日々のエッセイ
  
    
   
12月になると、劇場ではバレエの『くるみ割り人形』の公演が
   たくさん行われます。クリスマスに貰ったプレゼントから始まる
    この物語、本では読んだことがありましたが、舞台を見る機会が
   なく、いつか見たいと思っていたら、今年、その願いが叶いました。
   私の習っているバレエの先生が、舞踏指導なさって創り上げられた
   舞台は、砂糖菓子のように甘くて夢のある舞台で、ひと足先に、
   クリスマスのワクワクした気分を味わいました。


    
                               
        上の絵本は、タイトルも『くるみわり人形』(講談社)で、バレエの
      舞台がそのまま本という形になった、躍動感あふれる絵本です。
      絵を描かれたのは、堀川理万子さん。堀川さんには、私の
      『魔の森はすぐそこに・・・』(偕成社)の挿絵を描いて頂いた
      ご縁があります。本を作るとき、画家さんは誰に、という
      リクエストは、ほとんどしないのですが、この本の場合は、
      私から編集者さんを通して、お願いしたのをよく覚えています。
                
    その本が仕上がった後に、堀川さんが表紙画を、きれいに額装して
    贈ってくださいました。金色の鳥、金色の犬、金髪の女性・・・、
    物語の大事な登場人物たちが象徴的に描かれ、縦書きのタイトルが
    ちょっと和風なテイストです。中の挿絵も、素敵なんですよ。
     この物語は、兄弟の確執を書いたもので、本当はラストで兄が
    弟を森で殺して記憶をなくし、母が産んだ赤ん坊に無意識に
    弟の名前をつけるようせがむ、という怖い話だったのですが、
    周囲の意見を尊重し、平和なラストに書き直しました。なので、
    ちょっと終わり方が優等生風だったような・・・。

            
    12月になると棚から出して、リビングに飾る本があります。
    それが上の写真の『永遠のクリスマス』(文藝書房)です。
    これは写真家・金城真喜子さんがクリスマスらしい美しいもの、
    優雅なたたずまいのもの、ロマンティックな風景などを集めて
    一冊にまとめられた、ページを開くごとにクリスマス気分が盛り
    上がる本です。
     金城さんは、以前、私の童話講演会を全面的にプロデュース
    してくださいました。エレガントな第一印象とはまた別な、
    エネルギッシュで行動派な面も持っていらして、写真にも
    その魅力が煌めいています。
           
   写真に添えられた物語が、また洒落ていて。12月の、都会の、
   空気が凍てつく中、恋人たちの態度は洗練されてクールだけれど、
   心は燃えているーーーそんな感じの台詞がいっぱい。
 
   本続きで、もう一冊。実はこの本、決して読むことが出来ない
   んですよ。
              
   というのも、この本は陶器で出来ているのです。手に取ると、
   ずっしり重い。お値段も6300円と、通常の単行本よりは高め。
   でも、本の形といい、のんびりした絵柄といい、つやつやした質感と
   いい、飾っておきたくなる“眺めるだけの本”なんです。
   作者の長谷川風子さんは、若手陶芸作家として人気で、カップや
   お皿はお店に並ぶとすぐに売り切れてしまうそうです。
               
    こちらが、長谷川さんのカップ。これで、たっぷりミルクティーを
    飲んだら美味しいでしょうね。

      
                        
    12月7日は、クリスマスツリーの日だというのを、ご存知ですか?
   1886年のこの日に、横浜の明治屋に、日本初のクリスマスツリーが
   飾られたことから、記念日になったそうです。今では、当たり前の
   ようにどこにでも飾られているツリーですが、その当時は西洋的な
   目を見張るデコレーションだったのでしょう。 1886年の日本は、
   鹿鳴館時代真っ最中。西洋への憧れと、西洋を追い越そうという
   熱い気運が、12月の街に満ちていたのだろうと想像します。

    メリークリスマス!
    あなたのそばにいてくれる人を大切にして、
    温かな冬を過ごしてください。

                                  2011年  12月

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