vol 289:忘れさられた子どもたち






12月という冬の季節。

サンタクロース。

白い髭を生やした太った老人が、

赤い衣装を身に纏い、トナカイのソリに乗って、

世界中の子どもたちにプレゼントを運ぶ。






【 全ての子どもたちにもサンタを。 】






カンに頼まれて、カンのホームページの中に、

寄付を呼びかけることになった。

それはお金ではなく、要らなくなったオモチャ。

これはある女の子の言葉から始まる。

握手会の時、

会場の隅に幼い女の子と男の子が立っている。

「カン・・・。」

「うん。」

10分の休憩中に俺はカンに気づいているのかと声をかけた。

勿論、カンは気付いている。

握手会が再開し、無事に終わりを見せた。

「お疲れ様でしたー。」

「お疲れ様でした。」

そのまま会場を後にしようとした時、

駐車場の隅にまたあの二人が立っていた。

「・・・どうする?。」

「大樹、気になっとるんやろ。
聞いてみよ。」

カンと俺はその子どもに近づいて声をかけた。

「なんか用か?。」

(・・・。)

「ん?。」

(わたしが見えるの?。)

「見えとるよ。」

そう、子どもは霊。

「お前ら何しとるん?。」

(ねぇ、サンタさんってほんとうにいる?。)

「え?。あぁ、うん。おるよ?。」

(嘘だ!。)

カンの返事に男の子が怒りをむき出しにして叫んだ。

俺はしゃがんで男の子に笑みを向け、

「嘘じゃないよ。ちゃんとサンタクロースはいるよ。」

(だったら!だったらサンタは贔屓する最低な奴だ!。)

男の子の様子から何を言っても聞かないのが解り、

俺はカンに顔を向けて眉を下げた。

「生きてるときにプレゼントもらわれへんかったんか?。」

女の子は顔を左右に振り、

(生きてるときはもらえたの。
でも、いまはもうもらえない。)

「お前ら兄妹か?。」

男の子は表情を曇らせ何も答えないものの、

妹は頷いて見せる。

「そっか。」

(・・・生きてる子どもにしかあげない。
あんな奴、最低だ。)

(おにいちゃん!ちがうよ!
サンタさんにもわたしたちが見えないだけだよ!。
パパやママにも見えないみたいに・・・。)

「君たちのご両親は生きてるのかい?。」

(うん・・・。わたしとおにいちゃんだけ死んだの。
学校の帰りに事故に巻き込まれて死んじゃったの。)

(ママもパパも別れて、僕たちをもう忘れてる。
パパは新しい女との子どもを可愛がって・・・。)

男の子の表情は悲しみへと変わる。

(ママは、一人だけど男の人がコロコロ変わってる。)

現代の象徴なのか、それとも昔からあることなのか。

親が死した子を記憶から辛さ故に消し去ろうとする。

(みんな!。)

男の子が叫ぶと、駐車場のあちこちから、

子どもの霊たちが姿を現した。

人種は様々だ。

その中には、赤ん坊を抱いた子がいて、

カンがその子に近づき、赤ん坊に両手を差し出して、

抱き上げた。

「カン・・・。」

「こんなにもおるんやな。」

「そうだね。」

クリスマス。

それは、みんなが少しでも幸せや希望を持てる日。

でも、それは生きてる人たちだけなんだろうか。

カンは何を考えてるんだろう。

赤ん坊をあやし、しゃがんで警戒している子どもたちに声をかけてる。

「いろんな国の友達出来てえぇなぁ。
みんなで遊んだりしてるん?。」

(・・・。)

(するよ?同じところにみんなでいるから。)

返事しない子、返事する子。

暫くすると子どもたちは次々に消えていった。

(もう行こう。やっぱりこんなの無意味だ。)

(・・・。)

最後に男の子が女の子の手を握り、

女の子は俺たちにとても悲しげな顔をして消える。

「カン、何考えてる?。」

カンは立ち上がり、

「このままほっとけるか。」

カンは優しい心の持ち主。

だからこそ、どこからかカンの噂を聞いて、

この子たちも会いに来て、

満たされない心をさらけ出したんだろう。

「でもね、カン。
あの子たちは死んでしまってる。」

「そうやな。せやけど、
生きてる子どもに夢持たすのに、
死んでる子は夢や希望、幸せになる権利はないんか?
死んでる子も平等や。
行くで、大樹。」

車に乗り込み、家に帰る。

帰ってとった行動は、やっぱりあの世に行くことだった。

阿弥陀如来の元に行き、事情を説明する。

(その子たちの国はここですね。)

阿弥陀如来は庭の池を指で撫で、

水面には子どもたちの国が映し出される。

さっき見た子どもたち。

「阿弥陀様、この国にはこの子たちだけですか?。」

(そう。この国は親から忘れさられた子たちの国。)

俺もカンも衝撃を受けた。

「そんな・・・他の子どもたちと区別されてるんですか?。」

(区別しなければ、ますますこの子たちは、
小さい想いをしなければならなくなります。
それはあってはならない。)

「・・・わかった。」

カンは呟いて姿を消した。

「カン!。」

(大樹よ・・・見なさい。)

阿弥陀如来が池に視線を再び向け、

そこにはカンの姿が。

「・・・阿弥陀様。
カンの優しさはどうにも出来ない事を、
どうにかしようとします。
でも、それは結果、無駄に終わりかねない。
俺は・・・カンが傷つく姿をもう見たくないんです。」

全てを自分以外に捧げようとするカンが好きで、

それは生きている人間にはなかなかその行為が出来ることは少なく、

死んでる者の為に動き、

生きている者には理解されない。

そんなカンへの状況が辛くて堪らない。

(大樹?理解される事だけがはたして良い事なのでしょうか。
他からの理解より、あの子は当人たちの心に、
希望や幸せを感じさせられる事が大事だと、
思っているのではないでしょうか。
まぁ、あの子は無意識で動く子ですが。
後からついてくる事が、結果=理解なのです。)

阿弥陀如来はフッと笑みをこぼした。







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