vol 262:軍歌





晩飯も一緒に、その後、花火があるからって、

カンを誘ったけど、

久々の実家でお母さんも晩飯を作って待ってるだろうからって、

カンは帰って行った。

「そうよね。お母様、カンちゃん待ってるものね。」

母さんはこう言ってるけど、

本音はカンの事も我が子のように思っていて、

自分の手料理を食べさせたかったんだと思う。

父さんもどこか寂しそう。

そして俺も。

「さぁさ、ご飯にしましょう!。」

たくさんの手料理をシロと俺は食べた。

カンの持って来てくれたビールを飲みながら。

「ほら、シロ。どうした?
持ちなよ?。」

「・・・。」

花火を庭でしたんだけど、

シロは手持ち花火を持とうとしない。

「あはは!怖いのか!。」

「こ、怖くはない!。」

笑う俺にシロは怒って見せた。

「もう!大樹ったら!
シロちゃん、おばさんとこれしましょう。
これはね、線香花火って言うのよ?。」

母さんはしゃがんで線香花火に火をつけた。

丸く円上に火花が咲き、

シロは自然に母さんの隣にしゃがんでそれを見つめる。

火花が小さくなると、大きな玉が先について、

「この玉が落ちなければ、
願い事が叶うの。
さ、シロちゃんもやってみて?。」

母さんは微笑んでシロに線香花火を持たせる。

シロも黙って持ち、

シロの線香花火の玉は落ちずに消えた。

「まぁ!シロちゃん、やったじゃない!
シロちゃんの願い事は叶うわね。」

「・・・うむ。」

シロはすごく嬉しそうに母さんに微笑んだ。

シロはきっと思い出したのかな。

俺たちの母さんを。

まだ幼い頃、

いつも微笑んで抱きしめてくれた。

「ねぇ、シロちゃん。
今夜はおばちゃんと寝ましょうよ?。」

「ええ!母さんとシロが?。」

シロと風呂から出るとリビングで母さんがシロに声をかける。

「いいじゃない。
ね?シロちゃんは嫌かしら。」

「・・・良い・・・。」

シロは恥ずかしそうに呟く。

「お父さんもシロちゃんと寝たいって。
お父さんと私のお布団くっつけたら、
3人十分寝られるわ。」

シロが幼い頃は、

とにかく、おとなしかった。

修行中の蛇や皆をずっと見て来ていて、

俺にはベッタリだったけど、

母さんには甘え下手だったんだ。

大神様、大神様って皆が頭を下げるから、

素直に甘えられなかったんだろう。

シロは母さんに手をひかれて、

寝室に向かう。

俺はそんな弟が愛らしくて仕方なく思えた。

カンと少し電話をしてから寝て、

朝になり、みんなで墓地に。

うちの墓もカンと同じ墓地にある。

「おはようございます。
お元気でしたか?。」

「おはようございます。
いつもカンがお世話になって。
先生も奥さんもお元気そうで。」

カンとカンのお母さんが挨拶し合う。

「カンも立派になりましたな。」

「いいえぇ。まだまだ子供です。」

父さんも加わって親同士話が弾み、

カンのお母さんがシロに視線を向けた。

見た目は小学生にしか見えないシロに、

カンのお母さんは大人にするように、

深々と頭を下げる。

シロもそれを見て、頭を深く下げた。

「すごいね、カンのお母さん。
まるで、シロが大人なのわかってるみたい。」

「あー。わかっとるよ。
あの人、意味不やから。」

カンは欠伸をしながら眠そうに答えた。

先にそれぞれの墓を参り、

最後に戦死者の墓地に向かう。

そこは驚きの隠せない光景で。

(おー!来た!。)

(来たぞ!。)

戦死者たちがたくさんいる。

みんな手を叩いて、嬉しそうに。

そして、軍歌のような歌をみんなで歌い始めた。

「えーっと、ひーじーちゃんの墓どこや?。」

「こっちだよ。」

カンを連れて、じーさんの墓に向かった。

じーさんに手を合わせてから、

全員に対しての線香をあげる場所が一番前にあって、

そこに花を活け、ミカンに栗饅頭にあべかわ餅を置いた。

カンは煙草を1本火をつけて蒸かし、

線香立てに火をついた方を上に向けて挿す。

そして1箱蓋を開けて供えた。

戦死者はみんな涙を浮かべて、

カンに敬礼をする。

「えぇか、みんな。
見た目、2、3人くらいしか食えん量やけど、
これは、食っても食っても無くならんのや。
せやから、全員が食える。
一人ずつ、その手に持って、
食えばえぇ。」

カンは小さな声で話をした。

カンは敬礼をして見せ、大きな声で、

「この国を!
日本を今もなお!
守り続けてくださって、ありがとうございます!
おかげで戦争も終わり、
皆、恐れる事もなく日々を過ごせております!
あなた方の死と共に、
我々が平和に過ごせている事を!
戦争をあなた方の死と共に、
終わらせていただいた事を、
心から・・・心から感謝致します!
ありがとうございました!。」

カンは頭を下げた。

戦死者たちは泣き、

頭を下げるカンに敬礼をしたまま、

再び軍歌を歌い始めた。

すると父さんも、軍歌を歌い始めて、

父さんはカンの隣に立って肩を組み歌う。

カンは驚いた顔をするけど、

歌を知らないから、

手拍子で参加した。

「やはり・・・カンはすごいな。」

シロは俺の隣で言う。

「あぁ。本当に彼は、人の心を解く人だよ。」

俺の、最愛の人だ。

そして、戦死者の隣で阿弥陀如来が微笑んでいた。









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