日々のエッセイ


   朝から思わず「暑い!」と当たり前のことを叫んでしまう盛夏ですが、涼しく過ごす工夫を
   試して、快適な夏を楽しみたいですね。 私の住んでいるマンションのエントランスには、
   季節ごとに様々な鉢植えが置かれるのですが、先日はこんな手作りの飾りも吊るされて
   いました。カラフルで涼しげに揺れる飾りは、どなたか住人のかたの優しい心くばり。
   マンションを出入りするたびに目がいって、明るい気持ちになります。


                             

   
    夏の花の筆頭は、やっぱりヒマワリでしょうか。  船橋市(千葉県)の小学校に、児童たちが
    毎年、大事に育てている2万本ものヒマワリ畑があると聞き、行ってみました。  住宅街に
    ある小学校は立派ですが、校門から見渡すと、ごく普通の学校。 「どこにそんな広い
    畑があるの?」と、見物に来たらしいご婦人のグループが何組も途方に暮れていました。
    「校舎の裏にまわってみましょうか?」と、見知らぬご婦人たちに誘われ、私も一緒について
    いくとーーー裏手は別世界!  無数の黄色い花が咲き誇る、どこまでも広い空間が、
    目の前に現れました。
                    
    大迫力のヒマワリ畑です。 おひさまの方向を向いて、背すじをピンと立てながら並んでいる
    様子は、まるで朝礼で校長先生のお話を聞く、可愛い小学生みたい。畑の道は迷路になって
    いて、スリリングな脱出ゲームを楽しむことも出来ます。(花に蜂が集まるので、その意味でも
    スリリング)  それにしてもヒマワリって、ノッポですねぇ。 私なんか埋もれてしまいそう。
                         
    大勢の人が、うっとりため息をつきつつ、写真を撮っていました。そばで一輪をアップで撮るのも
    良し、少し離れた場所の高い位置から全体を撮るのも良し・・・素人カメラマンが写しても
    夏の絵として決まるヒマワリです。

                         
    帰りがけに果物店に並んでいた黄色いスイカを見かけ、なんだかヒマワリに似てるなと
    思い、買ってみました。 黄色いスイカを食べるのは今年はじめて。 とっても甘くて、
    美味しかったです。 最近は四角いスイカなんかも売ってますね。

                         
    黄色いものの写真が続きます。 これは“蜂に注意”という警告をアートっぽく表した看板。
    飯能市(埼玉県)にある『あけぼの子どもの森公園』の散策路に置かれていました。これなら
    幼い子どもが見ても「ハチさん、こわーい」と身構えますものね。
    この公園は、ムーミンの世界を再現した公園としても知られています。 絵本で見た
    ムーミン谷の建物が、あそこにも、ここにも・・・。

                       
    
     小川にかかる水浴び小屋からは、パイプをくわえたスナフキンが出てきそう。細長い窓から
     外の景色を眺めると、そこにはムーミン屋敷が・・・。
                          
       小川に沿って歩くこと1分で着く、ムーミンたちの家。 変てこな形をしていて、屋根には
       びっしり植物が生い茂っています。 入口で靴をぬいだとたん、子どもに返って、
       探検心がムクムク。
                          
     中は秘密基地の宝庫。 小さな子どもたちが思い思いに入りこめる、小さな空間が
     いっぱいあります。おもちゃなんか持ってこなくても、ひんやりした木の壁や床や、影のさす
     小窓が想像力を刺激して、新しい遊びが浮かんでくるはず。
                          
     ムーミン屋敷内部は、作者のトーベ・ヤンソンが好んだ、フィンランドの島の家に似て、
     木のぬくもりにあふれた素朴な造り。飛びまわる子どもたちの様子が、階段の下からも
     見守れて、ママはつかの間の休息タイムを得られるかも。
                           



     部屋にはいくつも、ムーミンの物語が描かれた木のプレートが、さりげなく飾ってあります。
     中には、たくさんの子どもたちが触ったのでしょう、色がはげて文字も薄くなったものも
     ありますが、それもまた皆に愛されているムーミン屋敷らしい風情。

                           

         秘密めいた地下への階段を、そろりそろりと降りていくと、「あっ、ムーミン!」、
       扉に等身大のムーミンが彫られていました。 中は広い広いプレイルームです。
      
                      
       可愛らしい小さな丘を登ったところには、誰かの別荘みたいな雰囲気の図書室が
       しつらえてありました。自然光がたっぷり射しこむ木のテーブルで、日が暮れるまで
       絵本を読んで過ごしましょうか? もちろん、ムーミン関連本がたくさん揃っていますよ。
                           
     テーブル脇のライトも、こんなふうな木のカバーで覆われ、雰囲気を壊しません。
     灯っているところは見なかったけれど、どのくらい明るいのかな?

     今年はトーベ・ヤンソンの生誕百年を記念して、日本でも各地でイベントが開かれて
     いますね。フィンランドのムーミンワールドに行きたくても遠すぎて・・・と思うムーミン
     ファンの方は、日本にある『あけぼの子どもの森公園』を歩いてみれば、きっと物語世界を
     味わえますよ。

                            
    歩きながら、ふと足元に視線を落とすと、きれいな色がはめこまれた歩道。
    パレットみたいで素敵だったので、写真に残してみました。


    家にもどって、ふたたび読書タイム。 ファッション誌に書評が載っていたヤングアダルト。
    海外のティーン向け作品を集めたSTAMP BOOKSのシリーズで、エアメール縁取りの
    ある装丁もお洒落な本です。
    『二つ、三ついいわすれたこと』(ジョイス・キャロル・オーツ作・岩波書店)

                             

     主人公は、ハイティーンの少女たち三人。
     メリッサは容姿も頭脳も品行も優れ、「ミス・パーフェクト」と皆に羨ましがられています。
     だけど本当は、無理を重ね、心にも身体にもたくさんの傷をつけた気弱な子。
     ナディアは常に受け身で、おっとりと喋り、友だちの間では少し物怖じする普通の子。
     なのに科学教師が自分に向ける視線に過剰反応し、大胆なプレゼントを贈ってしまう
     情熱的な行動派。
     転校生のティンクは小さな頃からスターゆえ、わが道を行くタイプ。傍若無人に振る舞い、
     どんな困難もヒョイと乗り越えてしまいそうに強く見えながらーーー。
  
     「あなたって、こういう人よね」と周りに思われている自分と、自分しか知らない自分との
     ギャップに戸惑う少女たちの姿が、息苦しくなるほど繊細に描かれている本です。
     大人になれば「こう見える人も実は・・・」とわかっても、さほど驚かなくなるし、
     誰もが寛容になっていくものだけど、それゆえ、ハイティーンの生真面目さは瑞々しく、
     彼女たちを応援したくなります。

                         
     『夜の学校』(文研出版)が、長野県や岩手県の2014年夏休み推奨図書になっています。
     本屋さんや図書館で見掛けたら、ぜひ手に取ってみてくださいね。

                          
     神楽坂(新宿区)で売っていた、金魚の和菓子。寒天や餡で出来ているのですが、
     本物っぽくて飾っておきたくなります。
     涼しさが少しでも皆様に届きますように。

                                               2014年  8月

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