6月は雨降りが多くて、空を見上げてはつい「うっとうしい」と言ってしまい
がちですが、これからやってくる強い日差しの季節を前にした、雲や雨のベールを
かぶった静寂なひとときと思えば、悪天候もまた愛おしくなります。
紫陽花が色鮮やかに咲き誇るのを見たり、葉の裏に小さなかたつむりを見つけたり。
雨の日の散歩も、なかなか楽しいものですよ。
いつもと違う町へ出掛けて、そこで居心地の良い図書館を見つけると、本は
借りられないけれど、ちょっぴりその地区に住む人たちの気持ちになれます。
武蔵境駅前(武蔵野市)の図書館は、凝った建築の、光と緑にあふれた
素敵な図書館です。
美味しいコーヒーの飲めるカフェが併設してあったり、ティーンズのフロアには
卓球台やレトロなホッケーゲーム台が置かれ、身体を動かすことも楽しめたり。
写真の児童書フロアは棚が低く、優しい曲線で本が並べられています。
ところどころに置かれた白い椅子は、四本脚がはえたソラマメみたいな形で、
とてもナチュラル。
こういう図書館なら、暇な時にふらりと寄っても、お気に入りの本がすぐに
見つかりそう。ちなみに私の本も児童書フロアに、表紙を見せて飾ってあり、
感激です。『魔の森はすぐそこに・・・』(偕成社)という、深緑の表紙の本。
その地域ごとに図書館にも独自の色があるので、本好きなら“図書館をめぐる
旅”なんていうのも良いなぁと思います。 そういえば、世界の美しい図書館を
特集した本が、最近たくさん出ていますものね。
今年の岡山県立高校入試問題に、上の写真のような『図書カード』に
関する問題が出ました。 生徒が作ったカードに、読者を惹きつけるどのような
工夫がされているのかを問う設問。紹介されている図書が私の『また、あした』
(偕成社)という中学生たちが主人公の物語だったので、とても嬉しかったです。
久しぶりに会った友人から、こんな素敵なアクセサリーをいただきました。
『ひみつの花便り』(国土社)を読んでくださって、その表紙を縮小して、
こんなふうにUVレジンのアクセサリーにアレンジ。 UVレジンのクラフトは
流行っているそうで、自分のセンスをいかした世界にたった一つのものが
作れるのは良いですね。 宝物になりました。
流行っているといえば、この間、下北沢(世田谷区)の駅を降りたら、周辺に
水パイプのお店がいくつも出来ていて、びっくり。装飾を施した木管楽器のような
水パイプを、テラス席でみんなで楽しげに燻らせているのを見て「日本にも
中東の風が・・・」と思いました。 上の写真は、手描きの素朴な看板。
水というフィルターを通すことで、タバコの有害物質がだいぶ緩和されるそうですが、
吸う時間が長くなったり、フルーツや花の香りをつけることで“タバコ意識”が
薄くなったりで、一長一短な面も。水タパコ、日本に浸透するのでしょうか?
さて、雨音を聞きながら、思いっきり空想に浸りたい時にお勧めな絵本を、ご紹介。
わざと古書めいて作られた、文字が一つもない、絵で読む壮大なストーリー、
『アライバル』。オーストラリアの絵本作家ショーン・タンの作品で、
2011年度のリンドグレーン記念文学賞を受賞しています。
絵本にしてはページ数が多く、読後は主人公と共に何年も旅したような
“心地良い疲労感”が。
不穏な空気が漂う街に、夫婦と幼い娘の家族が住んでいて、その夫が知らない町へ
出稼ぎに行くため、家族と別れる場面から始まります。寂しげに見送る妻と娘、
本当は一番心細い夫・・・。夫は船に乗り、海を渡り、よその町を目指すのですが、
セピア色の場面はまるで戦前のドキュメンタリーを見ているような雰囲気。
だけど、ところどころに妙に未来的なものや、現実にはありえないものたちが
見え隠れして、時代も場所も混沌としてきます。
たどり着いたところは、どこか中東風な不思議な町。夫の暮らしていた街とは、
何もかも勝手が違い、戸惑うばかり。言葉も通じない、パンを買う方法もわからない、
宿も探さなければならない。疲れ果てながらも宿にもぐりこみ、さて、ひと安心、
と思うと、そこには見たこともない奇妙な動物が・・・。どうやら、この町では
オーソドックスなペットのようです。
あまり好ましくないと思えたペットですが、毎日、一緒に過ごすうちに、だんだん
なついてきて可愛くなってくるし、途方に暮れるばかりの異郷でも、親切に手助けして
くれる人がたくさんいて・・・。夫は仕事を見つけ、町の人たちと交流を持ち、
この町の暮らし方に自分を合わせていきます。 時折、風変わりな方法で配達される
古里からの手紙にしんみりすることもありますが。
発展的に見えるこの町も、かつては夫の住む街のように不安定な時代があったことを
老人が語ります。 夫がこの町に来て、どのくらい経ったのでしょうか、ついに
古里へ帰る日が。 ふたたび家族との穏やかな時間が訪れます。その街も、だんだんと
様子が変わっていき、出稼ぎ先で見たペットが、この街でも当然のように飼われる
時代になりました。 豊かになったこの街に、今度は別の土地から、昔の夫のように
心細さを抱えた働き手の女性がやってきて、夫の娘に道を尋ねるところで絵本は
終わります。 たぶんその女性も、ここで数年働き、やがて古里へ戻り、そこが
また豊な土地になり、新しい出稼ぎの誰かがやってきて・・・そんな永遠のループが
予感される終わり方です。 文字のいっさい無い絵本なので、あくまで私の
読み方なのですが。
読書の後のお茶時間、入ったカフェには、紙ナプキンに手描きの“メルシー”の
文字。気さくに声を掛けられたような気分になりました。
雨の日の運動には、これ。室内用のなわとびで、ひもがついていません。
だけど、何回跳んだかとか、消費されたカロリーがどれくらいなのか、しっかり
表示されます。 大人が外でなわとびをするのは気恥ずかしいので、これは
便利です。 子どもの頃は、なわとびなんか簡単で、いくらでも跳んでいられる
と思ったものですが、今やると、結構ハード。 百回を超えたあたりからきつくなり、
翌日は筋肉痛になったり。なわとび、楽しいですよ。
それでは、さわやかな6月を。
2014年 6月
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