9月1日に、新刊が出ました。 『ひみつの花便り』というタイトルで、
国土社から刊行。 優しいタッチの絵は、高山まどかさんの筆に
よります。 手紙にまつわる物語で、小学生から、大人の方まで
楽しんでいただけたら、と思います。
本について
今月の日々のエッセイは、まるごと『手紙』にまつわるお話を。
毎年、9月はじめに行われるギャラリーウシンでの『絵封筒展』に
参加しているのですが、今年も夏の間に、ギャラリーから
こんな涼しげな案内のお手紙が届きました。
瓶が青系の糸で、布に刺繍してあります。透明な封筒には、
瓶の輪郭が描かれていて、中に入れた刺繍が、外から淡く
見えるようになっているのがオシャレ。
私のほうは、こんな絵封筒を作りました。 既成の事務封筒に
絵の具でペイント。切手を洋服の柄にアレンジしました。
郵便番号を書く赤枠は、鏡のフチに見立て、その鏡の中に
宛て先を書いて、送るようになっています。
中の手紙も、封筒に合わせて、ドレス型。色画用紙で、簡単に
作れます。いろいろアイディアを考え出すひとときも、また楽しい!
大手町(東京・千代田区)に昔からある
逓信総合博物館『ていぱーく』が閉鎖と
聞き、行ってみました。ここはビルの
三階分を使った広々とした展示が見やすく、
入場料も大人110円と安かったので、
気軽に郵便や電話の歴史を学べて
好きな場所でした。 私の行った日には、
子どもたちもたくさん来ていたし、閉鎖を
惜しむ大人たちも熱心に展示を見て回って
いました。 この金色のポストは、
博物館の正面に設置されたもの。
万国郵便連合加盟100年記念のポスト
だそうですよ。
中では、実物の“ポスト”や、“郵便屋さんの
制服”や“葉書・切手”類が、年代順に
一目でわかるように並べられています。
これは、江戸時代の郵便屋さん“飛脚”の
制服。 日本で郵便制度が始まったのは、
明治4年だそうですが、江戸期にも、人の
足を使って大切なふみを届ける仕事が
ちゃんとあったのです。 届くまで、どれだけ
時間のかかることか・・・。大変でしたね。
明治5年になると、郵便局も増えて、
全国にたくさんのポストが作られました。
スギ板を組み合わせ、雨よけのフタを
つけ、角に補強の鉄板を張り、黒い
ペンキで塗られたポストが、当時は
一般的。 昔は赤くなかったんですね。
ちなみにポストの色が赤に変えられた
のは、街中で目立たせ、位置をはっきり
させるためだそうです。
明治中ごろからは、板で出来たポストに
漆が塗られ、ちょっと高級な感じ。郵便
マークを取り囲む小花の模様が、
甘い感じを漂わせて和みます。
現代の街角にあっても、女の子たちに
気に入ってもらえそうなポスト。
明治21年頃の郵便配達員の
制服は、袖口に注目! なんと
現代と同じ“〒”マークが、
さりげなく取り入れられています。
ブラックの生地に真っ赤な
ラインが映えて、洗練された印象
です。
郵便番号による、地域の仕分け棚が置かれていて、ここでは実際に、
葉書を県別に分けてみることが出来ます。熟練さんなら、ものすごい
スピードで正確に分けられるのでしょうね。
海外には、手紙を出しても必ず届くとは限らない地域もあるのです
から、日本のように安心してポストに投函出来るというのは、
ありがたいことかもしれませんね。
古いスタンプが押された記念切手が、封筒つきでセールで売られて
いました。色も柄も豊富で、実際に使用は出来ないけれど、
コレクションとして集めたくなります。
切手は、まさに小さな芸術品。 びっくりするほど高額で売買されて
いるものもありますね。 最近は、記念切手も多様だし、頻繁に
発行されるので、レターペーパーに合わせて選べるのが嬉しいです。
手紙にまつわる、お勧め本を一冊。 チェコの国民的作家、
カレル・チャペックの『郵便屋さんのお話』は、ほのぼのしたい時に
読んでもらいたい絵本です。
郵便配達員のコルババさんが、仕事場でうたたた寝をしてしまい、
真夜中に目覚めると、そこにたくさんの“郵便局の妖精”が。(みんな、
ヒゲをたくわえたオジサンです) 妖精の特技は、開封せずとも、
手紙の中身がわかることで、「これは大切な手紙だ」と、一通の
宛名を書き忘れた封書を差し出します。
コルババさんは、その日以来、手紙の受け取り人を国じゅう駆け巡って
探しまわり、一年と一日かけ、やっと見つけました。それは、一人の
青年の熱い想いが詰まった、プロポーズの手紙だったのです!
のんびりした文章と、ほんわかした絵(カレルの実兄が挿絵を担当)
とは裏腹に、読み終わると、コルババさんの仕事に対する誇りが
ひしひしと伝わってくる“熱血”ものであり、大人向きな感じもします。
男性が、恋する女性にプレゼントとして贈ると、粋な計らいになるの
では?
浦安駅(千葉県)に、かつてあった変形ポストは、小さな子どもが
自分で手紙を出せるように、低い位置にも投函口がありました。
初めて書いた手紙は、誰に宛てたのでしょう? 記憶にないけれど、
小学校低学年の時に、暑中見舞いの葉書を夏休みの宿題として
書いたのは、はっきり覚えています。なぜって、葉書に描いた
エンゼル・フィッシュの絵を担任の先生が褒めてくれたから。
嬉しい記憶というのは、忘れないものですね。
『ひみつの花便り』のあとがきにも書きましたが、みなさんの手紙が
誰かの宝物になることもあるのです。だから、秋の夜長、たまには
メールじゃなく、ゆったり手紙を書いてみるのは、いかがでしょう?
2013年 9月
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