日々のエッセイ
   


  春というと穏やかな青空がイメージされますが、実際には、風が
 強くて穏やかとはほど遠い日が多いですね。花粉症に悩まされて
 いる方もいらっしゃるのでは、と思います。私も昔は、ひどい花粉症
 でしたが、今年は今のところ大丈夫・・・。ある程度の年齢になると、
 花粉症も治ってしまうという噂を聞くので、私もそうなのでしょうか?
 だとしたら、年を取るのも悪くないなぁと思えてきます。

                   
  青空に向かって、まっすぐに伸びたスカイツリー。東京タワーよりも
  ノッポの塔が墨田区にお目見えするという話題は、昨今の大きな
  話題になっていますね。地元、墨田区の東向島を歩いていると、
  街角にさまざまなスカイツリーが建っています。 上の写真は、
  文房具屋さんのツリー。細長いメモ用紙を、めいっぱい広げると、
  ツリーの形になって飾れるという楽しくて実用的な物です。

  
                   
   
   こちらは大きなスーパーマーケットに置いてあった、キラキラ光る
  スカイツリー。形はリアルですが、ロマンティック系です。

           

  
   そしてこれは、東向島のカフェ『こぐま』で見かけたスカイツリーの
  小さな写真。トイカメラで映したような、レトロな絵画風モノクロ
  写真で、下に撮影日が記入されています。 お店の壁には、この
  小さな写真が日付順にズラリと並んでいて、スカイツリーがどんどん
  ノッポになっていく様子が、映画のコマを追うように見られるのです。
  なかなか素敵な光景です。
              
  
 このお店は、カフェオレも美味しかったので、写真に収めました。
   お店の名前にちなんだクマさん型のプチ・ドーナツと共に、
   おやつのひととき。カップの絵柄も、こぐまです。
    昔は薬屋さんだった古い和風の家を改造して、下町の商店街の
   雰囲気を保ちつつ、アートな色合いも出している、このお店。
   行ってみたいと思ったわけは、ツリーでもコーヒーでもなく、実は、
   “路地琴”なるものが見たかったからなのです。

              
  
    水琴窟というのをご存知ですか? 日本庭園などにある
    風流な設えの一つで、地中に甕を埋め込み、水滴を垂らすと
    中で音が反響し、その涼やかな音色を楽しむものです。
    それと同じ仕組みを、路地に持ってきたのが、この路地琴。
    ひしゃくで掬いとった水を、小石で表面を覆った甕に垂らし、
    つき出た竹に耳を当てて、はかない音を味わいます。
    もちろん、私もやってみました。なんだか昔、小学校の音楽室で
    聞いた懐かしい鉄琴に似た音がして・・・。
     心が澄みそうな音色です。

             
 
    路地琴のある狭い通りは、鳩の街通りという名前で、
    こんな鳥のマトリョーシカもありました。通りの入り口には
    大正モダンな感じの、鳩の飾りがついたゲートも。
    このあたり、昔は花街だったそうですが、今はその賑わいを
    どこかへ置き去りにした、静かで明るい通りです。

               

    この本は、クヴィント・ブーフホルツの『見えない道の向こうへ』
  (講談社)という絵物語です。表紙が語っているように、
  現実と異世界の間をさまようような、夢だったのかなぁと思わせる
  ようなお話です。
    語り手は、ちょっと太めで不恰好な眼鏡をかけた少年。学校では
  よくからかわれるけれど、バイオリンが得意です。
   少年の住む海沿いのアパートに、ある日、放浪画家のマックスが
  越してきます。少年はマックスの部屋でバイオリンを弾き、画家は
  気ままに絵筆をとります。
   けれど画家は、描いた絵を裏返しに飾り、決して少年に見せては
  くれませんでした。
            

 やがてマックスは、再び旅に出るため、船着場へ。
 寂しい別れの後、マックスの部屋へあがった少年は、からっぽの
 アトリエに掛かった全ての絵画が、ちゃんと表を向いているのを見て、
 息をのみます。
      「ぼくのために開いてくれた展覧会」だったからです。

            
  
  作者ブーフホツルは、少年時代、ピアノと絵が上手で、音楽大学へ
  進むか、美術大学へ進むか迷ったそうです。彼の絵からは、いつも
  静かで物悲しい音楽が聞こえるような気がします。
   ブーフホルツの絵本『おやすみ くまくん』は、日本の子どもたちにも
 知られていて、私も子どもが小さかった頃は、寝る前に何度も読み聞か
 せをしました。それこそ、一字一句、暗記するくらい。
  なのに、大きくなって、その絵本のことを尋ねたら、「絵もお話も、
  ぜんぜん覚えてない」との返事。 
  ブーフホルツの創り出す静寂美は、もしかしたら、疲れた大人の
 ためのものだったのかもしれません。

 私の本『あの子を探して』が、音読テープになって、名古屋ライトハウス
 名古屋盲人情報文化センターで貸し出しされています。
 視覚障害のかたにも、作品を楽しんでいただけると思うと、嬉しいです。

                                    2011年 3月


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