vol 279:一つの方法






納得行くまいが、行かぬであろうが、

反論や、しつこく質問する意欲もなかった。

ただ、我の頭で理解出来る範囲を超えているからだ。

(白蛇神様?。)

山上で我は夜空を見ていた。

我について来たのであろう。

幼い蛇が側にいる。

「月は・・・あの様に近かったか・・・。」

(え?。)

月など、この様にじっくり見ることなどなかった。

しかし、今は答えの解らぬ事で考える時間があり、

ふと、空を見つめていたのだ。

(わたしには、いつもあの場所にあったと思います。
なにか変ですか?。)









「兄様・・・待って・・・。」

我は兄を追って山を登っていた。

小さなまだ蛇だ。

兄様もまだ幼き蛇。

「ハハ、シロがんばれ!。」

「はぁ・・・はぁ・・・もう無理だよ。」

息を切らし、辛くて仕方がなかったのを覚えている。

「ほら、シロもうちょっとだよ!。」

「はぁ・・・はぁ・・・。」

兄様のもうちょっとは長く、

辿り着けないとも感じた。

「シロ、あきらめるな。」

兄様は我の手を掴んで共に山頂に向かう。

夜遅く、辺りは真っ暗で怖い。

木々の隙間から月の光が射しこむだけの山道。

「はぁ・・・はぁ・・・着いた。」

山頂に辿り着くと、景色が見えるわけでもない。

回りは木々で覆われ、

小さな社と大きな岩があるだけの場所。

我が座りこむと、その隣に兄様は腰掛けて、

寝ころんだ。

「はぁはぁ・・・兄様、何もないではありませんか。」

「シロ、寝ころんでごらん?。」

不思議に感じながらも我は寝ころんでみた。

空が見える。

雲と星と月。

流れる雲は時折、星や月を隠し、

すぐにまた星や月が顔を見せる。

とても、小さく、遠い場所にあると感じた。

「シロ、これが自然なんだよ?。
この自然と、この空気と僕たちの命を感じるんだ。
目を閉じずに見つめて向き合って?。
背中からは大地の、。」










(白蛇神様?。)

「・・・なんだ?。」

(白蛇神様の知っている月は近くないのですか?。)

「昔は・・・遠くにあった。」

我は昔兄様と寝そべった場所に行き、

そこに腰かけ仰向けで寝る。

幼い蛇に手招きをして隣に寝るようにと。

「お前には何が見える?。」

(・・・星とぉ、雲とぉ、月!。)

「うむ・・・。
これが自然と言うもの。
この自然と、この空気と我らの命を感じるのだ。
目を閉じずに見つめて向き合ってみよ。
背中からは大地の・・・、
息吹きを感じる。
生き物は死を迎えると肉体は土となる。
魂は旅立てど、大地には生きていた肉や骨が滲み渡り、
それが栄養となって、大地が・・・、。」

我は起き上がり目を見開いた。

「それが栄養となって、大地が息づく・・・。」

(白蛇神様、息づくって何ですか?。)

「大地が・・・強くなると言う事・・・だ。」

答えを見つけた。

だが、そのままの意味だとすれば、

死人を大地に埋めろと言う事。

人は皆、火葬するか、土葬にしても、

棺桶に入れて埋葬する。

土には返る事が出来ぬ。

「どういう事だ・・・。
大地を強く・・・。」

これが答えだとすれば、とんでもない事。

我は直ぐにカンと兄様の元に戻った。

「はぁ~?。」

「シロ・・・確かに僕が教わった事だけど・・・。」

「そんなら何か?大地を強くするには、
いっぱいの死人を土に埋めろっちゅー意味か?
そんなアホな・・・。」

「しかし!それしか方法が解らぬのだ!。」

カンも兄様も、表情を曇らせる。

我も同様に。

「とにかく、落ち着こうよ。
俺がそれを教わったのは、大神から教わったんだ。
大神も誰かに教わったのかも知れない。
それを学んだ人に詳しく聞けば、
その方法しかないのか、
他の方法もあるのか解るかもしれない。」

「他の方法があって欲しいもんやなぁ・・・。」

「まずは大神に話を聞いてみようよシロ。」

「解った。」

我は直ぐに大神の元に向かった。










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