プラ製の組立模型の中で帆船が占める割合は大きいものではありませんが、加えてその大半は1950-70年代に製品化されたもので、総じて組みにくい上に考証的にスケールモデルとしての評価すらできないキットも少なくないのが現状です。そのため、軍艦/商船模型以上にキットの「素性」を確かめることが、製作の最初かつ最も重要なポイントだと私は考えています。
今井の1/100(初代)海王丸は1978年に発売された日本丸から、主な相違点である前部船橋の上部や煙突周辺の部品を追加して発売されたもので、前部船橋右舷側の1番救命艇のボートダビッドをラジアル式から重力式に換装した後の1975年秋-77年夏頃の状態のようです。基本的には優れた内容ですが、小さな相違点は日本丸のままで、製作に当たってはかなりの検討が必要です。部品のモールドは発売当時は水準を充分満たしたものでしたが、現在の1/700を見慣れた目にはやや不満が残ります。また、リギング(ロープの展開)は大幅に省略されているため、ここはイチから全てやり直す必要があります。
ポイントとして考えていることは、
- 時期は1985年4〜5月頃、
昭和60年度最初の遠洋実習航海直前の状態とする。
- 資料は1985年6月に放映されたNHKの記録映像をベースに、1983年4月と1986年1月に撮影した細部写真、及び現在の姿から推測する。
- 以前に一部製作した部品は使用しない。
製作は全て新規パーツでやり直す。
- モールドの取捨選択の基準は設定しない。
再現可能なものは全て再現する。
- 甲板は塗装せず、STウッドの細切りを貼る。
デッキ・ブランキング(甲板材の配列)も極力実船に準じる。
- 手すりは真鍮線で作り直す。 天窓/船室窓のガラスは全て再現する。
- 前部船橋の操舵室と海図室の内部は全て再現する。
ただし他のドアや天窓は閉状態とする(無理な追加工作は極力避ける)
- 帆装は畳帆状態(帆をヤードに畳んだ状態)とする。
- リギングは極力実船に沿った形で再現する。滑車も全て自作する。
- その他、使える素材は片っ端から使う。
- 製作順は以下の予定。
- 船体外側→ウェルデッキ→長船尾楼甲板→船首楼甲板→マスト・ヤード→リギング1(静索→動索船体内側→動索船体舷側)→その他艤装品→リギング2(ブレース)→仕上げ
他、滑車製作(随時)
実物が残っている船ですし、基本的なノウハウはAmerigo Vespucciで一通りこなしている上にキットの素性も良いので、あとは時間だけの問題だろうと。帆船模型にとって1/100は決して大スケールという訳ではないのですが、基本的には1/100の帆船ではなく、1/100の商船という感じでまとめられればと考えています。
外箱の仕様
これは生産初期のものです。
末期には全面白色の簡素な箱に変更されました。
キットそのものは今井の廃業に伴い生産されておらず、
他社からの再版の可能性も2003年7月現在不明です。
市場にはほとんど残っていないようですが
ヤフオクなどのオークションサイトでは
生産末期の定価(27,000円)以下で時折出ているようです。
2005年に青島模型文化教材社から再版されました。
今井版では別売だった乗員セットが同梱されていますが
それ以外に今井版との違いはないようです。
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