初代海王丸を見に行く(その3)


 船体中央部右舷側の写真です。中央に写っている白い構造物は実習生の出入口、その手前の窓は上甲板中央部にある第一教室の天窓、背後に煙突と後方2本のマストが見えています。

 海王丸のキャプスタンは現役当時は全て手動のものでしたが、このうち3基が電動式のものに取り替えられています。写真の(1)で示したものがそれで、左舷側の手動式(5)と形状が異なると共に、基部の甲板のデッキ・プランキング(木材の配置)も異なっています。そして、近くに電動操作盤(2)が設置されています。ちなみに取り替えられたキャプスタンは長船尾楼甲板の右舷前部と左舷後部、そしてウェルデッキの左舷側のものです。取り外された手動式キャプスタン3基は、予備プロペラと共に近くの陸上に展示されています。

 それと、これは恐らくライトアップの関係だろうと思うのですが、上部構造物の所々にライト(3)が増設されています。また(4)で示したものは消防用の斧で、火災時に消火活動の障害物を破壊する目的で置かれていました。これは現役当時から同じ位置にありました。また、現役当時は消防用のホースの収納箱が斧の下にありましたが、現在は右舷側の赤い箱にまとめて置かれています。また、各構造物の側面に付いているライトはどれも一回り大きなものと取り替えられています。

 他はほぼ現役当時と同じ状態を保っています。


 左はフォアブリッジ前面の写真です。ここはエンジンで航海する際に指揮を取る場所で、帆を張る際は船尾手動舵輪の周辺が操船指揮の中心になるそうです(後述)。

 ここは外観的には現役当時とほとんど変化はなく、写真では逆光で良く判りませんが、ブリッジ脇の機走用の舷灯もそのまま残されています。ブリッジ正面の操舵室の窓の下側には船銘板が取り付けられています。これは1985年春の映像では確認できず、同年秋の入渠の際に付けられたもののようです。また下部船室正面の2枚の窓の間には保存船改修工事の銘板があります。

 左舷側張り出しの下側に時鐘が下がっています。現役当時この位置には時鐘は無かったはずですが、海王丸の船名は刻印されています(ここは明確に立ち入り禁止と区切ってはいませんが、見学順路からは外れています。ブリッジからウェルデッキに降りる左舷側のラッタルは通行禁止となっています)。


 フォアブリッジの背面付近の写真です。ここに通じるラッタル(1)は現役当時は共に船首方向に降りていましたが、現在は逆方向に付けられています。また、現役当時には(2)の位置に大型のデイリータンクが装備されていましたが、現在は撤去されています(これは1990年4月の一般公開開始当初にはまだ残存しており、その後に撤去されたようです)。

 他には(3)の位置の吸気口が異なり、また(4)の天幕用の支柱も追加されています(この吸気口は2002年の冬に撤去され、現在は存在しません)。

 フォアブリッジ両脇の救命艇は現役当時と同じ構造ですが、甲板上の架台に固定されていた左舷側の2号艇は現在はダビットに吊された形で、架台は撤去されています。ブリッジの天蓋は少なくとも70年代末頃までは木甲板だったようですが、80年代に入って鉄甲板に変更され緑色の塗装が成され、89年の引退までそのままだったようです。現在は木甲板に戻されています(天蓋に登ることは禁止されています。甲板材質の確認は一脚にデジカメを固定してセルフタイマーの間に下の甲板から腕を伸ばして撮影した写真に依っています)。



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