「ちょっ・・ちょっと!!」
あたしの手をグイッと引っ張って、店の中へと入っていく道明寺。
ズンズン歩くその背中には、当然あたしの声など届いているはずもなく・・・
あたしはつまづく様にして店内へ入っていった。
―――――― って、え?! ・・・ うっ ・・・ うそ ・・・・。
ここのお店 ―――――
さっきあたしが覘いていたお店じゃない!!
プレゼント大作戦 7 〜つくし視点〜
さっきのカフェで ―――――――
お店の紳士にコーヒーをこぼされてしまったあたし。
あの後、道明寺に言われてすぐに店を出たけど ・・・・
薄暗い店内で見たときよりも、明るい外では更にシミが目立って見えた。
ちょっと恥ずかしいな―――
そう思っていたところへ
それを見透かしたような道明寺に 『服を買ってやる』 と言われ
あたしは強引に店へと引っ張り込まれた。
近くにいた店員らしき女性が挨拶をしてくる。
「道明寺様いらっしゃいませ。お待ちし・・・」
道明寺が足を止め、ギロリと店員さんを睨んだ。
その視線を正面から受け止めてしまった彼女。
引きつった顔と消え入りそうな声で
「ご無沙汰しております・・・」
と言い直すと、頭を下げたまま固まってしまった。
そんな店員さんを軽く無視して店の奥へと進んでいく道明寺。
一番奥のスペースまで辿り着くと
一人の男性があたしたちの存在に気づき、ゆっくりと腰を折った。
「これはこれは、道明寺様。ご無沙汰しております。」
「・・・・・あぁ」
ちょっと!! 何であんたの態度はそんなに偉そーなのよっ。
あたしは心の中で毒づくも
今まで見たことのないような展示スペースに、不覚にも目が点になってしまった。
ボーッとしているあたしの横で道明寺が口を開く。
「オーナー。悪いんだがコイツの服を見立ててやってくれ。
そんで・・・その服を今ここで着て帰る」
「えっ?ちょっと!!こんな高そうな店
あたし払えないし嫌だよ・・・・・ っぁ///」
仮にもこの店のオーナーを目の前に
あたしは何てことを口走っているんだ・・・。
道明寺はそんなあたしを見て、はぁ〜と溜息をつくと
「あのなぁ、俺が買うんだ。心配すんな」
と言って、あたしのおでこをコツンと叩いた。
俺が買うって言ったって・・・・
あたしが躊躇していると
オーナーと呼ばれた男の人が
『こちらなんていかがでしょう』 と言いながら
ワンピースを持ってあたしの元へとやってきた。
・・・は? あたし? いや、あたしに聞かれても ・・・
っつか、道明寺、あいつどこに ―――――――― って!
あんた何ソファでくつろいでんのよっ!!
あたしの念が通じたのか、あいつと目が合う。
道明寺はソファからゆっくり立ち上がると
オーナーからワンピースを受け取り、あたしの体に合わせ
「うーん、いいんじゃね? コレにすっか」
こっ・・これにするかって!! そんなあっさり?!
あたしが服を選ぶ時とは大違い。
あたしなんて迷って迷って、結局買わない・・・なんてこともザラなのに。
そんな事を考えながら袖口についた値札をチラッと見る。
――― ゼロが・・・いち、に、さん・・・
―――――――――!!!!
さっ・・さっ・・・さっ・・・・・さんじゅうにまんーーーーーーっ?!
あっ・・ありえない・・・。
どうやったら、そんな高い服を
ポーンと買おうという気になるんだ・・・。
・・・・・・・・・
だっだめよっ、この男と同じレベルで物を考えたらダメ!!
なぜかあたしは自分にそう言い聞かせ
何とか道明寺を怒らせないようにと
慎重に言葉を選びながら言った。
「どっ・・・道明寺?!」
「あ?」
「ちょっ・・ちょっと これは・・・
あたしには大人っぽすぎるような気が・・・」
「そうか?」
あたしは大きく頷き アピール。
それを見ていたオーナーが
『ではこちらはいかがですか?』 と
また違うワンピースを持ってきた。
余計なことしないでっ!!
