初代海王丸を見に行く(その4)



操舵室正面
(拡大画像は950*400です)


操舵室背面
(拡大画像は950*400です)

 フォアブリッジは一番上の操舵室とその後ろの海図室の見学ができます。この内部は1989年の引退からそれほど変わっていないようで、1985年にNHKが取材した記録フィルムと比較してもあまり違いが認められません。また、初代海王丸の操舵室は日本丸に比べて窓2枚分(約1m50cm)幅広で、機器類の配置にも余裕があります。

 左上の写真は操舵室の前面です。伝声管は天蓋下の1本のみで、機走用の舵輪も現代の商船に見られるような小型のハンドル式になっていますが、少なくとも80年代の中頃には既にこのような形になっていたようです。(1)で示したレーダーは左舷側のものは電源が入っていて、ボタンを押すとレーダースキャナが回転してスクリーンに画像が表示されます(上に画像表示の説明板があります)。(2)は機走用の操舵スタンド、(3)はマグネットコンパスです。(4)はエンジンテレグラフ、(5)は伝声管、(6)は国際信号旗の棚です。また、右舷側の側面、(7)で示した位置に電動操舵と手動操舵の切替手順を刻印した金属板が付けられています。

 左下の写真は操舵室の背面を撮ったものです。(8)は国際VHS無線電話、(9)は航海当直配員表の黒板、(10)は航海灯の表示盤、(11)は無線方位探知機です。

 また、ブリッジの張り出しにはレピータコンパスが装備されています。これは船体内部にあるジャイロコンパスの数値を連動して表示するもので、同じものはアフターブリッジの天蓋にも装備されています。




(拡大画像は1024*512です)
 船首楼甲板は、周囲に特別に作られたビットからチェーンで船体を固定する金具(1)が4ヶ所に付けられた以外は、現役当時とほとんど変わっていません。

 甲板の艦尾側の端にある(2)はデイリータンク、両端にある(3)は帆装航海用の舷灯、中央の(4)は大型のキャプスタン、その前方の(5)は錨を操作するキャットクレーンです。

 (6)で示した舷灯の脇にある3個の黄色いアイボルト(甲板上に埋め込まれた丸い輪)は、船首に張る三角帆の下側を引くロープの一端を留めるためのもので、もう一端は滑車を経由してウェルデッキの船首側先端のピレイング・ピンに留めるようになっています。(7)の静索はその2:で述べたメインステイで、2重になって下に降り、先端部はフォアマストを挟むように分かれて固定されています。


 ウェルデッキ(上甲板露天部)の見学は左舷側のみで、右舷側は立入禁止となっています。左の写真で示した部分は現役当時とほとんど変わっていませんが、長船尾楼甲板の下側の部分は、2番船倉の一部を改造して見学者が船内に入るためのハッチとラッタルが増設されていたり、左舷側のキャプスタンが電動式のものに取り替えられていたり、天井部に太い消火用の配管が増設されているなど、多少の変化があります。

 ウェルデッキの両舷のブルワークに付いているピレイング・ピンの棚(1)はファイフ・レールと呼ばれ、両舷共にデッキの先端から後端まで付けられています。露天甲板がブルワークで仕切られた帆船の場合、マストの両舷方向側に降りる動索は支柱形式のピンレールではなく、このようにブルワークの内側に付けられたファイフ・レールに固定される形式が一般的だったようです。

 他にウェルデッキ上には、海王丸の甲板構造を示した模型やピレイピンの実物、甲板掃除の要具、現役当時の写真などの展示や説明があります。



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