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調理実演過去ログ:ホワイトエンサイン1/350巡洋戦艦フッドを作る
その4:船体と甲板について(1)
1997/10/19,11/03

はじめに

 今回製作の参考としている主要資料は3冊あります。

"Anatomy of the Ship The Battlecruiser HOOD"
John Roberts著/Conway Maritime Press社刊(1982)
"British Battleships of World War II"
Alan Raven and John Roberts共著/NAVAL INSTITUTE PRESS社刊(1976)
"Warship Profile 19 HMS HOOD/Battle-Cruiser 1916-1941"
R.G.Robertson著/Profile Publications社刊(1972)

 この中で、プロファイル軍艦版は私が船の模型に興味を持った頃には既に洋書店にも在庫がほとんどなく、フッドはたまたま在庫処分で置いてあったのを拾ってきたものでした。著者は最後の出撃の直前に艦を降りた元乗員という事で、個人的に撮影したと思われる1939-40年頃の鮮明な写真が多く掲載されています。
 他の2冊は10年ほど前1980年代後半には普通に洋書店で購入できた本で、Anatomy...HOOD はCONWAY社のアナトミーシリーズの第一作目、British Battleships of World War IIは400Pを超える超大冊で、いずれも英国戦艦に関する第一級の資料です。その頃は英国の戦艦にはそれほど興味はなかったのですが、エレールの1/400フッドが再販になったりロドネー&ネルソンを出したら要るかもしれないなぁと、まったく当てのない未来を思って求めたものでした。

 それが10年後、まさか1/350のレジンキットで使うことになるとは夢にも思いませんでしたが、インターネットの模型関係サイトの書籍案内を見たら、どれも、

 Out of print. Hard to available.

 …つまり、「キットを入手してからの資料探しでは手遅れだった」訳です。日本の軍艦以外はキットの有無に係わらず好きな船(年代、分野)に絞って資料を揃えていますが、どれもいつ模型に反映できるかわからないものばかりです。永遠に反映されないかもしれないから、購入の判断は難しいことだと痛感しているこの頃です。

船体と甲板について(1)

 まず、甲板を考える前に何とかしたかったのが船体と一体で抜かれている大きな艦橋基部と司令塔のモールド。レジンキットの常識では考えられない抜き方でメーカーの技術力の高さを証明していますが、作る側にしてみればいったいどうやって塗装やディテールアップを図ればいいんだ!?と。シェルターデッキに続く部分(艦橋基部の甲板の下の部分)の表現は無視する事も考えましたが、モールドの問題に加えて無視するにはかなり構造が複雑だったため、結局そっくり削り落とし司令塔の部分だけを使うこととして、他は真鍮板やプラ板で自作する事にしました。

 まず、艦橋基部のモールドを金工用の糸ノコで切り放します。司令塔の部分は再利用するので慎重に切り、段になっている部分は角の部分にドリルで穴を開けて糸ノコの刃を通し、下側に向かって切ります。大体切れた所で大型のマイナスドライバーを切れ目にこじ入れて切れていない部分を割ります。切り離した後で割れ残ったレジンを彫刻刀で削って仕上げます。

艦橋基部を切り離した状態。
糸ノコの刃がたわんだのか、
シェルターデッキの前半が陥没したように切れてしまいました。
エポキシパテを盛っているのはそのためです。
内部でレジンの色が3種類に別れているのが興味深い所です。


 次に、甲板のモールドを全部削り落とします。原型や抜き型の製作者には誠に申し訳ないのですが、このままでは甲板の工作ができませんし、抜きが凄いのは前にも書いた通りですが、通風口の周辺でモールドの表面が荒れている部分も一部に認められます。それで艦首の錨鎖導板はアルミ板で作り直す事とし、ウインチやボラード、吸気口のたぐいまで全部削り落とします。削った部品は全て番号を付けて小袋に入れ、略図に場所を記入しておきます。これらの部品は再利用せず全て自作するつもりですが、一応参考のために保管します。

 艦橋基部と甲板上のモールドを削り落とした時点で船体に関係する大規模な工作は一通り終わったため、以降は船体の整形と仕上げに再び取り掛かります。

塗装について

 まだ基礎工事中に塗装の話は順番が違う?と思われるかもしれませんが、シェルターデッキの下の船室部分の工作や艦橋基部の作業では組み立てながら塗装してゆくので、主な部分の塗装をここで決めておく事にします。

 巡洋戦艦フッドの最終時の塗装で最大の問題は「船体色」で、判断に足りる明確な写真がありません。英国本国艦隊の当時の標準塗装はダークグレイとされ、フッドが1940年8月以降本国艦隊所属となっていることや遠景の写真に暗く写っているものが多いためかダークグレイとしている資料や塗装図もあります。

 British Battleships of World War IIの個艦毎の戦時塗装の記述では
1939年末  全面ダークグレイ
1940年初め 全面ライトグレイ
1940年末  全面ミディアムグレイ 戦没するまでこのまま。

 となっています。実際Warship Profileの中に1940年12月撮影とある船体塗装中の写真があり、それを見る限りでは明るい色から若干暗目の色に塗り直しているように見えますし、1941年3〜4月撮影とある写真でもそれほど暗い色には塗られていないように見えます。ただ、軍艦の塗装は−英国は知りませんがドイツのビスマルクや日本の戦艦武蔵は出撃前の1日足らずで全艦を塗り直した例があり、出撃直前の短時間で塗り替える可能性は容易に考えられます。

 ただ、NAVAL INSTITUTE PRESS社から出ていた「BATTLESHIP」という本(WILLIAM H.GARZEKE,JR. ROBART O.DUIN,JR.共著、1980)の中に、プリンス・オブ・ウェールズのビスマルク追撃戦後の損害状況を示す写真が数枚載っているのですが、それを見る限りでは敵弾が貫通した羅針艦橋や後部煙突周辺は少なくともそれほど暗い色には塗られていないように見えます。これらの事からフッドの船体はミディアムグレイで塗ることにしましたが、確証はありません。このスケールで全面ダークグレイですと重い印象を受けて悲壮感が漂い過ぎるように感じたのも理由の一つです。

 もうひとつ問題なのは艦橋の各甲板の塗装。キットの指示も含めて手元にある塗装図の大半が船体色と同じ色になっていますが、唯一 Anatomy...HOODの解説では上部構造物甲板(Superstructure Platforms)・居住区・ロビー・倉庫の床はリノリウムの一種で覆われ真鍮板で留めていたとあり、1931年当時を示す本のカバー裏のカラー図版にも艦橋の甲板部分はレッドブラウンになっています。例外と見なすには説得力のある説明です。

 手持ちの資料ではこの部分の材質が明確にわかる写真は無かった上に、本場英国も含め海外の模型関係サイトを片っ端から当たって作例を探してみたのですが、そのように塗装されたものを見ることはできませんでした。散々考え込んだ結果、グレイ一色よりもメリハリが付くのでここはレッドブラウンとする事にしました。

 それ以外の塗装には特に問題はなさそうです。また、木甲板は塗装という形では表現しないつもりです。具体的に使用する塗料については、次の項目で述べることにします。

訂正

 最初にUPした時に「塗装について」の部分で「キットの塗装説明はダークグレイ」と書きましたが、船体部分はミディアムグレイの指示がされています。
 11/03夜の時点で書き直し、訂正しました。