【備考】1970年代後半〜80年代前半に於ける
初代海王丸と日本丸の外観上の主な相違点(3/3)


17.船尾のパナマ・フェアリードの有無

 日本丸にのみ、現役当時から船尾にもパナマ・フェアリード(係船索を通すフェアリードの一種、円形で内部にローラーが無く上端が閉じている)が装備されていました。これは1955〜60年迄に装備されたものと思われますが、正確な時期及び理由は不明です。資料によっては1976年の米建国200周年記念帆船パレード参加に伴い、パナマ運河を通過するために装備されたと記述されているものもありますが、これは1960年の日米修好通商百周年記念航海でニューヨークを訪れた時に撮影された写真に既に写っていることから、あるいはこの際に装備されたものかもしれません。
(下の日本丸の写真で、赤矢印で示したものがそれになります。右側の少し大型のものは引退後に装備されたもののようです)

 ちなみに、初代海王丸はパナマ運河を通過する航海は一度もありませんでした。
海王丸 日本丸

18.係船桁の装備状況など

 海王丸の係船桁はウェルデッキブルワークの外側の左右両舷に装備されていましたが、1983年春の入渠工事の際に撤去されました。また、1番倉口のウインチも80年秋〜83年春までの時期に撤去されました。これに対して日本丸の係船桁は左舷側のみの装備で、1番倉口のウインチ共々引退するまで残存していましたが、現在の保存船からは撤去されています。また、82年秋の改装工事で海王丸のフォアマストとブリッジの間に帆装教習用のミニヤードが設置されました。日本丸にも同様のミニヤードがありましたが、70年代半ば頃には既に装備されていたようです。

 海王丸の右舷側の帆走用航海灯の脇には折り畳み式の小型の台が装備されています。錨見台または投鉛台ではないかと思うのですが、現役当時の写真や映像を見る限り全て右舷側のみで、左舷側に付けられたものはありません。これは日本丸に関しては装備されている写真がほとんど確認できません(ただし入港時の測深作業は練習船のカリキュラムに於いては必須のことがらでした)。

 それと、日本丸のみウェルデッキブルワークの船首側の立ち上がりに、折り返し状の飾りが付けられています。加えて現役当時の写真や映像からは帆走用航海灯の直下両舷に棒状の装備品が認められます。橋本氏によればこの装備品はフォアマストのコースのバウラインを一時的に掛けておくものか、あるいは投鉛台の取り外しの台座ではないかということですが、詳細は不明です。
海王丸 日本丸
〜1980年頃
1983年春〜

19.各ヤード及びバウスプリット先端の塗装(76年夏〜)
20.アッパー・ゲルン・シートの処理方法

 海王丸のヤードはオレンジ一色であるのに対して、日本丸は先端が白色に塗られています。ただし、少なくとも1976年頃までは両船共にオレンジ一色で塗装されており、日本丸は米建国200周年記念帆船パレード参加の直後にこのような塗装に変更されました。橋本氏によれば夜間にヤード先端の把握を容易にするために施されたもので、帆船パレードに於いて各国の船がこのように塗装していたのを見て採用したということです。

 また、アッパーゲルンスルのシート(上から2番目の帆の両下隅を調整する動索、赤矢印)は、海王丸が直下のロワーゲルンヤードの先端に直接固定されているのに対し、日本丸では滑車を使って折り返し甲板上から操作できるようになっています。建造当時は共に海王丸の形式でしたが、日本丸は後に改装されました。アッパーゲルンヤードは上下に移動するため、展帆時にヤードを上に揚げれば下隅が固定されていても帆は展開できる事になります。

 最も下の帆以外の角帆のシートは、展帆時に帆の下隅を引いて整えるために付けられている動索ですが、海王丸の(=建造当時の)アッパーゲルンだけがこのような形式とされている理由は判りません。ただし、仮に上下に移動できるヤード3本全ての帆(ロイヤル・アッパーゲルン・アッパートップスル)のシートを甲板上に降ろさず下のヤードに固定したとしても理論上は帆走に問題はないらしく、現在の海王丸の総帆展帆に於いてもこの部分のシートが固定されている事に依る支障は特にないようです。
海王丸 日本丸

21.ジガーマストステイの本数

 海王丸は3本、日本丸は4本。建造当初は共に3本でしたが、日本丸は後に1本追加され、下から2番目のステイの取り付け位置も若干変更されました。
海王丸 日本丸

22.帆装標識灯の位置と形状

 帆装時に点灯するもので、法令改正に従い海王丸は1976年、日本丸は75年に装備されました。位置は海王丸がフォアマストの先端、日本丸はミズンマスト先端に付けられています。また取り付け部の形状にも違いがあります。
海王丸 日本丸

23.空中線ヤードの数と位置

 1970年代末頃までは海王丸・日本丸共に後ろ3本のメイン・ミズン・ジガーマストの頂部に空中線展開用の小さいヤードが取り付けられ、海王丸は日本丸よりも低い位置に付けられていました。しかし海王丸は81年春の入渠工事の際にメインマストのヤードを撤去し、ミズンマストの取り付けも日本丸と同じ位置に変更されました。(現在の保存船の海王丸はミズンマストのヤードも撤去されています)
海王丸 日本丸
〜1981年春
1981年春〜
1989年



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2004/06/11 公開
2004/07/16, 2006/03/03, 2007/03/30, 2011/03/05 一部修正

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