日々のエッセイ


     色とりどりの花が咲き乱れている5月ですが、足元を見おろしたら、
  小さな白い花が。  スズランです。鈴なりにつく花の様子が、
  いかにも草花芽生える今の季節にふさわしいので、春のシンボルとして
  知られています。
              
  フランスでは5月1日に、愛する人やお世話になった人にスズランの
  小さな花束を贈る習慣があるそうですね。その昔、ヨーロッパでは、
  『スズラン舞踏会』が開かれて、女性はまっ白なドレス、男性もボタンに
  ズズランを挿して臨んだというから、会場にはかすかに甘い花の香りが
  満ち、多くの幸せな出会いがあったのでしょう。
  私は十代の頃、読んだ小説に「スズランの毒を水に溶かして、不倫
  相手の子どもを殺そう」とした場面が出てきて、スズランにはちょっと
  怖いイメージを持っているのですが。

              
  春なので、ワンちゃんたちも元気にお散歩。 丸太で出来た
  荒削りだけれど、今にも飛びついてきそうなワンちゃんを道端で
  見つけました。目も鼻も口もないのに、なんとなく、やんちゃな表情が
  浮かびます。

                  
  春の木々の香りがするナチュラルカフェの看板が・・・。中に
  入ってみると、そこは日本生まれの木材を使い、廃校になった小学校の
  机や棚を置いた、懐かしい感じのカフェでした。
  

 三重県の小学校で長年使われて
 いた机には、子どもたちがつけた
 小さな傷や穴がいっぱい。鉛筆を
 転がしたり、消しゴムのカスを
 ためたり、自由帳を開いたりした
 子どもたちの記憶が、ツヤのある
 机に刻まれています。
 


 メニューも、この通り、学校給食
 みたい。全粒粉コッペパンと、
 有機野菜のミネストローネ、
 ニンジンのサラダ。
 自然の恵をいただきながら、
 自然と共に暮らしていた、ひと昔
 前の日本の生活が垣間見れる
 場所です。おいしかった!


 
             
  そのお店に飾ってあった兜です。 5月は、やっぱり兜ですよね。
  それに、鯉のぼりも欠かせません。
                 
  明治神宮(渋谷区)の売店には、こんなにたくさん、鯉のぼりの
  お土産が並んでいました。外国からの観光客が“5月の日本”の
  思い出に買って帰るのでしょうか。新緑と相まって、色鮮やかな
  旅の思い出になりそうですね。

             
  上の本は、大切にしている牧村慶子さんの挿絵本です。
  1970年代の後半、ローティーンだった私は、牧村さんの絵の持つ、
  優しくて、甘くて、はかなげで、どこかメランコリックな魅力に夢中で、
  牧村さんの絵の本を探しては、集めていました。80年代以降は、
  あまり絵をお見掛けしないなぁと思っていましたが、この間、
  茗荷谷(文京区)で『春風色のメモリー』という展覧会が行われている
  のをネットで知り、喜んで見に行きました。
   
  当時の原画が、手に取って
  見られるなんて、とても贅沢!
  これは、きのゆりさんの詩集の
  挿絵で、確か『春の日』という
  タイトルだったなぁ・・・、と心は
  少女に戻ってしまいます。
  メルヘンという世界が愛されて
  いた時代、牧村さんの細い細い
  線や、淡い淡い色合いが、
  形のないメルヘンを形にして
  届けてくれたような気がします。


 
 牧村さんの絵に出てくる、お家の
 佇まいが好きです。とんがり屋根で
 てっぺんに鳥や旗が揺れている
 絵が多く、子どもの頃は、サーカス
 の小屋みたいだなぁと思っていま
 した。サーカスなんて見たことも
 なかったのに、中ではきっと
 日常とは違う、不思議で素敵な
 ことが起こっている、
 そんな家に見えたものです。
   
                
 新しく出来た東京駅近くの文房具屋さんでは、商品を包む紙袋に
 こんな切手が付いていました。印刷ではなく、ちゃんと貼り付けられて
 いて、おまけに消印まで押されています。切手には、お店の名前が
 書かれていますから、本物の古い切手というわけではなく、オリジナル
 なのですね。楽しい計らいです。

 来月は『伝えたい物語』というテーマで、展覧会を行います。
 昔の“世界名作全集”などを、会場に置いて、いらしてくださった方が
 古びない物語に触れて、新しい何かを感じとっていただけたら・・・と
 思いながら、準備を進めています。
 会場で、お目にかかれたら嬉しいです。      それでは!

                             2013年 5月

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