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調理実演過去ログ:ホワイトエンサイン1/350巡洋戦艦フッドを作る
その14:艦上装備品について(その2)
2001/07/28

はじめに

 キット本体の製作はほぼ終了しました。田宮の1/350KGV級+ディテールアップを目安に進めましたが、上手くいった所もあれば不満足な部分も多々目立った製作でした。正直言えばレジンの大型キットなど金輪際御免だ!と地面に穴を掘って叫びたい気分ですが(^^;)、新しい技法や表現方法も多々得ることができたので、意味のあるものではありました。


主砲について

 キットの主砲塔にはほとんどモールドが無く、外形にも若干不満があり、加えてレジンの砲身が太すぎて全く使えなかったため、砲塔前面も含めてかなり手を入れる事になりました(ホワイトエンサインは後にモールドを加えた修正版のパーツを追加しています)。ただ、手間がかかった割には見栄えがしない仕上がりになってしまいました。

 まず主砲天蓋の形状は実艦では中心線から両側に向かって緩い山のようになっていますが、部品は一直線で縁の部分だけ角を落としている程度に留まっていました。そのため、天蓋部分を山形に削り、装甲板の縁の部分に0.5mm真ちゅう線を埋め込んでヤスリで削って「リベット」を表現したつもりでしたが、完全なオーバースケールかつ不揃いなモールドで、あまり思うようには仕上がりませんでした。あと、砲塔正面を削り込んだ上にプラ板を貼って整形し、側面のナックルも曖昧だったのでここも整形し直しています。ナックルの下側に裁ち落としがあるのは英国戦艦の主砲塔の特徴の一つですが、あまり上手い感じには仕上がりませんでした。

 実艦の主砲塔は測距儀カバーの正面右舷側にスリットがあり、その上部にカバーと前面に風よけが付いていました。この部分のキットのモールドは表現が弱かったので、削り落としてプラ板で作り直しています(風よけに関しては着脱可能だったようで、取り外された写真もあります)。また測距儀の中心線上には照準手用の観測鏡があったので、これもモールドを追加しています。それと、この主砲塔は測距儀の背後の天蓋にハッチがあり、兵員は砲塔背面のラッタルをよじ登って出入りしていたようです。
 主砲の砲身には金属パイプを用い、防水カバーはエポキシパテを盛って仕上げました。防水カバーの色は白としましたが、最後の改装が終了した後の写真を見る限りでは、ライトグレーかライトカーキだった可能性もあると考えます。

 3番主砲の左舷側には用途不明の張り出しがありました。
「Warship Profile」(p154上段)
 ここに、1940年8月撮影の左舷側艦尾後甲板の写真が掲載されており、張り出しがある事が判ります。張り出しの支柱の形状は上記の写真に従いましたが、上面の形状はANATOMY...HOODの図面に従っています。

 1番主砲の天蓋には濃い円形の塗装が施されていました。これは1937年頃から見受けられるもので、1941年3月の改装後に撮影された写真
「Warship Profile」(p169,171)
これにもはっきりと写っており、恐らくビスマルクとの戦闘でもこの塗装は残っていたのではないかと考えています。しかし手持ちの資料の中には他の英国戦艦でこのような塗装を施した例は無く、その意味も良く判りません。色の根拠も全く判らないのですが、一応船体中央部の鉄甲板と同じ色(フィールドブルー+ダークシーグレイ)としています。ただ、1937年頃は完全な円形ですが、上記の写真を見る限り装甲板の接合部で円が切れているように見える事から、そのように塗装しています。

1番主砲塔周辺



3番主砲塔周辺


対空兵装について

 最終時に於けるフッドの対空兵装は12.7cm連装高角砲×7基(16門)、8連装ポンポン砲×3基(24門)、対空20連装ロケット砲×5基(100門)、12.7mm4連装機銃×4基(16門)と、当時の日本海軍の戦艦と比較しても非常に強力な装備が成されていました。

 12.7cm連装高角砲は Mk-XIXと呼ばれる形式で、KGV級戦艦では装備されなかったもので田宮のキットからは流用できません。これはキットのパーツに手を加えエッチングを貼り、砲身を金属パイフで作り直した程度に留めています。シールドの形状は非常に微妙な形で本来は図面を描いて自作すべきものだったのですが、もう気力が沸きませんでした。これは流用できる部品が将来出てきたら取り替えたいものです。

 8連装ポンポン砲は田宮のKGVの部品をベースに、キットのエッチングパーツを加えて仕上げました。これは少し表現が過剰に過ぎたようです。また、12.7mm4連装機銃はキットのエッチングを組んだものですが、銃身は田宮のKGVのポンポン砲のそれから移植しています。

