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vol 287:荼枳尼
岩山の一角にある洞窟。
ひんやりと冷たく、水音が聞こえる。
我は足を踏み入れた。
異様にも感じる雰囲気に心はのみ込まれる。
(ギィィィィィィィ!。)
金切り声に我は振り返った。
後ろには数匹の鬼が四つん這いで我を見ている。
「主らの主人に会いに来た!
敵ではない!。」
(グギギギギギギ・・・。)
今にも襲いかかってきそうな鬼。
「荼枳尼よ!大日如来の使いで参った、
我は蛇の国の白蛇神と申す蛇神!
姿を現せよ!。」
洞窟の中で我の声が響き渡る。
(大日如来トナ?。)
反応があった。
洞窟の奥、うっすらと天井の穴から光が入るその場所から、
ゆっくりと大きな岩から青い肌の首には髑髏を繋げたものを、
ぶら下げた上半裸の女が顔を出した。
(大日如来ノ使イガ何用ジャ・・・。)
我に近づこうとせず、
奥から我をまるで探るかのようにジッと見る荼枳尼に、
生臭い空気を少し吸っては心を乱さず質問に答えた。
「ソナタに力を借りたいのだ。」
(力ヲダト?・・・誰カ殺シタイ奴デモイルノカ。)
「そうではない。今、人の世が危ない状態に陥っておる。
その為に大地を強くし地球を守るのが我の役目。」
荼枳尼はゆっくりと大きな岩から我に少し近づいて、
青い肌の上半裸で髑髏を首から下げた容姿を、
白い肌の黒髪の赤と白の衣を身に纏った女へと姿を変えた。
我を取り囲んでいた鬼は荼枳尼につられるかのように、
鬼の姿から白狐へと姿を変え、
荼枳尼の元に集まりだす。
(死体が欲しいと言うのか?。)
「・・・うむ。
しかし、孤独な生き物の亡骸を大地に、。」
(土へと返し、地に力を与える。)
我は頷いた。
(荼枳尼は、死を感じることが出来る。)
「そうだ。力を借りたい。」
荼枳尼は自分に体を擦り寄せる白狐の頭を撫で、
(蛇のお前が大日如来の使いだと言う証拠を見せよ。)
「証拠?。」
(そう・・・ダ・・・証拠ヲ見セヨ・・・。)
荼枳尼は再び青い肌の上半裸に姿を変え、
白狐も鬼へと姿を変えて我を威嚇し始めた。
「何故信じない。」
(荼枳尼・・・誰モ信ジナイ。
オ前・・・蛇・・・。)
荼枳尼は剣を背中から取り、我にジリジリと詰め寄ってくる。
我は証拠など何も持ってはおらぬ。
どうするべきか。
「・・・殺すなら殺すが良い。
しかし、我はソナタと戦う理由がない事と、
嘘はついてはおらぬ。。」
荼枳尼は我に近づき剣を我の首に触れさせた。
飢えたような眼差しと、
青みがかった長い舌を出し我の頬へと伸ばし、
その舌が我に触れようとした時、
(荼枳尼よ!控えよ!。)
我の後ろから声がした。
荼枳尼は目を見開いて、
脅えたように後ろに下がり、姿を白肌の衣を纏った姿へと変え、
地面に膝まづいた。
我が振り返ると、そこには大日如来が立っていた。
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