いつもの年なら、桜を愛でる良い季節ですが、今年はあの大地震が
あったために、春を喜ぶ気分になれませんね。
被災された方々に、心よりお見舞いを申し上げます。
わたしの町でも、怖いくらい大きく揺れました。その後、原発事故、
立て続けの余震、計画停電、断水・・・と、今までに無いことづくしの
世の中になってしまいました。水の汚染が心配され、スーパーから
ミネラルウォーターが消え、節電で夜の町は暗くなり、以前とは違う
日々が続いています。
連日の報道で、復興のために力を合わせる人たちの姿を見るにつけ、
人間の持つ強さや揺るぎなさに胸を打たれます。
それでも春は、例年と変わりなく華やいだ空気を、世の中に運んで
きます。公園に取りつけられた花のリースは、春の優しい色。
よく見回すと、あちこちに春の初々しい息吹が感じられるのです。
けれど、よそ見はほどほどに。歩道の段差につまずいて、転んでしまっ
たら、つまりませんよ。
上の写真は、銀座(東京・中央区)にある「つまずき防止」の警告看板。
モザイクタイルで描かれた絵柄は、赤いヒールと白い足。土踏まずの
柔らかな曲線が、ちょっとセクシーで可愛いんです。さすが銀座、と
うならせる看板でした。
この看板を通り過ぎ、しばらく歩くとビルの中に骨董品を売る店が
何軒か並んでいました。ロイヤルコペンハーゲンの食器を多く飾って
いる店があり、植物の絵柄を精巧に描いた絵皿を見るうち、
実家に置いてある一枚の皿を思い出しました。
このフローラダニカは、本物のお皿ですが、裏を返すと特別な
メッセージが。実はこれ、アンデルセンのメルヘン大賞で入選したとき、
記念品として頂いたものなのです。アンデルセンはコペンハーゲンの
童話作家。ちなみに誕生日は、4月2日だそうですよ。
今月ご紹介したい絵本は、『ありみちゃんのおでかけ』(鈴木出版
こどものくにチューリップ版4月号)です。物語は林木林さんが、
絵は伊藤知紗さんが創った春らしさいっぱいの絵本です。
初めて見た桜の花びらに感動した蟻のありみちゃんが、みんなの
協力を得て、幾多の苦労を乗り越えた末、桜の木にたどりつくお話。
絵を描かれた伊藤さんとは、わたしも『すてきなおかいもの』(トムズ
ボックス)で初めて一緒に本を作り、それ以後、親しくさせていただいて
います。
伊藤さんの虫の絵は、可愛いだけじゃなく、愛情をこめて観察した人
だけが描ける、緻密さがあるから良いのです。しかも、脇役の小さな虫
たちまで、ちゃんと表情や仕草で個性をつけているから、本筋とは関係
ない虫同士の楽しいお話を、その気になれば画面にたくさん見つけられ
ます。
『こどものくに』は、幼稚園や保育園で毎月、子どもたちに配られる絵本。
その頃に読んだ本は、わたしの経験では大人になってもよく覚えている
ので、心の財産みたいなもの。今月“ありみちゃん”の友だちになる子が、
たくさんいるのでしょうね。
さて、前にもお知らせした、4月の展覧会の案内状が出来ました。
案内状をご希望の方は、4月8日までに、メールにご住所とお名前を
記載してくだされば送らせていただきます。(アドレスは、トップページに)
羊の毛で綴った童話展
田村理江と松田冨美子が綴る6つの物語
2011年4月13日(水)から 4月24日(日)まで
午前11時から 午後5時まで
(月曜・火曜 休み)
ギャラリーUSHIN(ウシン)にて
埼玉県所沢市小手指町1−22−13−102
電話 04−2997−8720
問い合わせ先 細野さん 090−9389−6779
場所は西武池袋線の小手指駅(北口)を下車、西友を目指して歩いて
5分のところです。駐車場はありません。 道に面した良い雰囲気の
ギャラリーで、カフェもやっています。(土日は、ランチがあるそうです)
わたしの小さなメルヘンを、羊毛人形作家の松田冨美子さんが
人形で再現してくれて、可愛い展覧会になりそうです。
23日(土曜)は、午後2時から、わたしの朗読会も予定しています。
展覧会では、本屋さんで入手しずらかった本も販売しますので、
お近くの方、絵本や人形のお好きなかた、そうでない方も是非是非、
遊びにいらしてくださいね。
お目にかかれるのを楽しみにしています!
2011年4月
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