日本国練習帆船 海王丸(今井1/100、製作中断中


・実船について

 (初代)海王丸は同型船の日本丸と共に公立の商船学校の練習生を育成する目的で建造された練習帆船で、1930年に竣工しました。第二次大戦中は帆装を撤去して練習船兼輸送船として、また戦後は海外からの引き揚げ業務にも従事しましたが、1950年に帆装を復帰し、以降日本の船員養成に働きました。現在は富山県の新湊港で永久保存されています。

練習帆船 海王丸
(1983年4月23日 石川県・七尾港にて撮影)


・工作が中断するまで

 キットは今井科学が送り出した、艦船模型としては最も優れたものの一つに上げられる傑作です。プラ帆船に共通するリギングの省略を除けばほとんど欠点はありませんし、その問題は容易に解決できるものです。「汽船に帆を取り付けた」独特のスタイルも良く再現していますし、帆船のキットでは省略される事が多い甲板のキャンバーも表現されています。
 Amerigo Vespucciを作ったあと、1/150での帆船作りがかなり疲れたことから、もう少し大きいスケールで作り込みたいと考えて選んだのが今井の1/100海王丸でした。前作で塗装で済ませた甲板の表現と、リギングをもう少し詰めたい(具体的には滑車を4種類くらい作って使い分けたかった)こと、金属材料の更なる利用をポイントとして作業に入りました。日本で最も有名だった船の一つですから資料は豊富、また一般公開に出かけて船上写真を150枚以上撮ってきた事もあり、考証面では全く困らなかったのですが…

1/100海王丸 機関部
(一部手抜き)

 結局、機関部と後部船室、滑車を100個ほど作った段階で工作が中断してしまいました。工作技術的には問題はなかったのですが、このレベルで作り続けるのがしんどくなって、手が止まったまま歳月だけが流れて現在に至っています。1/150程度が現在捉えられる大きさの限界なのかな、と。

 後部船室の甲板には本物の木を貼っています。これは東京・板橋の鉄道模型専門店「エコーモデル」で発売されていた「STウッド」という素材で、紙を極く薄くスライスした桐の木でサンドイッチしたものです。本来は鉄道模型の建築物に使うものですが、薄さがわずか0.3mm程度で、しかもどんなに細切りしても割れる事がありません。かれこれ7,8年前に購入したもので現在購入できるかどうかは判りませんが、大スケールの艦船には充分使える素材だと思います。またかなり多くの部分で金属材料を使っていますが、1/100となると強度以外にもプラでは表現的に限界があるようです。

1/100海王丸 後部船室

・あとがき

 帆船作りはこれが最後になっています。当分の間は慣れた1/350〜1/700の軍艦や商船を中心に作ってゆこうと考えているので再開する事もしばらくありませんが、この海王丸だけは寿命があるうちに(^_^;)何とかしたいものです。

※注 2003年7月28日より、製作を再開しています。

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