うちの近所はマンションが多いせいか、あまり鯉のぼりを飾っている
お家を見かけない気がします。五月の青空に舞う、大きな鯉のぼりの
姿は、初夏らしい伝統的な風景なのだけれど。
上の写真は、お煎餅を頂いたときのパッケージなんですが、鯉のぼりの
絵柄も可愛いし、三段積み重なっている形もほのぼのしていて、
小物入れとして使っています。紙の肌触りが、手に優しい箱。
五月といえば、母の日も忘れてはいけませんね。
今年の母の日は、八日です。毎年、母にはカーネーションを届けて
いますが、今年は赤い花模様の雑貨にしてみようかな、なんて。
贈り物は、考えるときの時間が、とても楽しみですね。
昭和時代の雰囲気が漂うこのカードは、わたしが小さかった頃、
母に渡したものと記憶しています。花束の部分がポップアップになって
いて、「おかあさん いつまでも きれいでいてね」というメッセージが
印刷されています。
きれいなお母さん、それは女の子の一つの憧れでしょう。
優しいとか、働き者とか、元気とか、母親に似合う言葉はいろいろ
ありますが、子どもの目から見ても“きれい”と思わせるお母さんは、
やはり誇りです。
お母さん像を描いた作品で、私が好きな一編の詩をご紹介します。
詩人の小松静江さんが『古自転車のバットマン』(銀の鈴社)で
発表なさった少年詩『バラ色のくちびるで』です。
小松さんの詩は、若い世代なら、国語の教科書で『夏のおわりに』を
学んだ人も多いと思います。
バラ色のくちびるで
イヤリングつけた母さん
きれいだけどさ
このあいだの日曜日
父さんとでかけたときは
つけてなかったじゃないか
団地の中のスーパーに
つとめにゆくのに
なんでしゃれてくんだよ
父さんは毎晩おそいから
しらないと思うけど
くちべにだって三本ももってる
バラ色のくちびるで
スーパーのレジをうつ母さん
ぼくがずうっとみてるのに
ぜんぜん気がつかない
お母さんではあるけれど、一歩、家庭の外へ出たら、
知らない女の人の面も持っているーーー母親を一人の女性として
認めはじめた少年の、戸惑いや胸苦しさが、素直な話し言葉で
表現されていて、女の子から見た母親像とはまた違った捉え方が
面白く思えます。キレイなのは嬉しい、だけど遠い存在に
なってしまうーーー恐れるのが男の子の心理でしょうか?
この詩集の表紙と裏表紙は一対になっていて、本を開くと少年少女の
視線が合う構図が秀逸です。
小松静江さんのお人柄も、少女の細やかさと、少年の潔さを両方
持ち合わせていらっしゃる、お目にかかるたび爽やかな気持ちに
させていただける方なのです。
先月、ギャラリーウシン(埼玉・小手指)で行われた、私と
松田冨美子さんの二人展『羊の毛で綴った童話展』は、おかげ様で、
盛況のうちに終了いたしました。ギャラリーの様子を、少しだけ
写真でお伝えしますね。
ギャラリーの入り口
案内看板
『女王の冠』という話の展示
『モグラの倉庫』という話の展示
『まぼろしの住む家』の
登場人物たちが大集合
ポストカードや本の販売コーナー
朗読会では、アンティークな椅子に
座って、三篇を読みました
創作活動は、普段ひとりでやっているので、こうやって皆様と
ご一緒できるのは楽しいひとときでした。ありがとうございました。
著書『あの子を探して』の中の『クリーニングいたします』という
短編が、今年の学習院女子中等科、帰国生対象の入試問題に
採用されました。このような形で真剣に読んでいただけるのも、
作者冥利に尽きます。
2011年5月
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