 英国海軍の対空20連装ロケット砲(UP)は、1940〜41年頃に一部の戦艦に装備されたもので、フッドは船体中央部に4基と2番主砲上に1基の計5基が搭載されていました。しかし、最後の戦闘に於いてプリンツオイゲンからの命中弾が弾薬ロッカーの誘爆を引き起こした戦訓から、その後全ての戦艦からこの兵装は撤去される事になります。砲弾の構造は日本海軍の噴進砲とは異なり、上空に射出されたあと弾頭が分離してパラシュートで降下し、時限信管もしくは弾頭から垂れたワイヤーケーブルを攻撃機が引っ掛けると爆発する構造になっていました。
 これも他から流用できる部品がなく、キットのレジンパーツに手を加えて作っています。ロケット砲の砲身は極細の真ちゅうパイプを20本束ねて、外側にメッシュを巻いて仕上げています。

その他の装備について

 シェルター甲板下の船室から艦尾甲板に降りる4つのラッタルは、ANATOMY...HOODの解説では木製とされ、Dave Weldon氏の作例でもウッドブラウンで塗装されています。実際にそのように写っているカラー写真も存在するのですが、私は外舷色一色で仕上げています。
「Warship Profile」(p156上段)
 ここに、1940年11月撮影でシェルター甲板背面右舷側をライトグレーからミディアムグレーに塗り替えている写真がありますが、内側のラッタルが明度差があるのに対して、外側のラッタルは背後の壁面との明度差が全く無いように見える点が引っ掛かった事に依るものです。あるいはこの作業でラッタルもミディアムグレーで塗り潰されたのではないかと考えたのですが、他に確証はありません。

 主砲射撃指揮装置の上部には284型射撃レーダーアンテナが装備されていました。これは1941年の最後の改装に於いて付けられたものです。このアンテナが付いている部分には元々15フィートの測距儀が装備されていましたが、測距儀本体は1940年3〜5月の改装の際に撤去され、その後はカバーに一部変更を加えた上で別の用途に用いられていたようです(手持ちの資料には明確な記述がありません)。この部分はキットのパーツをそのまま使い、レーダーアンテナもキットのエッチングパーツを使用しています。

 後部マスト頂部の 279型対空レーダーアンテナに関しては、製作記のその12で述べましたが、ANATOMY...HOODの記述に依ればこのアンテナは送信用途のみで、よってビスマルクとの最後の戦闘の際にはレーダーとしては機能していなかったようです(これは海人社刊「傑作軍艦写真百選」p68のネルソンの写真が示すように、後部マストの送信用とは別に同型の受信用アンテナを装備し対で運用するものだったそうです。個人的な見解ですが、最後の改装で主砲射撃指揮所背面の十字型のトップマストが取り外された理由は、ここに279型レーダーの受信用アンテナを付けるための予備工事だったのではないかと考えています)。

 艦橋の舷灯の位置に関しては、結局Dave Weldon氏の作例に従い羅針艦橋後部張出しの前としましたが、これも確証はありません。1940年以降に撮影された写真を検討する限り「この部分のみが不明で、他には装備された痕跡が見当たらない」という結論に依るものです。

シェルター甲板背面のラッタル



主砲射撃指揮所周辺

後部マスト頂部の
279型対空レーダー(送信用)

張り線と手すりについて

 空中線はANATOMY...HOODの1940年頃のリギングプランと、MONOGRAFIE MORSKIE HOOD付属の図面を根拠にまとめています。1941年の最後の改装でトップマストが外された後の状態は具体的な資料が無く、主砲射撃指揮所の背面に付くヤードの取り付け方法に関しても明確な写真は手元にありません。一応MONOGRAFIE MORSKIE HOOD掲載のイラスト(田宮1/700WLも同様)に合わせていますが、同様の例は他の英国戦艦には見られないもので、個人的には疑問が残ります。

 資料に提示された空中線のうち、主砲射撃指揮所のクロスツリーの後端から後部マストトップに至るものは付けていませんが、ANATOMY...HOODに依ればこれは最後の改装の前まで後部マストトップ上にあった無線室用の線で、その撤去と共にこの空中線も外されたと判断しています(MONOGRAFIE MORSKIE HOODやANATOMY...HOODの最終時の図面では共にこの空中線は描かれています)。それと、艦橋前面のシグナル・ハリヤードは一旦張ってみたのですが、正面から見た場合に艦橋の印象を損ねるように感じたので全て外しました。 張り線はなるべく目立たないよう配慮したつもりですが、張り終えてみると全体的に過剰な面は否めず、1/350における張り線の必要性の有無も含めて再考の余地がありそうです。

 艦首・艦尾上甲板の手すりはゴールドメダルの1/350戦艦大和・武蔵用の2段のエッチングパーツを用いています。実艦の手すりは3段でその事は良く承知していますが、極く一部を除いて2段手すりとしています。他の作例を見たり実際に付けたりして考えてみたのですが、個人的には英国海軍用の3段手すりのエッチングパーツは表現が過剰で、手すりというより「壁」に見えて仕方がなかったために、1段省略の2段でバランスを取ってみた次第です。


後部マスト付近
の空中線

1/700の場合、私自身は手すりは不要だと考えていますが、
吃水線の会の大木清太郎氏が提唱する
「一段手すりでトータルバランスを重視」
という考え方には同意しています。

以降、次の項にて。