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調理実演過去ログ:ホワイトエンサイン1/350巡洋戦艦フッドを作る
その5:船体と甲板について(2)
1997/12/25

はじめに

 12月の下旬に東京に行く機会があり、開いた時間に模型店を何軒か回ってきました。最大の目的は地元の模型店では扱っていないハンブロールの色見本と、1/350艦船用のエッチングパーツの購入で、時間的な都合で梶ヶ谷のデリックポストへは行く事ができなかった(都心からの往復だけで半日が潰れてしまう ;_;)のですが、幸い秋葉原のレオナルドにゴールドメダル社の1/350キングジョージV世&プリンス・オブ・ウェールズ用のパーツセットが有ったのでこれを買ってきました。別にホワイトエンサインのエッチングパーツに不満があった訳ではなく、手すりの「予備」が欲しかったことと、シェルターデッキから下に降りるラッタルが省略されているためにその代わりとなる部品探しが理由でした。

 ゴールドメダルのパーツは全く申し分のない精度で、ラッタルと直立梯子と手すり以外に流用できる部品はないのですが、これで田宮の1隻を作ってみたい気分になりました。何年先になるかわかりませんが(^_^;)。

船体と甲板について(2)

 前の項で「甲板は塗装という形を取らない」と書きました。これはレジンという材質に見合った塗装に自信が持てなかった事もあったのですが、甲板上の構造物が予想外に複雑だったことから、思い切って甲板のモールドを全部削った後に本物の木を貼って構造物をその後から作ってゆく方が、個々のモールドを修正した後に塗装するより負担が少なくなるだろうと考えたからです。

 甲板の材料は完成品の海王丸の製作記で触れた「STウッド」で、薄さがわずか0.3mmの桐と紙の合板、しかも1mm以下に細切りしても割れたり繊維が分解する事のない素材です。これを簡単な治具を使って幅1mmの短冊状に切り出します。そして完成するとほとんど見えなくなる船首楼甲板の中央部から貼ってゆきます。要領は木製帆船模型の甲板貼りと同じで、本来は中心から両舷方向へ貼ってゆくものですが、この部分は手前しか見えないので手前から奥の方向に順番に貼り詰めゆきます。幸いキットには繊細な凹モールドが付いていたので、これを基準にしながら貼ることができました。この部分の接着剤は酢酸ビニル樹脂エマルジョン系、一般に「木工ボンド」と呼ばれているものを使っています。ブルワークの内側直ぐの部分には0.3mmのプラ板を貼っています。最終的には内側に三角形の補助材を付ける必要がありますが、これは支柱の関係でシェルター甲板を付ける直前に位置決めをして付けることにします。

 田宮の1/700のキットではこの甲板中央部に2組の隔壁がモールドされていますが、手持ちの資料を検討する限りではこの部分は舷側に支柱があるだけで隔壁は無かったものと思われます。支柱は他にも細いものが4本あるように写真から読み取れるので、シェルター甲板を貼った後で工作する必要があります。また、1939年の改装で撤去された5.5インチ副砲の台座が残っていたか否かも考え込んだ所ですが、台座自体は後からでも追加できるのでとりあえず付けない事としました。

 甲板を貼った後で装備品を付けます。ここでは窓付きのドアとシングルハッチをエッチングパーツから、その他に天窓やロッカーと思われる部品を自作して付けています。エッチングパーツは繊細にできているのですが、塗装をするとモールドが半ば埋まってしまいます。今回は完成するとほとんど見えなくなる部分なのでプライマーを塗らずにそのまま塗装して接着しましたが、この処理も何か方策を考えねばなりません。また船体内部へ通じるハッチはいくつか「開」の状態にすると変化が出てくるのですが、今回は無理な工作は極力避ける事としているので全て「閉」にしました。
 ただ、キットに元からあったモールドのうち意味がわからなかったものもあります。どれも竣工時の図面では5.5インチ副砲の揚弾筒と指示されているもので、少なくとも副砲が撤去されるまではその位置にあったと思うのですが、それ以降も撤去されずに残っていたのか、他の装備品に置き換えられたのか、キットの解釈に誤りがあるのか、まったくわかりません。これらの部品については完成後でも追加することができるので、とりあえず付けない事としました。

ドアとシングルハッチのエッチングパーツ。
シングルハッチはエッチングの下に
0.5mmと0.3mmのプラ板を接着しています。

 製作準備の段階では保留となっていたシェルター甲板は、結局自作することにしました。キットの部品に不満があった訳ではなく(モールドは非常に良く再現されています)、木甲板の表現の関係でモールドを全部削る必要があったこと、上甲板に降りるラッタルの開口部が表現されてなく、肉厚が厚いためその処理に手こずることが予想されること、甲板の端の部分が多少複雑な構造になっている事などからそう決めたものです。ついでに1・2番煙突基部の巨大な吸気口もかなり目立つので、表現を詰めておくことにします。

 シェルター甲板の作業と塗料に関しては、次の項にて。


上がホワイトエンサインの船体中央部、
下が田宮1/700の中央部。
本来シェルターデッキの舷側支柱であるべき部分が
田宮のキットでは隔壁とされている事に注意。

内側の船室の形状の違いは
シェルター甲板を貼れば判らなくなりますが、
田宮のキットを作る際には中央部の2つの隔壁と、
高角砲座の支柱だけは何とかしたいものです。

MONOGRAFIE MORSKIE 6 HOODについて


 近年精力的に軍艦の資料を発行しているポーランド AJ PRESS社の最新刊がやっと入ってきました。全体的には往年のWarship ProfileやMAN O' Warを思わせる体裁で、多数の写真と図版に加えて別紙2枚に線図や最終時と思われる1/400の2面図、1/500のカラー2面図が付いています。
 ポーランド語は全く読めないので文章の価値はわかりませんが、写真や図面を見る限り他の資料と組み合わせて総合的に判断する過程では非常に重要な情報を幾つか示しています。しかし前に「(入手しても)それほど大きな軌道修正はないだろう」と書いた通り従来の資料が「無価値」になる程ではありませんでした。

 文中に最終時と思われる艦橋と後部艦橋、及び全体の立体図が収録されています。実物の構造を理解するには最良の資料ですが、Janusz Skulski氏や岡本好司氏の図面を見慣れた目にはかなり「野暮ったい」図です。
 写真は豊富(70数枚)に掲載されています。世界の艦船やWarship Profileほど印刷が鮮明でないのが残念ですが、この本で初めて目にするものも全体の3割くらいありました。特に艦橋の左舷側を水線付近から見上げた写真は各部の張り出しや射撃指揮所の裏側の構造がわかるもので、これは大変に有り難いものです。

 1997/12/25現在、フッド個艦に関する資料はこれ以外に入手できないようですし、格も安く作る模型が1/700程度であれば充分な情報を提示してくれると思います。しかし1/350となるとこれ1冊ではかなり苦しいだろうというのが率直な印象です。