|
vol 285:ドキュメンタリー
テレビ番組の依頼があった。
「どうでしょう、カンさんで何か番組を設けたいと思いまして。」
「はぁ。」
「何かカンさんからの案もいただければと。」
俺の案。
伝えること。
「バラエティーとかはやる気ないんすけど、
それでもいいんすか?。」
プロデューサーは顔を顰めた。
「カンさん、バラエティー向きだし、
今までも出ていらしたんで・・・。」
「今のテレビってバラエティーばっかりですやん。
金はかかるけど、一発真面目な番組あってもえぇんかなと。」
「例えば?。」
提案するのに言葉が詰まる。
どう持って行けばえぇんやろ。
「僕がやりたいんは、世界中にいる戦争孤児の現状を、
日本の人にも伝えたい。」
「せ、戦争孤児ですか?。
それは、場所的にも危険だと、。」
「それは覚悟の上で。」
「ドキュメンタリーですよね?
ドキュメンタリーは今はどうでしょう。
視聴者が見たいのは、。」
「笑ってばっかでいいんかなぁ。
笑える番組は俺らが作らんでも現にあるし、
同じのやったって、チャンネルかえられるだけやし。
普通のドキュメントにせんかったらどうやろ?。」
普通のドキュメントにせんかったらの言葉に、
プロデューサーは顔つきが変わった。
「ドラマチックに?
主人公がちゃんとおって、シンプルやねんけど、
ちゃんと物語ってて。」
「カンさん、それ詳しくプランたてて、
書面にしてもらえませんかね。
なんか興味湧きました。」
「え・・・あぁ、はい。
じゃあ、僕が全体図書いて福沢さんに渡します。」
主人公がいる。
主人公は会社員で、同じ毎日をおくっている。
ある日、戦争の夢を見た。
自分の現状では考えられない光景で、
子どもたちは銃を持ち、
銃を持たない子どもは、
崩れた瓦礫に隠れながら死よりも、
爆撃の音に脅えている。
そんないろんな国で戦争にあった子ども達が並んで、
主人公を見つめてる。
一人の子どもが口を開いた。
「伝えて・・・。」
何を伝えるのかも主人公は解らない。
でも、気になってしかたがなく、
ネットで調べていく。
戦争で死んだ子どもの写真はネットでも規制されることなく、
画面に表示される。
その数々の写真の子どもは、
夢に出てきた子どもたちだった。
その夜、また夢を見る。
出てくるのは同じ子どもだった。
伝えてと言った子どもが主人公の横に座っている。
「わたしを見つけてくれたのね。
わたしは死んでしまったけど、
わたしの様に死んではなくて、
生きていて、
わたしの見た光景を心に残したまま、
パパもママも居なくて、
笑うことも教わってない子どもがたくさんいるの。
一人でも多くの子どもたちに夢を教えてあげて。
このままじゃ、みんな大人になったら、
わたしを殺した大人と同じになってしまう。」
悲しげな子どもの顔を起きても忘れることは出来なかった。
主人公は、両親に話、仕事を辞めて世界の戦争孤児の元へ。
プロデューサーは俺の書いた書類を目にする。
「今までにない番組になりそうだ。
でも、資金がかなりかかりそうですね。」
「金の問題については、
僕も出費しようと思ってます。」
「カンさん、かなり力入ってますね。」
「この縁を無駄にはしたくないんで。」
商談がまとまった。
家に帰ると大樹がすぐに出て来て、
「どうだった?!。」
俺は頷いてみせる。
「良かったぁ~。
また、ひとつ俺たちの役目が進んだね。」
正直、いきなり番組の相談持ちかけられて焦ったのと、
こういう、俗に言う綺麗事みたいな話を、
人に真面目に言うのは酒が入ってやんな無理に近い。
普通に聞いたら、
金儲けの考えやと、興味も湧かん話や。
どこまで自分が話に食いつかせるかの勝負で、
普段やったら笑い含めて話すところを、
完全に真面目に話した。
逆にそれがプロデューサーの興味を引き出した。
せやけど、このプロジェクトには、
ドラマ仕立てなだけであって、
あくまでドキュメント。
実際に相手にすんのは、子役でもなく、
嘘も偽りもない、戦争孤児。
それを主人公役の俺は、夢を持たすことが出来るんやろか。
俺は素直にこの件を喜ぶ事が出来んかった。
285 
|