思わずオーナーを睨んでしまったあたし。
それを見ていた道明寺はひと言。
「おい ・・・ お前、値段気にしてんだろ・・・」
ぐっ・・・・・
こうなったら ――――
開き直ってしまえっ。
「そっそうよ!! 悪い? あたしはねぇあんたと違って・・・」
「わかった」
「へっ?」
「高すぎるのは嫌だってんだろ?」
なに・・? いやに物分りがいいじゃない。
でも、まあ確かに高額すぎてあたしは困ってるわけで・・・
「いやっ・・まぁ・・そう・・かな?」
「じゃあ・・・・安いやつならいいんだな?」
「・・・・・・」
「この店は入り口の方は安いんだよ。
そっちの服なら文句ないだろ」
「あっ、いやでも・・」
入り口付近の服だって、十分高いって!!
そう言おうとしたあたしの言葉を、遮るかのように道明寺が立ち上がった。
「俺からしてみれば不本意だが、今日はあっちの服で勘弁してやる。
その代わり俺に選ばせろ。文句は言わせねぇ、わかったな?」
そう言い残すと、あたしをソファに座らせ
道明寺はひとり、入り口のほうへと行ってしまった。
・・・・勘弁してやるって・・・
だから何であんたはそんなに偉そーなのよっ!!
・・・・・・
でも買うのはあいつなわけだし・・・仕方ないか。
なんか ―――――――
買ってもらうなんて嫌だな・・・・
かといって、こんなシミだらけの服じゃ確かにみっともないし・・・。
・・・・・・・・・・・・ 。
こっこれは事故よ!!
そう、事故――――。
今回は仕方のない・・・ことなのよ。
あたしはソファで頭を抱えながら
何とか自分を納得させようとしていた。
「おい、これに着替えろ」
ひとり葛藤するあたしの目の前に
1着のワンピースを持った道明寺が戻ってきた。
!!!
――――― そのワンピース・・・・
驚きのあまり固まっているあたしを見て
得意気な表情になる道明寺。
オーナーがワンピースを受け取り
あたしを試着室へと連れて行ってくれた。
着替えを終えて試着室を出る。
――――!!!//////
目の前には移動されたソファに座る道明寺がいた。
ビックリすると同時に、なんだかすごく照れくさい。
あたしは下を向いたまま、不覚にも道明寺の感想を待ってしまった。
「・・・いいじゃん。似合ってる」
「・・・うっうん、ありがと///」
偉そうなのに、どこかほっとしたあたし。
自分でも外の鏡に映った姿を確認する。
すると後ろから
「あとは靴だな」
という声が聞こえた。
へっ? 靴??
あたしは振り返り、慌てて否定する。
「くっ靴は・・・いいよ!!」
「ばーか。その服着て あの靴履く気かよ」
「うっ・・・」
確かに・・・・
試着室の横には、今着ている服とはおよそ似合わないであろう靴が転がっていた。
「遠慮すんな。ここまできたら・・・そうだバッグも買うか!」
「ばっ・・・ばか言わないでよ!!」
「バカは余計だ、バカは。冗談だよ」
少年のように笑う道明寺に、まるであたしの緊張も解れたようだった。
・・・・・・ そうね ――――
ここまで来たら、覚悟を決めて靴も買ってもらおう。
「そちらの服なら、この靴などお似合いかと思いますよ」
オーナーがニッコリしながら1足の靴を持ってきた。
確かに、この服に似合いそうな靴 ・・・・・
あたしは用意された椅子に腰掛けその靴を履いた。
―――― すごい・・・ ピッタリ・・・・
今までこんなにフィットする靴なんて履いたことない・・・・。
道明寺のほうを見ると―――
あいつはとても満足そうに
足を組みながらこっちを見ていた。
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