先月は関東地方でも珍しく大雪が降りましたが、3月に入るとやはり日差しも
風も、春めいてきますね。新聞に“花粉飛散状況”の欄が載りはじめて、
プロテクト眼鏡なども種類豊富に売り出されているのを見ると、ウキウキばかりの
春じゃないと思いますが、それでも寒さが緩み、動きやすくなり、草花がほころぶ
のを眺めたら、“スタートの春!”という気持ちになって、活気があふれます。
3月はお雛様の季節。我が家には、こんな水引細工のお雛様があります。
和紙を“こより”状にして、色で染めた水引は、昔から贈答品を飾るものとして、
日本人に親しまれてきました。 紅白、金銀は慶事、白黒、白黄は弔事。
儀式ばった場面に使うと考えがちですが、今は水引の色もたくさん揃い、
“和アート”の材料として活躍しているようです。
形を作るのが簡単だし、のりとハサミがあれば、机の上で自由に創作出来るから、
絵画や立体作品に応用するのも気軽です。
春の花を集めたみたいなケーキが、銀座(中央区)のウィンドウに飾られていました。
淡いピンク色が可愛いケーキ、美味しそうだけど、食べてしまうのがもったいない。
女性を誘惑する“スイーツ”。その魅力に触れた展覧会が、来月、
ギャラリーウシン(所沢市)で開かれます。私も『お菓子が出てくるお勧め本』の
選書をして、展覧会に参加致します。
お菓子が印象的に登場する本、特に絵本はいっぱいありますね。例えば、
『ぐりとぐら』。あの大きな大きな黄色いカステラは、手を伸ばして一口食べたいと
思ってしまいます。 『しろくまちゃんのホットケーキ』も、大好きな本です。フライパンの
中のホットケーキがだんだん焼けてくる様子が、効果音と共に見開きで描かれていて、
美味しそう! 児童文学では『チョコレート戦争』に出てくる、チョコレートで作られた、
大きな城が魅惑的です。
選書した本に出てくるスイーツの絵を、去年に引き続き、小野寺美樹さんに描いて
もらいました。ドーナツ、ターキッシュ・ディライト、クラフティー・・・、これらが、何の本に、
どのような役割で描かれているのか、気になった人は是非、4月にギャラリーへ
お越しください。 展覧会の詳しい日程がわかりましたら、またHPにて案内させて
頂きますね。
その美樹さんが掛けている眼鏡、ワイン色をしたメタルフレームの、一見クールな印象
なのですが、ツルの部分の裏に、なんとコミックがカラーで描かれているとか。
見せてもらうと、本当に両側のツルに、鉄腕アトムのコマが。 見えないところに、
ちょっとした遊びがあるなんて、楽しいですね。
やわらかい陽の光に包まれた春の風景は、色にたとえればパステルカラー。
手持ちの本の中で、“パステル”なものは無いかな? と探していると、記憶が呼び起こした
のは、もう三十年も前の本、『ジャクリーヌさんのアップリケ絵本』(文化出版局)。
当時、日本で人気の高かったパッチワーク作家・ジャクリーヌ・ゴヴァンさんの作品集です。
手仕事の優しさに満ちた室内画に、素朴な大家族の物語が添えられていました。
春の窓辺にはレースのカーテンがはためき、小さな花束が飾られています。おばあさんは
子どもたちの帰りを待って、炭のかまどでお菓子を焼きます。子どもたちは、冷めるのも
待ちきれずに、テーブルに寄ってきます。
夜が来ると、おじいさんが威厳たっぷりに、暖炉に火を灯します。猫のミウミウと一緒に、
子どもたちはおばあさんの昔話に耳を傾け、そのうち穏やかな眠りについていくのです。
作品集というより絵本のような一冊で、ジャックリーヌさんが子ども時代を過ごした
北フランスの田舎の暮らしが牧歌的に描かれています。雨の多い地方なので、草花は
色鮮やかに咲き誇り、小川はなみなみと水をたたえます。人々は家にこもって、
室内を快適に整えることに力を注ぎます。 パステルカラーの本には、「毎日の暮らしを
自分たちの手で美しく」作り上げる人たちの心意気が感じられ、参考にしたくなります。
本の白紙ページに、ジャクリーヌさんのサインがありました。 手芸には全く興味の無かった
当時の私ですが、内容に引かれ展覧会場で購入したのでしょう。 その日のことは
記憶から抜け落ちていますが、今見ても、春のひだまりを感じる本だと思います。
散歩をしていると、よく犬を連れた人たちとすれ違います。暖かくなって、犬の足取りも
軽くなっているような。それは、飼い主さんの心を反映しているせいかもしれません。
写真のワンちゃんが、大通り沿いの二階家の前に、かしこまって座っていました。
車よりも遥かに大きく、二階に届きそうなほど良く育って・・・。もちろん、置物ですが、
道ゆく人が目をとめずにいられない、インパクトあるワンちゃんです。
春の花のような、色とりどりの幸せが舞い降りてくる3月になりますように。
2014年 3月
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