【備考】1970年代後半〜80年代前半に於ける
初代海王丸と日本丸の外観上の主な相違点(2/3)


9.長船尾楼甲板上のギャベジタンク投入口の有無(73年春〜)
10.ボートデッキライトの有無(75年秋−76年春〜)

 海王丸は1973年春の入渠工事の際にウェルデッキの右舷側後方にギャベジタンク(残飯などの生ごみを貯蔵するタンク)が設置され、直上の長船尾楼甲板に投入口(赤矢印)が設置されました。この投入口は着脱可能で、帆走作業など支障が出る際には外して蓋を閉めていたようです。これは港湾の汚染防止のために船内の汚水処理装置と共に設置されたもので、停泊中は生ごみをこの中に溜め、出港し外洋に出た後で投棄していました。日本丸のギャベジタンクは70年代中頃はウェルデッキ左舷側の第一教室との隔壁に接する形で装備されていたものと思われますが、現役当時の写真を見る限り、直上の長船尾楼甲板に投入口は無かったようです。

 また、海王丸は1975年秋の入渠工事でフォアブリッジ右舷側の1番救命艇のボートダビッドが重力式のものに換装された後に、海面照射用の大型のボートデッキライトが装備され(青矢印の右側、これは86年秋の入渠工事の際に撤去)、各搭載艇の船尾側ダビッドの脇にも小型のライトが装備されました(青矢印)。しかしながら、この実施時期ははっきりしません。毎日グラフ1976年9月12日号に於いて、中村庸夫氏が撮影した1976年7月頃とされる写真には大型小型共に写っているため、75年秋か76年春の入渠の際に実施されたものと思われます。

 そして87年春の入渠工事の際に各救命筏コンテナの脇にもライトが追加装備されました。現在の保存船はフォアブリッジ両脇の救命筏コンテナ用の2基を除いてボートデッキライトは残存していません。

 このライトは、日本丸に関しては現役当時の写真映像や現在の保存船を見る限りでは、装備や装備された跡が全く確認できません。橋本氏によれば法律で装備が義務付けられていたため、どこかにあったのではないかということですが、詳細は不明です。
海王丸 日本丸

11.2番倉口とメインマストの間のデイリータンクの形状と色(77年秋〜)

 海王丸は完全な角形で白、日本丸は底部が丸くオレンジ色です。元々ここには2番倉口用のウインチが装備されていましたが、海王丸は1977年秋にウインチを撤去してタンクを新設、日本丸は1975年秋の入渠工事で煙突背面から移設したようです。
海王丸 日本丸

12.煙突背面の構造(75年秋〜)

 海王丸はほぼフラットであるのに対し、日本丸には焼却炉室が設置されています。日本丸の焼却炉室は米建国200周年帆船パレード参加に伴う改装工事で設置されたもので、前述のフォアブリッジ後端の延長と同様に海王丸では実施されなかったものです。
 それ以前はこの部分には両船共にデイリータンクが設置されていました。日本丸は上述したように焼却炉室の設置に伴いタンクそのものを2番倉口背面に移設したようですが、海王丸は1977年秋の入渠工事の際にこれを撤去し、日本丸と同じ位置に新たに角型のタンクを装備しました。
海王丸 日本丸

13.各大型通風筒の形状

 海王丸と日本丸で同一形状のものはあまりありません。日本丸は竣工当時からさほど変化が無いのに対して、海王丸の大型通風筒は時期によって形状や配置に変化があり、またキセル型通風筒の数も時期を追うに従って少なくなっています。
海王丸 日本丸
実習生
入口
及び
煙突周辺
アフター
ブリッジ
前面

14.船鐘の数

 海王丸はアフターブリッジ前に1個、日本丸はアフターブリッジ前とフォアブリッジの左舷側張り出しの下に計2個装備されていました。橋本氏に依れば、日本丸の船鐘は風下側の航海当直当番の利便性を考慮して帆走用と機走用で運用を分けていたとの事で、アフターブリッジ前のものを帆走用として使用していたそうです。
 海王丸に関しては手持ちのいずれの時代の写真映像にもアフターブリッジ前の1個しか確認できないため、現役当時は常時この鐘を使用していたものと思われます。
 ただし、現在の保存船海王丸にはフォアブリッジの日本丸とほぼ同じ位置にもう1個船鐘が下げられています。この鐘にも海王丸1930の刻印はあるのですが、ここに付けられた理由も含めて詳しい由来に関しては海王丸財団でもはっきりした事は判らないようです。
海王丸 日本丸

15.アフターブリッジ上の空中線引込口の形状等(77年秋〜)

 海王丸には大型のトランスが2個装備されていたのに対し、日本丸は引退するまでそのような装備はなく、防護フェンスの形状にも相違があります。これも元々は日本丸と同じ形状だったものが、海王丸は1977年秋の入渠工事でこの形に改装されたようです。共に現在の保存船には残存していません。

 また、アフターブリッジ上の基準コンパスとジャイロコンパスレピーターの並びは両船で逆で、設置位置や形状にも多少の相違があるほか、右舷側後部の無線室の丸窓の位置にも若干の違いがあります。
海王丸 日本丸

16.船尾舵輪覆いの外側の塗装

 海王丸はオレンジ、日本丸は白色です。
海王丸 日本丸



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