日々のエッセイ


   気持ちの良い秋風に誘われて、秋田へ駆け足トリップ。赤い新幹線「こまち」に乗るのは初めてで、
   途中まで緑の新幹線「はやぶさ」と連結したまま走るのですね。 東京駅の朝のプラットホームでは、
   その連結部分を写メするビジネスマンがたくさんいました。
  
   なぜ秋田か? それは、小さな頃にテレビで「なまはげ」を見て、いつか「なまはげ」の故郷へ
   行ってみたいと思っていたからです。 「なまはげ」は秋田・男鹿地方の大晦日にやって来る、
   鬼の姿をした神様。 「泣く子は、いねーが。怠け者は、いねーが」と怒鳴り声をあげ、包丁を
   振りかざしながら、子どもたちのいる家へ踏み込んでくる神様は、怖そうで、一度は
   お目にかかりたかったのです。

                     

    新幹線を降りて、男鹿半島までは、上の写真のように「なまはげ」がシンボリックにデザイン
   された男鹿線でコトコト、約一時間。 車体の「なまはげ」は青鬼姿ですが、赤鬼バージョンも
   あります。 車窓からの青い空、緑の木々の美しいこと。

   羽立という無人駅を降り、そこからタクシーで15分ほど走ると、いよいよ「なまはげ」に
   会える場所へ着きます。その名も『なまはげ館』。 ここには、男鹿の各町で現れる、それぞれが
   微妙に違う姿の「なまはげ」が百体以上も集まっていました。

                  

     テレビで見た「なまはげ」は、リアルな鬼で、ひと目見ただけで恐怖におののく感じでしたが、
    こんなふうに色も鮮やか、どこか南の国のお面を思わせる可愛い「なまはげ」もいるのです。
    眉毛の太い「なまはげ」、天然パーマの「なまはげ」、笑顔がニヒルな「なまはげ」・・・、
    これだけ揃っていれば、好みの神様をきっと見つけられるでしょうね。


                   
    こちらは、大晦日の「なまはげ」をいつでも体験出来る、『伝承館』です。深い木立の中の
    茅葺屋根。外観を眺めるだけでも雰囲気があります。 靴をぬいで、囲炉裏のある
    部屋へ案内され、しばらく待っていると、本当に「なまはげ」がやって来るのです。
    真山町の「なまはげ」は、漆黒の長い髪、きばをむき出し、いかめしい顔つきの正統派。
    見た目が怖い上に、ものすごい大きな音をたてながら入ってくるので、それだけで
    ドキッとしてしまいます。 約30分、「なまはげ問答」を目の前で見ることが出来ました。

                     
    なんとなく小さな「なまはげ」の写真ですが、これ、実は私がコスプレしているのです。
    憧れの「なまはげ」に扮装出来て、感激。でも、同じようなお面を被っても、いまいち、
    迫力が出ないなぁ。

    「なまはげ」は大晦日に各家を訪れ、“子どもたち”や“お嫁さん”など、家の人たちの
    日頃の素行に難癖つけます。やれ、宿題をやっていないだの、カラオケに高じ過ぎるだの、
    歯に衣着せぬ物言い。 言われた本人は恐れ入って、「来年こそは」と心を入れ替え、
    清々しくお正月を迎えるというわけです。
    「なまはげ」のズバズバした発言、聞いていてもちっとも嫌味じゃなく、相手をより良くしよう、
    その家をより発展させようーーという熱い心意気が伝わってきました。 そういえば、昨今の
    世の中、人に悪く思われないように気を遣い、欠点を指摘するなんていう人は、めったに
    いなくなりましたよね。  「なまはげ」は現代人が苦手な“叱って育む”という行為を、
    上手にやってくれるから爽快なのでしょう。

                   
   「なまはげ」も履いている藁の靴。 秋田の冬は雪が積もるから、滑りにくい靴が必要でしょうね。

   その夜は、男鹿のもう一つの名物「石焼き料理」をいただきました。

                


      名前の通り、五百度くらいに熱した石を、木桶の冷たいだし汁の中に投入して、
    瞬時にグラグラの汁物を完成させてしまうという、豪快な漁師料理です。
    桶いっぱいのだし汁が、本当にあっという間に沸騰していく様は、手品のよう。

                     
              出来上がった海鮮汁、とっても美味しかったです。

   秋田から足を伸ばし、世界遺産の白神山地にも行ってみました。 秋は日差しが柔らかい
   から、山道の散策も楽々。 でも、想像したような山道ではなく、完璧に整備された
   お気楽な散歩コースのような道を選んでしまったのですが。

                    
     コースのハイライトは、この青池。 純度が高いせいで、水が青色インクみたいな
     美しい色をしています。ガイドブックで見た時は、実物はもっと違う色なんじゃないかと
     疑っていましたが、この眼で見ても、素晴らしい青色!  来て良かったなぁと思いました。

                        
          ブナ林の中の標識。 いかにもな花の絵に、伸ばした手が可愛い。
       
                
        

       白神から秋田へ戻る五能線の車窓も、海沿いで、ダイナミックな岩場が続き、
     どこも絵になります。 車掌さんが“絶景スポット”を教えてくれるのも嬉しい。
     秋の旅は、人も少なく、のんびり出来ました。

                      
    秋田県民が愛する秋田の画家さんの、キュートな本があります。 
    『はじまり』(ナナロク社)というタイトルで、木版画家、池田修三さんの描く、おでこの広い
    可愛い女の子たちの画集。 細長い形の本で、大きな画面のほうがポストカードになっていて、
    それを切り離して使うと、小さな画面の部分だけが残り、最後に豆本が出来る仕掛けです。
    池田修三さんは、十年前に82歳でお亡くなりになったのですが、地元にほか市には、
    修三さんが描いた無垢な少女たちの絵を、今も大事に飾る家々が多いとか。
    古びない愛らしさを、少女たちの表情や仕草に感じます。  今年の夏は渋谷の繁華街の
    ビルに、修三さんの“ピース”と名づけられた、ピースサインをする童女の壁画が出現して、
    都会の若い女の子たちの目も奪いました。

                      

    秋は食欲の秋とも言いますね。 これは最近買った、食パンのお皿です。  陶器で出来ていて、
    ちゃんと耳も、耳っぽく作られています。  デザートをのせたり、チーズをのせたり・・・。
    いろいろ楽しんで、食卓で遊んでいます。 食欲がますます増しそう。


    食べ過ぎ注意の秋ですね。  では!

                                             2014年 10月


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