揺れている。

(サタンヨ・・・。)

『・・・はい。』

(ソロソロ我々モ、地球ニ着ク。)

『そうですか。ですが、まだ少し早いかと思われます。』

(早イ?我ラノチカラ、負ケヌ。)

『解っています。ですが、今動けば、
他の神々からの目が貴方に向いてしまう。
もう暫し我慢された方がいい。』

ここで火星の神が侵略を起こす、

カンたちが間に合わない。

天界も黄泉の国もまだ、戦力が不十分だ。

『他の神々が貴方の行動を批判するものならば、
その神々も地球の神の味方となり、
いくら戦闘の神とはいえ、
犠牲も大きなものとなる。
貴方は他の惑星の神々の味方を、
もう少し増やす必要があるかと。』

(・・・ソウダナ。解ッタ。
オ前ノ言ウ事ハ正シイ。)

『時期が見計らい次第、
ご報告を。』

(ウム。コノママ近クニ配置シテオク。)

『はい。』

交信が終わると、

重い気が少し軽くなり、

外の雲も少し夕焼けが見えるくらいになった。

『はぁ~・・・。』

僕の本来の目的はこれを望んでいたはずなのに、

地球の神の為にまた動いている。

しかも、また嘘で騙して。

嘘は時には必要な事。

だが、嘘のリスクも大きい。

それを踏まえての嘘。

別に人間や地球などは前からの気持ちと同じで、

どうでもいい。

滅ぼうが、壊れようが。

ただ、僕には妹が出来た。

その妹が守るモノを壊したくはないだけ。

壊れて妹が悲しむ心を見たくない。

僕を兄だと言ってくれた。

愛しいカン。

天界の神への愛とはまた違う深い愛。

カン・・・僕が食い止めていられる間に、

先に進んでくれないかい?

僕の嘘がバレてしまうのも、

そろそろ時間の問題な気がするんだ。









「カン?・・・ねぇ、カン。」

「え?。」

「どうしたの?なんかボーっとしちゃって。」

「・・・うん。なんや不安な気持ちになって。」

「・・・どうしたの?。」

「わからん。」

実際は解ってた。

サタンの声が俺の中に聞こえてたからや。

でも、大樹に言わんのは、

新年を祝う時に、

不安にさせたくなくて。

少し時間をおいてから話そう。

きっと、その方がいい。

ひと時の幸せを今は感じよう。








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