船体には外板のモールドがあります。しかし、モールドされているのは水平の貼り合わせ面だけで、垂直面のモールドは船首先端を除いてありません。また、水平面の外板は水線上に関しては大体キットの通りですが、水線下は「帆船図説」(橋本進編/海文堂刊1979)に掲載されている外板展開図や、富山県が公開している1994年定期検査時の写真(http://www.pref.toyama.jp/sections/1014/kaiwodock2.htm、現在は削除)、「帆船日本丸と海王丸五十年のロマン」(中村庸夫写真・千葉宗雄編/立風書房刊1978)のp63に掲載されている日本丸入渠中の写真など見る限り、かなり異なっているように見えます。そこで、水線下の外板モールドに関しては、上述の資料などを基に修正すると共に、垂直面の貼り合わせの段差のモールドも追加しています。なお、垂直面の段差は実船では間際まで接近しかつ斜め側から見ない限り意識できない程度なので、モールドも極く浅めに留めています。
またこの外板モールドは船尾の部分のエッジが若干甘いのでモールドを立て、船尾装飾の下側の矢印付きモールとの位置関係も違っているので修正すると共に、前述の外板展開図に依れば片舷当たり7ヶ所にクランク状の部分があるように読み取れるので、それらしく修正しています(実船では船尾の1ヶ所しか確認できません。残りは全て水線下です)。
それと、船体のビルジキールは前述の外板展開図を見る限り、船首側で約6.5cm、船尾側で約6cm長さが足りません。船体側の接着面のくぼみを彫ると共に、ビルジキールの部品(39,51)は中央部で12.5cm延長して船体に取り付けています。 他に大きな問題点として、船首のフィギュアヘッド(船首像)のバランスにも問題があり、直後の錨鎖収納部のベルマウスがそれに合わせた形でモールドされているため、結果として船首回りの印象があまり良くありません。
まず唐草模様のフィギュアヘッドは実船と比較すると船尾側が大きく広がっている上に船首側の厚みも不足しており、先端のコンパスマークの彫刻付近のバランスも合いません。またキットの唐草模様のモールドも彫りが浅い上にパターンも実船とは少し異なっています。そのため、削り込んだりプラ板を貼ったりして土台を整形し直した上で唐草模様のモールドをそっくり作り替えました。模様は田宮のプラ板よりやや柔らかいエバーグリーンのプラ材を少しずつ削って作ったのですが、どうも私はこの種の彫刻が苦手で、キットのオリジナルのモールドよりはましという程度にしかなりませんでした。
また、フィギュアヘッド付近の三角形になった船首材の内側の構造は、実船ではキットよりもう少し複雑な構造になっています。ここは自作する上甲板の船首側先端とも関係してくるので、とりあえず不要なモールドを削っています(構造の詳細は船首楼内部の製作の際にまとめて述べることにします)。
錨鎖収納部のベルマウスは大き過ぎる船尾側のフィギュアヘッドに合わせてモールドされているため実船よりも大きい上に、上甲板に位置しなければならない錨鎖通過穴の中心が、中甲板の舷窓のライン上に来ています。そのため、ベルマウスを二回り小さいものに自作し改めて錨鎖通過穴を開け直しています。
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