日々のエッセイ

 

   二十数年前、アンデルセンのメルヘン大賞(タカキベーカリー主催)に入選して、
   広島での授賞式に出た際に、同じく入選を果たした同世代の女性とアドレスを交換し、
   それからずっと文通が続いています。 彼女が去年送ってくれた金魚が、今年も部屋を
   飾っています。
                    

   
   『幸せを呼ぶおねがい金魚』という名前がついています。金魚ちょうちんで知られる山口県
  柳井市の工房で売っているそうです。 中国では昔から、金魚はものごとの運びを
  良くすると言われ、縁起の良いモチーフ。 それにあやかり、折り紙で作られた金魚にお願い事を
  託し、家の西側に飾れば願いが叶うというのです。
  とびっきりのお願い事が自分の心の中に生じるまで、大事にとっておこうと思い、去年の夏に
  いただいてから約一年が経ちます。もったいなくて、今年も使わずに眺めるだけかも・・・。。
  そういえば『魔法の指輪』という寓話がありますね。何でも願い事が叶う指輪を手に入れた男が、
  困難に出会っても「まだ使うほど大変じゃない」と、自力で解決していき、真面目な働きによって
  幸せな晩年を迎え、男が亡くなった後に“未使用”の指輪が残される、というお話だったような。
  男にとって指輪は、お守りであり、希望でもあったのですね。 希望があれば、人ってパワーを
  発揮できるものなのです。
   
                   
   日本橋で毎年夏に開かれるアートアクアリウムという展示は、金魚が好きだったり、
   涼を求めたい人にぴったりな、都会のビルの中の水族館です。 
   いろいろな種類の金魚を幻想的なライトアップとBGMの中で鑑賞できます。 
   上の写真は去年のものだけれど、たくさんの金魚たちが泳いで、着物の柄を作っています。 
   一瞬たりとも同じ模様にならない、希少な着物。

                     
   水槽が重なり合うように並んだ展示のタイトルは『大奥』。 てっぺんで優雅に泳ぐ、ふくよかな
   金魚の美しいこと。水が流れ、下段では無数の金魚鉢がその水を受け止め、頭上の巨大な
   水槽を支えていて、大奥の仕組みを“金魚鉢ピラミッド”という思いがけない形で表現してあり、
   絢爛豪華です。

                      
   さて、七月は夏休みのスタートですね。 今年の夏は、どこで何をしようかと、わくわくしながら
   考えている人たちもたくさんいるでしょう。 子どもたちにとっては、夏休みの宿題がネックかしら?
   ふだんよりたっぷり時間のある夏休みだからこそ、たまには本を開いて静かな時を過ごすのも
   良いかもしれませんよ。
   『ひみつの花便り』(国土社)は、この夏、全国学習塾協会読書作文コンクール、
    西日本新聞読書感想画コンクールの課題図書、埼玉県の夏休み推薦図書になっています。
   この機会に是非、読んでみてください。

                    
  
   先日、御茶ノ水(千代田区)にあるブックカフェで、素敵な本に出会いました。ちょうど
   折り紙くらいの大きさの真四角な本で、きれいな化粧箱に入っています。中を開けると、
   薄紙に大切に包まれた、ベルベットの手触りの本が現れます。

                    
   美味しそうで可愛らしいお菓子の写真が、ページをめくるたびに出てきます。 お菓子そのものも
   芸術品に見えますが、そのお菓子を盛り付ける器や、クロス類が美しく、どの写真も一枚の絵
   として飾っておきたくなります。  上の写真は、夏に食べたいソルベのページ。
   
                        
   フルーツのスープとでも言うのでしょうか。背景の鳥が、実をついばんでいるのも、
   カップの中のベリー類と対応していて、よく考えられた写真だなぁと思いました。
   この本は、パリの老舗パティスリー『ラデュレ』から出ている、『ラデュレのお菓子レシピ』。
   日本でもデパートの地下などにお店があるので、ファンも多いでしょう。
   創業は1820年というから、写真の雰囲気がノスタルジックなのも、長い歳月を感じさせて
   素敵です。
                        
    
   本を閉じた時に見える小口は金色! 普通の本とは違う、宝飾品めいた感じがして、
   箱入りなのも納得です。本棚に無造作に並べるのが許されないような本。 レシピだけれど、
   キッチンで読むのも絶対ふさわしくない本です。

                       
   本の間に、ときどき入っている、色とりどりの仕切りページには、ガーリーな図柄が施されて
   います。上の写真は扇の模様。 他に花もあるし、蝶もあるし、バンビもあるし、小鳥もあるし・・・、
   この折り紙を思わせる絵柄つきページが、写真に匹敵するくらい可愛いアクセントになっています。


                     
    フランスのお菓子に負けない、可愛いお菓子が日本にもあります。 これは、
    “薔薇焼き”という、やわらかくて仄かな甘みのおまんじゅう。ピンクのバラ、白いバラ、
    中心だけピンクに染まったバラがあり、それぞれ、あんやクリームが詰まっています。
    この薔薇焼き、実は私の所属している同人誌『15期星』のメンバーである、荒蒔悦子さんの
    ご主人が考案なさったもの。 バラの鋳型を使って、和のスイーツが洋風にアレンジされ、若い女性も
    ロマンティックな気分でおやつタイムを楽しめそう。 伊奈町(埼玉県)で週末のみ販売なさって
    いるとのことです。

    
    さぁ、夏休み! 太陽の光をはね返すくらい、元気に過ごしましょう!

                                                2014年 8月


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